各国に舞い降りる日本らしさ from デンマーク 日本茶ワークショップから現代アートまで、じわじわと浸透する日本文化。
世界は愉快 2023.03.29
冨田千恵子
ここ数年、コペンハーゲンでも日本ブームは多岐に渡り、SUSHI、RAMENなどの和食から、JAPANDI(ジャパンディ)という日本と北欧を融合したインテリア、アニメやアートなど、もうブームとは呼べないほど定着している。とはいっても、もっぱら一部の日本通が話題にしている場合もあり、一般的なデンマーク人がどれほど日本文化に関心を持っているのかはわからない。
Sign Tehus(シン・ティーフース)の店内。カウンター内の左がオーナーのメッテ。テーブル席もあるが、お茶談義をしたいなら、カウンター席がおすすめ。photography: Szeki
そんな中、2006年にオープンし、じわじわとアジアンティーファンを増やしてきたシン・ティーフースのお茶関連のイベントが人気だ。元々はビジュアルアーティストのオーナー、メッテマリー・ケアが、アジアのお茶文化に傾倒したのが店を始めたきっかけだから、茶葉の販売だけでなく、フレーバーの違いやお茶の効用などの紹介、煎茶や抹茶の美味しい淹れ方のワークショップなどのイベントを積極的に開催している。
市内中心部から、下町情緒あふれるヴェスターブロのヴァーンダムスヴァイに引っ越してリニューアルオープン。photography: Szeki
たとえば、抹茶のワークショップ。知識豊富なスタッフが抹茶の飲み方を指導してくれるが、茶道のお点前のように形式にこだわらない。それでも、その作法には日本らしい雰囲気が漂う。ここでしか経験できないから、リピーターが多いというのも納得だ。
抹茶ワークショップの様子。まず、スタッフによる抹茶のお点前を見てから、各自で試してみる。参加者は30代から70代までと幅広い。「抹茶はヘルシーって聞いたから。」という理由で参加する人もいるそう。photography: Sofie Staunsager
参加者は毎回8人ほどの少人数。二人1組でお点前を披露しあう。最初は緊張気味な参加者たちもスタッフのアドバイスで和やかな雰囲気になっていく。photography: Sofie Staunsager
お茶などの伝統文化に加え、草間彌生に代表される日本の現代アート作品を街中で見かける機会もあり、若い世代がアートを通して日本を知るきっかけも増えた。至近では、国際的に高く評価されている日本人アーティスト束芋(たばいも)による個展「NEST」が4月1日から開催される。現代人の存在と精神状態を探求したシュールな作品が展示されるのは、コペンハーゲンの歴史的な建物である芸術家協会のギャラリー、GL.STRAND(ガメル・ストランド)。映像、絵画、ドローイングの合計5つのインスタレーションという、北欧で最大規模となる個展だという。
束芋の本名は田端綾子。兵庫県出身の現代アーティスト。日本社会をテーマとしたユーモラスな映像作品で有名。これは『Haunted House 2003年』というタイトル。© Tabaimo. Collection Fondation Cartier pour l’art contemporain photography: Patrick Gries
このように、異なるジャンルで日本らしさは浸透しつつある。ルーツが日本だと知らなくても、デンマーク人が親しみを感じるような物事が増えていくに違いない。
text: CHIEKO TOMITA
冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
Instagram: @chi.tomita photography: Kazue Ishiyama