スウェーデンで話題! ファッションサイトAdooreのサクセスストーリーって?

世界は愉快 2023.10.03

神咲子

ファッションに限らずだがネットでの通販サイトで一旗あげるのは一筋縄ではいかない。スウェーデンでは大手のH&Mを始め、各社がしのぎを削り多種多様の特典や割引で顧客の興味を引こうとしている。その中でも倒産の一歩手前まで行きかけながらもコンセプトを変え、売り上げを200%倍増したAdoore(アドーア)のサクセスストーリーを紹介したい。

動画によりドレスの動きがわかるようになり選ぶ時の手助けにもなる。

オーナーでもありデザイナーでもあるPetra Tungården(ペトラ・トゥンゴーデン)が同社を立ち上げたのが2017年。それ以前はファッション雑誌の編集長を7年務め、スタイリストとしても活躍した。その時の経験から色々なファッション関係会社と共同作業するうちに、自分のアイデアがまるで取り合ってもらえないことに不満を感じていたのだ。当時のボーイフレンドの「自分でやれば?」の一言がきっかけでAdooreを立ち上げた。2018年は奈落の底に落ちる勢いで在庫だけを抱えて流動資金は0の状態。トレーニングウェアのコレクションが失敗に終わり、コンセプトを変えざるを得なかったのだが、それが成功への一歩につながったのだ。

自社プリントのサマードレス。ミッドサマー時期がAdooreの1番の売れシーズンだ。
プリントものからシックなものまで、更にはサイズの多様さも嬉しい。

ペトラ自身が昔から気に入っていた洋服は身体にフィットするドレスだ。需要がないのではと周りから言われたりもしたが、それ一本に集中し貫き通したのが功を成した。女性の為の女性の身体の線にフィットするガーメント(生地)を使い、顧客が自分の身体に自信を持って堂々と着て歩けるフォルムを作った。ペトラの服を着ると自信が湧いてくると話題になり、2019年の売り上げが4億、1年後には倍に、そしてその9ヶ月後には14億にまで伸ばした。

創立者のペトラが自らライブでドレスを着てお披露目している。

もちろんサクセスストーリーの裏にはファッション業界の煌びやかな面ばかりではなく、苦労話も耐えない。最初の頃は人を雇う余裕がないので家族や親類に助けてもらい、自分自身も生まれたばかりの赤ん坊を抱えながら発送や返品の処理作業をこなしていた。

ストックホルムガイドと称したオススメのレストランとそれぞれに合わせたドレス。

Adooreは自社のハンドメイドのプリント柄と選べるサイズの広さ(32から50(ヨーロッパ規格))も人気の所以だ。また多くの人に自分のサイズが分かりやすく注文できるように、webショップのモデルはサイズの違うふたりに同じドレスを着用させ、インフォメーションの欄にそれぞれのモデルの身長とサイズを表示している。またいま流行りのライブショッピングにも力を入れている。それぞれのドレスがどういう風になびいて、フレアが動きシルエットが変わるのかなど、動画によりさらに分かりやすく自分のサイズを選ぶ手助けにもなるのだ。さらにはネット販売で付き物の返品の多さをサステナの面からも考えて少しでも軽減できればという願いにもなっている。

プライベート時だけではなく、オフィス時でも颯爽とドレスを着こなす様はかっこいい。

現在のマーケットは89%がスウェーデンで残りは他の北欧諸国だ。正社員も4人新たに起用しアメリカ進出も考えていると、まさにアメリカンドリームならぬスウェーデンドリームだ。

text: Sakiko Jin

神咲子

在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。

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