スウェーデンのお祭りといえば何と言っても、ミッドサマー、夏至祭に尽きる。冬時間から夏時間に移行する3月下旬を皮切りに、北部では日の光が長くなり、南部では雪解けが始まり花が綻び始める。長く暗い冬を我慢して春を迎え、そして(願わくば)初夏の到来に感謝をし祝うお祭りだ。
老若男女みんながこれでもかと歌を唄いながらダンスを楽しむ。photgraphy: 左MIdsommar 1 Foto - Nordiska Museet、右Midsommar 2 Foto - Skansen
夏至祭は6月の19日から25日の間に行われることが多い。日程はその年によって異なるが、夏至祭の前夜は必ずその週の金曜日と決まっている。クリスマスと同様もしくはそれ以上に大事なスウェーデンの夏至際では、家族や友人らが集い、食べて飲んで歌って踊る。最も大事なのは、「戸外で祝う」ことだ。
1965年のスモーランド州のとある町からのミッドサマーダンスの風景。photography: MIdsommar 3 Foto - Nordiska Museet
前夜の準備として、花や緑の葉っぱで飾り付けをしたミッドサマーポールをたてて、冠用の花を詰みに行き、夕食と夏至祭当日の伝統食をこしらえる。ニシンの色々な酢漬けと新ジャガ、マリネしたサーモンとホーヴメスタレソースというマスタードソース、そしてヴェステルボッテンパイという北部地方のチーズを使ったパイの3料理が慣習だ。デザートになくてはならないのがスウェーデンのイチゴで、酸味が程よくきいたイチゴを(砂糖を入れない)ホイップクリームと一緒に合わせて食べる。「あー、スウェーデンの夏だ〜!!」とひしひしと感じる時間だ。料理に合わせて飲むスウェーデンの焼酎シュナップスも欠かせない。日本の焼酎とは異なりディルやウイキョウなどフレーバーが異なり多岐にわたるので、みなそれぞれ自分のお気に入りを持ち込んで乾杯! 乾杯が始まると、「シュナップスヴィーソル」(焼酎の唄)をみんなで合唱する。
ミッドサマーポールの立ち上げ準備。photography: Midsommar 4 Foto - Skansen
夏至の当日にはミッドサマーポールを囲んでダンスをするのが定例。スウェーデンやそれぞれ地方の民族衣装を纏う人もあり。さらには姫風露の紫、デイジーの白、セイヨウミヤコグサの黄色など色とりどりのミッドサマーの花たちで作られた冠をかぶる人も多々。普段はクールで落ち着きがあるスウェーデン人だが、夏至祭では日本の桜祭り並みに大騒ぎし、豹変してしまうので驚かされる。1年に一度、温かい陽の光がもたらすスウェーデンマジックに違いない。
色とりどりのお花畑で冠用の花を探すのもミッドサマーならでは。photgraphy: Midsommar 5 Foto - Nordiska museet
真夜中でもこの明るさはまさに日が沈まない夏至。誰も帰りません(笑)photography: Midsommar 6 Foto - Naoko Akechi
典型的なミッドサマーの食事。上12時から時計回りに、ヴェステルボッテンパイ、クネッケ(クリスピーブレッド)、2種のニシンのマリネ、新ジャガ、サーモン、サワークリームと赤玉ねぎ(付け合わせ)、茹で卵とディルソース(真ん中)
これがなくてはミッドサマーとは言えないスウェーデンのイチゴ。
text: Sakiko Jin
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。