世界がサステナであふれ始める近年、衣食住すべてにおいてリサイクル、アップサイクルが大活躍し、セカンドハンドものは再注目を浴びている。それに伴い日本のもったいない思考がここスウェーデンにも浸透しSUSHIやMANGAではないがとても良い意味で使われている。
このもったいない運動に関連するひとつとしてぼろと刺し子を使ったメンディングが人気を集めている。
冬が長く、家の中で過ごす時間が必然と多くなるスウェーデンには刺繍や編み物、機織りなどの伝統が長く残っている。それらの趣味が環境を良くする手助けにもなり、同時にお気に入りのアイテムを自分の手で直し、長く使えるのもまたうれしい。
ストックホルムにある東アジア美術館を始め、国内ではぼろの展覧会が行われたり、刺し子のワークショップはいたるところで開催され、各種学校のコースにもなっている。
日本人でスウェーデン南部のスコーネ地方に住んでいる籾山タカオはぼろ、刺し子の第一人者。テキスタイルアーティストで武道教師の肩書をもつ傍ら、自宅で蕎麦の実を育て自家製蕎麦を打って楽しみながら黙々と刺し子をこなす。「刺し子のシンプルな縫い方やパターン、またジャパニーズデザインに加えてモノの寿命を伸ばすという点に皆さんも惹かれるはず」と言うようにスウェーデンでのぼろ、刺し子フィーバーは徐々に熱を帯びてきているようだ。
1800年代のスウェーデンは貧乏で不作の年もあり、アメリカ移住を余儀なくされるなど厳しい時代だった。そういう時代のお直しは当たり前のことだった。豊かな時代を経て新しいものを購入すること、使い捨てが蔓延り、増えたため、反動として“もったいない”が考えられ始めている。温故知新ではないが、ボロボロになったものを刺し子のステッチで新たに使い直す風習がスウェーデンにも末長く根付くよう願いたい。
インスタのアカウント、刺し子ダイアリー213では籾山の日々のぼろ、刺し子の様子が見られる。
今月のパッチワークと称して。
籾山のワークショップでのひとコマ。国内各地方に赴き、刺し子を教えている。
ぼろコレクションの一部
FacebookのアカウントグループLappa och Laga med Sashiko(刺し子でお直し)では刺し子のテクニックやその生い立ち、直しの助言などがシェアされる。
上記グループメンバーのひとりの作品で刺し子を使ったシャツ。裏のカモメが可愛い!photography: Kerstin Hammarson
text: Sakiko Jin
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。