北欧デンマークで、伝統的に春の訪れを象徴する花は、黄色い水仙。毎年イースター時期に咲くので、「イースターリリー」と呼ばれる。それに加え、近年は日本よりほぼ1ヶ月遅れで満開となる桜も話題になり、コペンハーゲン市内に3箇所ある桜の名所ではお花見を楽しむ人々を見かけるようになった。

元々、桜の下でピクニックを楽しむ習慣がなかったデンマーク人に「日本の花見」を紹介したのが、「コペンハーゲン•サクラフェスティバル(以下、「サクラフェス」と表記。)」だ。毎年4月末の土日、港に面した「ランゲリニエ公園」の広場で開催され、今年で第18回目を迎える。
きっかけは、2005年の童話作家アンデルセンの生誕200周年記念に、デンマークとの交流が長い、アンデルセングループの親会社、「パンと暮らしの研究所」の高木誠一所長と同社社員から、コペンハーゲン市に200本のソメイヨシノが寄贈されたことだった。それらがランゲリニエ公園に植樹され、立派な花を咲かせるようになった頃、サクラフェスの実行委員会が設立された。主な目的は、家族や友人、恋人などの親しい人々と一緒に桜を愛でる日本のお花見の習慣をデンマーク人にも広めることだったが、年々規模が大きくなり、いまやコペンハーゲン港に春を告げるイベントのひとつとなった。

内容は、例えば、特設ステージでの和太鼓、三味線、柔道、合気道、コスプレ、けん玉、書道などのデモンストレーション、広場での野点、餅つき、折り紙指導、盆踊りなど。それに加え、ヴィンテージ着物、アニメのフィギュア、弁当や和菓子などの屋台が並ぶ。フード類はサクラフェス限定品もあるので、どこも長蛇の列で、まさに盆と正月を一度に祝うような盛況ぶり。訪れる老若男女たちも、着物、侍やアニメキャラのコスプレなどで着飾り、会場を華やかに盛り上げるから、その様子はTVでも報道されるほど。



国を問わず、桜の花は人々に出会いの場を提供する。もっと日本を知ってもらうため、サクラフェスはこれからも貢献していくにちがいない。

Copenhagen Sakura Festival
https://sakurafestival.dk/
Instagram: @copenhagensakurafestival

冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
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