サカイとのコラボも絶賛されたゲットーガストロの朝食を自宅で。

世界は愉快 2024.01.09

稲石千奈美

サカイ、カルティエ、故ヴァージル・アブローなどそうそうたるクリエイターやブランドとのコラボをヒットさせているニューヨーク・ブロンクス出身のシェフ集団ゲットーガストロは、独自の食イベントはもちろん、アカデミー賞公式パーティーなどセレブリティらが集う場のケータリングの依頼もあり、高い人気を誇る。

ゲットーガスロト発起人のジョン・グレイ、ピエール・セラオ、レスター・ウォーカーが目指すのは、食体験を超えるムーブメント。アフリカ系アメリカ人文化、特に米南部料理やヒップホップを介して、食、音楽、ファッション、アート、デザインの融合を実現すること、さらに活動を通して人種差別やアイデンティティ、経済格差などの問題提起とエンパワメントを目指している。

彼らのビジョンに賛同し、支援したい一般のファンにとって悩ましいのは、ゲットーガストロが食集団ながら常設のレストランや定期的なポップアップなどがないことだ。SNSや時々ある商品の販売をチェックしたり、著書『Black Power Kitchen』を読み情報をキャッチしていたが、予想外の量販店コラボで状況が一転した。

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サカイとのコラボではナイキのスニーカー型で焼かれたゲットーガストロシグネチャーのワッフル。全国展開しているターゲットで購入できるのはパンケーキにも使用できるミックスで、オリジナルのほかスイートポテト、ストロベリーがある。各種6ドル99セント。photography: Chinami Inaishi

ゲットーガストロが量販のパートナーシップを組んだのは、早くからフィリップ・スタルクとのコラボレーションでキッチンや家庭雑貨にデザイン付加価値をもたらした全国系大手スーパーのTarget(ターゲット)。
1日のスタートとなる朝食から元気とエネルギーを!と願いも込めた食のアイテムはゲットーガストロのシグネチャーでもあるワッフル&パンケーキミックス、メープルシロップ、アメリカ独特の朝食用のトースタースナックで、それぞれ素材やフレーバーにこだわったオールナチュラルだ。スーパーに並ぶ、他社の量販商品に比べると、確かに不要な添加物がないことに気づく。ワッフルミックスは水を加えるだけなのに南部らしいスイートポテトの滋味がほっこりとした味わいで、朝食だけにしておくのはもったいないくらい。酸味のあるクリームとプチプチしたトンブリでワインのあてにしてもいいなと思う。メープルシロップはアップルサイダーやスパイスが朝食の定番に新しい感覚をプラスしている。トースターで温めるタイプのスナック菓子は日本人のテイストには濃厚すぎるかもだが、品質や味のレビューは好評だ。

ゲットーガストロの3人がターゲット店頭で一般客に突撃営業!「オールナチュラルで、高フルクトースコーンシロップ(ブドウ糖果糖液糖)不使用です」と訴える。

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トースターに入れて温める甘い朝食スナック。映画『パルプフィクション』でジョン・トラボルタがこのお菓子を食べたくなってしまったために命を落とすシーンを思い出す。中身のジャムが熱くなってとろりとする。アップルシナモンメープルのほか、フレーバーは色も大胆なピーナッツバター&ジェリー、チョコレートラズベリー、ストロベリーフレーバー。4枚入りで5ドル99セントは競合ブランドより高いが、納得できる品質だと思う。photography: Chinami Inaishi

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アメリカではワッフルやパンケーキはメープルシロップでいただくのが定番。ゲットーガストロのメールプルシロップははオーガニックのダークメープルシロップをベースにアップルサイダーをミックスしたり、フレーバー豊かなトウガラシでスパイスをプラスして。各9ドル99セント。photography: Chinami Inaishi

家電部門ではアパート暮らしでも活躍しそうなワッフルメーカーやノンフライヤー、ホットプレートなどがあり、ゲットーガストロが幅広い社会経済や生活背景の人々に大胆で楽しく、クオリティの高い食生活を願っていることが伝わってくる。

ターゲット限定デザイン・販売のワッフルメーカー(39ドル99セント)はCRUXとゲットーガストロのコラボ。動画ではシェフ、タラ・トーマスがイチゴワッフルミックスを使った抹茶クリームとマンゴーのトライフルレシピを紹介。

ヒップホップが50周年を迎えた2023年はニューヨーク・ブロンクスがヒップホップ発祥の地として注目された。マンハッタンやブルックリン、ハーレムに行ったことのある人でも、ブロンクスを経験したことは少ないかもしれない。この機会にゲットーガストロのルーツに足を運んで探索してみるのもいいし、ターゲットとのコラボで身近になったブランドの熱いミッションをこれからも応援し続けたい。

ターゲットとのコラボレーションローンチのプロモーション動画。

ナイキワールドバスケットボールフェスティバルでは、コートサイドでサンプルを配布。

text: Chinami Inaishi

稲石千奈美

在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。

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