同じ北欧圏内とはいえ、フィンランドのように熱いサウナの後に冷たい海に飛び込む習慣はないデンマークだが、季節を問わずサウナで整う気持ちよさは万国共通。とはいっても、コペンっ子(コペンハーゲンに住む人たち)にとって、サウナは会員制のジムやスパ、公共プールなどで利用するものだった。
そんな中、最近じわじわと人気なのが、「モバイル•サウナ」。期間限定の移動式サウナで、海辺や住宅街、カフェの一角などに設置される小規模のサウナ施設だ。形式はワゴン型、バレル型、テント式など、いろいろある。


「会員登録は必要ありません。現在は市内3箇所にワゴンを設置していますが、仕事の後、カフェに行くついでなど、webで予約して、気軽にサウナグスを体験してください。」と、モバイル•サウナのひとつ、「サウナ85」のジェネラル•マネジャーのシルケさん。
シルケさんが言う、「サウナグス」とは、日本では「ロウリュサウナ」で知られる、アロマセラピーのサウナ版。「サウナグス•マスター」と呼ばれるインストラクターが、水と数滴のエッセンシャルオイルをミックスした液体をサウナオーブンの熱い石の上に注ぐと、オイルを含んだ水が香り高い蒸気となり、身体と心をリラックスさせる。
コペンハーゲンでは、再開発地にある高額な会員制サウナがメディアなど取り上げられる中、サウナ85のセッションは、休憩を含めて約75分間で200DKK(約4,300円)と、物価高のコペンハーゲンではちょっと贅沢なブランチくらいの価格だ。
その内容は、約12分間のラウンドが3回、それぞれに8分間の休憩を挟む。高品質のエッセンシャルオイルをブレンドした香りと音楽でリラックス効果を高めるという。チームビルディングやファッション•イベント、家族や友人たちの集まりなど、サウナグスマスター付きでの貸切利用も多い。

今後はデンマークの第二の都市オーフスやロンドンに進出予定だというから、これからもモバイル•サウナを各所で見かける機会が増えるにちがいない。

photography: Sauna85

冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
Instagram: @chi.tomita photography: Kazue Ishiyama