厳しい冬のイメージが強いが、実は夏は夏で、酷暑になるニューヨーク。渡米直後に、「どれだけ寒くなるかの前に、どれだけ暑くなるかの心配をすべき」と言われたのを覚えている。そう、ニューヨークの夏は、時として35℃にもなるのだ!猛暑とも言える夏に、ニューヨーカーが避暑するために向かうのが、ハンプトンズだ。マンハッタンから車で2時間ほど、ロングアイランドの東に位置するハンプトンズには、大抵の人は金曜日に向かい、週末を過ごし、日曜日の夜に帰ってくる。ニューヨーク市に比べて、大体気温が4〜5℃低いので、暑い時期はずっと過ごしやすい。
5月末のメモリアルデーから、9月頭のレイバーデイの祝日までが、ハンプトンズの「シーズン」と言われており、さまざまなソーシャルイベントが開催される。F・スコット・フィッツジェラルドの小説『グレート・ギャツビー』の舞台になった場所でもあり、高級別荘地と謳われているだけに、広大な敷地を有する、リゾートホテルのような住居も多く存在する。
中でも邸宅で有名なのは「グレイ・ガーデンズ」だ。現在のオーナーは、ファッションデザイナーのリザ・ラングだが、先代を遡れば、ジャクリーン・ケネディの叔母、イーディス・エウィング・ブーヴィエ・ビールと、その娘が所有者だった時代もあり、ふたりの物語に関しては、映画化もされている(生前、ジャクリーン・ケネディは夏によく訪れていたという)。今年の夏には、「ハンプトンズ・ソーシャル」誌がサマーソワレを、同宅で開催し、ラッキーな招待客は、そのまるで秘密の花園のような美しい庭園で夏の夕を過ごすことができた(招待客の中には、「セックス・アンド・ザ・シティ」の原作者、キャンディス・ブシュネルの姿も!)。
それまではハンプトンズへは別荘地を所有している白人富裕層とその家族が行くものとされ、訪れる年齢層も高かったが、近年になって若干変わってきている。ハンプトンズから車で45分、ロングアイランド最東端のモントークが数年前から活性化され、ホテルやレストラン、バーが続々とオープンしている。若い層が多く訪れるため、ハンプトンズにも、その傾向が流れてきている。モントークは、ハンプトンに比べて宿泊施設が充実しているので、別荘を持っていない若者も、ビーチやパーティに訪れることができる。またインフルエンサーを招待したイベントが、モントークでもハンプトンズでも増加傾向にあることも、若年層を惹きつけている所以だろう。
「Hamptons Social」誌が開催したサマーソワレの様子。同誌はハンプトンズでのソーシャルイベントを夏季期間中に毎週開催している。
ブルックリンに住み、夏は断然アップステートに行く派のクリエイティブ系には、若干揶揄されていたハンプトンズだが、今後は若年層にさらに普及するかもしれない。
長谷川安曇
東京出身、2004年からニューヨーク在住。フリーのライターとして活動しながら、映像制作にも携わり、キャンペーンやミュージックビデオのプロデュースとフィルムメーカーとしても活動する。www.azumihasegawa.com