プラダ財団で展覧会を開催! NYを拠点に活躍するマジカルリアリズムの表現者。

世界は愉快 2024.11.15

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ブルックリンを拠点に活動するベンナニの作品は、ホイットニー・ビエンナーレやMoMA PS1、アート・ドバイ、ルイ・ヴィトン財団、パブリック・アート・ファンド、CLEARINGギャラリー、The Kitchenなどで展示されている。 photography: Valentina Somma

思わずクスリと笑ってしまうユーモア、どことなくノスタルジックなキャラクター、そして現代生活の中であふれているメディアを用いた手法――。メリエム・ベンナニはモロッコのラバト出身のアーティストで、現代社会の複雑な問題を、映像やインスタレーションを通じて、ユーモラスに表現している。彼女のアートは、リアリティ番組やドキュメンタリー、アニメーションなどさまざまなメディアを融合し、YouTubeや携帯で撮影した映像の要素も取り入れながら、独自の表現方法を模索。ジェンダー問題やアイデンティティなどのテーマに鋭く切り込んでいる。ベンナニの作風には、マジカルリアリズムが含まれており、現実とフィクションが交錯する世界を創り出している。

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サンダルやスリッパがまるで音楽を演奏しているように音を出して、動く展示。photography: Exhibition view of "For My Best Family" by Meriem Bennani 上: Delfino Sisto Legnani-DSL Studio Courtesy Fondazione Prada 下: Meriem Bennani Sole crushing, 2024 Mechanized flip-flops and slippers playing music Fabric, metal, plexiglass, rubber, velvet, wood, and mixed media 192 elements of different features, overall dimensions variable

ニューヨークのクーパー・ユニオンで美術学士号を取得。パリのエコール・ナシオナル・シュペリウール・デ・ザール・デコラティフでアニメーションの修士号も取得した。卒業後は、彫刻や没入型インスタレーションといった形で、映像表現と空間を融合させる実験的なアプローチの作品を発表した。2019年には『Mission Teens』という作品を作り、フランスの学校を舞台に、学生たちの日常を偽のリアリティショー形式で描きながら、フランスの植民地支配や文化的影響に対する、批判的な視点を提示した。擬人化された歌う家やポップカルチャーの要素を盛り込み、ユーモアを交えつつも、深刻な社会問題を考察している。

2022年には、ニューヨーク市のハイラインで、彫刻を展示。「Windy」と題したパブリックアートは、黒いフォームで作られた、竜巻の形をした回転する駒のような形。この彫刻は自ら回転し、視覚的に作品の詳細を把握するのがほぼ不可能なスピードで動く。これは、アニメーションや静止したキャラクターがどのように命を吹き込まれるかに対する、ベンナニの関心を反映している。ハイラインの活気や、絶え間ない動きからインスピレーションを得て、ニューヨークの街のエネルギーを捉え、その中で機能する彫刻を作りたいと思ったそう。

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今回の展示のメインのビジュアル。 photography: Sole crushing Meriem Bennani Research for Sole crushing, 2024 Courtesy of the artist

最新プロジェクトである「For My Best Family」(10月31日~2025年2月24日まで)は、プラダ財団から依頼を受けて制作された、ベンナニの最大規模の作品だ。ミラノの同財団で展示され、大規模なインスタレーションと、オリアン・バルキとの共同監督によるアートフィルム『For Aicha』で構成されている。このプロジェクトは、親密な関係や公共の場での社会的・政治的状況を察して、個人と集団がどのように「一緒にいる」かを、テーマにしている。「Sole crushing」という作品では、数百足のビーチサンダルが空気圧システムによって動き、まるで生きているかのように乱雑に動き回る。

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音楽プロデューサーのヘプ・ランナーと共同制作したサウンドトラックに合わせてサンダルが動くインスタレーションのスケッチ。 photography: Sole crushing Meriem Bennani Research for Sole crushing, 2024 Courtesy of the artist

このインスタレーションは、混沌とした集団儀式やプロテストを連想させるもので、ダッカ・マラキアと呼ばれるモロッコの伝統音楽の演奏や、巨大なスタジアムのような空間設計と組み合わせて、集団的なカオスを生み出している。また、音楽プロデューサーのヘプ・ランナーとのコラボレーションで作曲されたサウンドトラックが、インスタレーションの力強さを一層引き立てている。『For Aicha』は、フィクションと自伝、ドキュメンタリーを融合させ、ニューヨークとカサブランカを舞台に展開する、3Dアニメーションを用いたフィルム。物語は、擬人化された動物たちが住む世界。35歳のモロッコ出身のジャッカルで、映画監督のブシュラが、ニューヨークで自らのクィアネス(性的マイノリティや既存の性のカテゴリに当てはまらないこと)が、母アイチャ(カサブランカに住む心臓専門医で同じくジャッカル)に、どのような影響を与えたかを探求する、自伝的映画を制作する過程を描いている。ストーリーは、フィクション(映画の中の映画)と、ベンナニと彼女の母との実際の会話を基にしたノンフィクションの記録との間を行き来する設定だ。

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幻想的なアニメーションが美しいフィルム、「For Aicha」の一場面。 photography: For Aicha Orian Barki, Meriem Bennani, John Michael Boling and Jason Coombs Stills from For Aicha, 2024Courtesy of the artists

ブシュラは、母の愛と痛みを理解し、自分の人生を前進させようとする。ベンナニのほかの多くの作品と同様に、同作品でも、アニメーションという形式が光っている。現代の課題を革新的に表現する、パワフルな手法だ。ベンナニは、現代の文化的、社会的問題を扱う際に、独自のスタイルとアプローチを持ち、多くの人々に新たな視点と共感を与えている。

メリエム・ベンナニ
http://meriembennani.com/

「For My Best Family」
会期:開催中〜2025年2月24日
会場:プラダ財団美術館 Largo Isarco, 2, 20139 Milano
開)10:00〜19:00
休)火
料)一般15ユーロ
https://www.fondazioneprada.org/project/for-my-best-family/?lang=en

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