今年のスウェーデンはとても良い秋日和だった。例年ならば秋らしい秋を感じる間もなく冬に突入し、暗い日中と雪、そしてマイナスの気温のもと1年の半分くらいを過ごすのだ。しかし今年は国内各地の紅葉の素晴らしい写真がソーシャルメディアにこれでもかというくらい投稿され、普段なら落ち込む時期に入るスウェーデン在住人のウキウキぶりがこれでもかと目に見えたのだ。
私は特別、鉄子(鉄道マニア)ではないのだが、幸運にもスウェーデンで電車の運転手の仕事に就くことができた。今回は自身の経験も踏まえ、スウェーデンでとっておきの「車窓からの旅」よろしく、素晴らしい景色が見られる路線を紹介したい。
ストックホルムから北上すること約380km。海岸線沿いのSundsvall (スンズヴァル)市と、そこから東へ一直線、ノルウェーの国境沿いの町Storlien(ストールリーエン)との間を行き来するMittbanan (ミットバーナン)という路線がある。
線路は続くよどこまでも、ではないが、全長358kmに及ぶこの路線はとにかくほとんどの区間が絶景揃いだ。
スンズヴァル駅から大体中間に当たるÖstersund(エステルシュンド)駅までは大小さまざまな湖や河、そして森林がお目見えし、水面を超えた反対側の町や村の景色もかわいくて童話の世界にいる感覚に陥る。
エステルシュンド駅からスウェーデン1のスキー場としても有名なÅre(オーレ)の町、そしてさらには最終駅でもあるストールリーエンまで、大小さまざまな山々が連なってきて、平地から高地へと景色の移り変わりも素晴らしい。
それぞれの駅からは路線と同行路のSt:Olavsleden(サンクト・オーラーヴスレーデン)というハイキング道があるので、途中下車して歩きながら次の駅まで絶景を楽しむこともできる。
オススメなのが、Fränsta (フレンスタ)駅とLjungaverk(ユンガヴェルク)駅間のハイキングだ。片道2時間弱かかるが、水沿いにたたずむ教会や、滝ながらの急流な川、さまざまな趣のある橋など、いろいろ楽しめてかつ、あまりゼイゼイ言わずにちょっといい運動感覚で次の駅まで辿り着ける。
残念ながら、途中乗下車可能な切符は販売されてないので、全行程約4時間かけて乗りっぱなしで景色を楽しむか、降りる駅を決めて上記のようにハイキングしたり、降車駅の町を楽しむのも手だ。
Stavre(スターヴレ)駅で降りて、無料のフェリーに乗ってAmmer(アンメル)島を散策したり、スウェーデン最古で現在も運行している蒸気船アルマ号に乗って観光するのもありだ。
夏は期間限定でTågsemesterkort (トーグセメステルコット)というフリーレイルパスが、Vy というアプリから購入可能で、Vy(ヴィ)鉄道会社の路線どこでも乗り放題なのでかなりお得だ。この会社は電車内でも切符購入可能で、全席自由席なのでこちらのほうが気ままな列車の旅を楽しめる。
ほかの会社は事前購入必須や全席指定、電車内では購入できないところが多いので要注意。6月後半から8月前半までの夏シーズン間は混むので、できたら時期を少しずらして行くとゆったりとでき、秋の紅葉を楽しみたいのなら、9月後半から10月頭がオススメだ。
機会があるようだったら、是非スウェーデンで電車の車窓からの絶景を眺める旅を試してほしい!
神咲子
在スウェーデンライター。コーディネート業も行うが、本業はレストラン業だった。そして50歳を過ぎてから、鉄道の電車の運転手に。スウェーデンの北部ウメオ市とスンズヴァル市を運転する日々を送る。