贅沢旅に夢を膨らませて 世界遺産の自然の中にあるラグジュアリーホテルで"ととのう"旅。

世界は愉快 2023.05.29

河内秀子

ドイツ最大の森林地帯「シュヴァルツヴァルト(黒い森)」。この森に囲まれた温泉保養地バーデン=バーデンが、2021年にユネスコの世界遺産に登録された。19世紀には「ヨーロッパの夏の首都」とも呼ばれ、パリの社交界の人々がこぞって足を運んだ小さな街には、豪奢な劇場や欧州最大級のコンサートホール、スパなどの文化施設が集まる。その街の中心にありながら、忙しない日常や都会の喧騒を離れ、緑に満たされた空間で心も身体もととのうことができるのがブレナーズ・パーク=ホテル&スパだ。

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森の中にある修道院と街を繋ぎ、珍しい植物を植えて整備された英国庭園式のリヒテンターラーアレー。ホテルはここに面して造られた。

パリから電車でわずか3時間。フランスとドイツの国境にあるバーデン=バーデンには19世紀にパリから直行の列車が引かれ、夏には多くの貴族や文化人が訪れた。その目的は森への散策と、温泉での湯治を理由にした長期のヴァカンス。彼らのために豪華なホテルが次々と建設されていった。

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本館が105室、周囲から切り離して貸し切ることができるパークヴィラは8室。ヴィラ・ステファニーは15室。シングルのいくつかの部屋以外は全て庭に面したバルコニーがついていて周囲の自然を堪能できる。

このブレナーズ・パーク=ホテル&スパも1872年に、街から森へと続く大通りリヒテンターラー・アレーとオース川に面する立地に建てられた。パリのル・ブリストルなど、世界で11のグランドホテルが登録されているオトカー・コレクションに選ばれた最初のホテルでもある。

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明るい色合いの空間に、よく手入れされたアンティークの家具が並ぶエントランス。

広い庭に3つの宿泊施設がある。150年の歴史を感じさせながらもモダンなインテリアの本館。プライベートの庭に囲まれ、国賓が宿泊することも多いパークヴィラ。そしてスパ施設を館内に併設し、インテリアやレストランにもデトックスを導入、よりウェルビーイングに重点を置いたのがヴィラ・ステファニーだ。どの部屋の窓からも見渡す限り緑が見え、小鳥のさえずりが聞こえる。街の中心部にあるというのに驚くほど静かだ。

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ヴィラ・ステファニー内のスパスイート。世界各国の大統領や皇族、アーティストやミュージシャンらの定宿でもある。

5000㎡ものスペースを持つヴィラ・ステファニーには、サウナやフィットネススタジオ、ヨガやピラティスなどのクラスのほか、クリニックも併設。スイートには専用サウナやジムもある。

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食事もできるリラックススペースではデトックスに重点を置いた、地元の食材を使った繊細で豪華な食事が楽しめる。インテリアもデジタルデトックスを意識した電磁波を防ぐ壁紙を取り入れたり、室内ではWifiを完全にシャットアウトできる設定。

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ヴィラ・ステファニーのリラクゼーションスペース。

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小川を挟んで、リヒテンターラーアレーと公園と地続きのホテルの庭。まるで森の中にいるようだ。

朝、目を覚ますとホテルの庭の向こうに、背の高いプラタナスの並木の間に白馬の馬車が行き交い、レモンやハンカチノキといった木々が枝を広げる様子が見える。温泉地特有の温かい土壌のため、ドイツの森では育たないエキゾティックな樹木を植えることができるのだそうだ。少し散歩するだけでも、まるで夢の森の中にいるような気持ちにさせてくれる。

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リヒテンターラーアレーに続くホテル専用の小さな橋には藤が絡み、手前にはライラックが咲き乱れていた。

爽やかな空気をいっぱいに吸って、お腹が空いたら庭へと続く本館のサロンへ。しっかりとデトックスできたら、豪華なアフタヌーンティーをご褒美にしたい。

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庭に面した大きなガラス張りのレストランと、冬も居心地のよいサロンがある。スタッフのきめ細やかなサービスも完璧だ。

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実はブレナーズ・パーク=ホテル&スパは、バーデン=バーデンにも近い国境の街、アルザス地方コルマー出身のピエール・エルメとも親交が深い。エルメに依頼して、「黒い森」の名物として知られる、「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ(黒い森のさくらんぼケーキ)」やマドレーヌ、ショコラ、そしてこのホテルでしか食べることができない、特別製の「黒い森マカロン」を作ってもらっている。

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地元の発泡酒を添えて、アフタヌーンティーセットはピクニック気分で緑の中で楽しみたい。

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ホテル限定の黒い森マカロン(手前)はぜひお土産にしたい。

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チョコレートスポンジに、黒い森で取れるさくらんぼから作った香り高い蒸留酒、キルシュヴァッサーをたっぷり染み込ませ、さらに蒸留酒で香り付けしたクリームとサワーチェリーを挟んで重ね、最後にクリームで全面を覆って、削ったチョコレートとチェリーで飾り付ける、「黒い森のさくらんぼケーキ」。一見甘くコッテリしてそうだが、エルメのものはチョコレートの苦味と蒸留酒の香りが効いた、大人の味わい。

スタッフのきめ細やかなホスピタリティに、つい長居したくなってしまう。たっぷり食べたら、自然の中で再び散歩、スパで一汗かいて。おなかも心も満たされ、身体もととのう。お土産の黒い森のマカロンを手に、また帰ってきたくなるーーブレナーズ・パーク=ホテル&スパはそんなホテルなのだ。

ブレナーズ・パーク=ホテル&スパ
https://www.oetkercollection.com/hotels/brenners-park-hotel-spa/

 

 

text: Hideko Kawachi photography: Gianni Plescia

河内秀子

ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau

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