寄付のつもりが廃棄物に? 新たな問題に取り組むベルリンのブランド。

世界は愉快 2023.10.24

河内秀子

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photography: ©EMEKA

エキゾチックなフラワープリントが印象的なスーツや、キルティング加工が施されたビッグサイズのバッグ……。インパクトのある一点ものアイテムが揃う「EMEKA」。2020年に、シドニー・ンワカンマが立ち上げたベルリン発のファッションブランドは、ヨーロッパからアフリカに送られる「古着」から生まれたものだ。
ベルリンの街を歩けば、町中で古着を寄付する回収ボックスが目にとまる。自分はもう着ないけど誰かの役に立つかもしれない、リサイクルされるのだから良いことだよねーと、深く考えずに着古した洋服や靴を入れてしまう。ゴミ箱に捨てるよりは罪悪感も薄い。これらの古着は断熱材にリサイクルされたり、市内の古着屋で再度売られることもある。しかしその7割は、主にアフリカなどの新興・途上国、グローバルサウスに輸出されているのが現状だ。

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photograhy: ©EMEKA

ヨーロッパからアフリカに送られている古着の量はここ10年来、増え続けている。欧州環境庁(EEA)によれば、2000年に55万トンだったのが、2019年には170万トンと3倍以上に。“寄付”として送られる古着は、現地のテキスタイル産業を壊滅状態に追い込み、地元の人を失業させていると大きな問題になっている。モザンビークではこういった古着を「災厄の服(Calamity clothes)」と呼んでいるほどだ。

「寄付」といっても、無料配布されているわけではない。現地の業者はコンテナごとに前払いして古着を引き取る。中身を見ることはできないので、それがゴミなのかお宝なのかは、届くまでわからない。増え続けるファストファッションの古着が大半なうえ、いい状態のものは選別されてしまうので、年々品質は落ちるばかりだという。

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photography: ©EMEKA

ケニアの首都ナイロビにはスワヒリ語で「束」を意味する、ミトゥンバという市場がある。欧米諸国から送られてくる圧縮された古着の巨大な包みから名付けられた、古着のマーケットだ。「EMEKA」のデザイナー、シドニーは、ここからコレクションを生み出している。

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photography: ©EMEKA

長い時間をかけて見つけたクールな柄やマテリアルの布を使ったEMEKAのスーツは、現地の職人たちが縫製を担当。西アフリカ最大級の古着市場、ガーナのカンタマント市場で見つけた古いテーブルクロスは、現地の女性たちが手作業で染めて、プリントを施して、リラックスウェアに生まれ変わった。キルティングのバッグは、布の小さい切れ端も詰め物にして、余さずに使えるようにと、新しく考えたデザインだ。

カンタマント市場があるガーナでは、増え続ける古着の処分に困っているという。結局はその4割がゴミとして最終的に市外に運ばれ、埋め立て処分されているが、浜辺にも古着が漂い、化繊からマイクロプラスチックが海に放出される。首都アクラ市内には処分場がないため、そのまま焼却されてしまうことも多いそうだ。
「貧困にあえいでいる人達が、自分たちのものでもないゴミの中で生活しなければならないんだ」とシドニーは言う。
古着をアップサイクルしたところで、この巨大な古着市場の状況を変えることは難しいだろう。しかし、ファッションを通じて、消費者の意識を変えることはできるかもしれない。
「大手ファッションメーカーにももちろん責任はある。でも消費者一人ひとりが、自分たちの無秩序な消費から生まれた廃棄物がいったいどこに行き着いているかも、自覚してほしいな」

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photography: ©EMEKA

text: Hideko Kawachi

河内秀子

ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau

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