コペンハーゲンに芸術の秋の幕開けを告げる現代アートイベント、「CHART(チャート)」が開催された。今年で13回目となるアートの祭典のメインとなるのは、ノルディック諸国から厳選された現代アートシーンを牽引する36ギャラリーによる展示だ。一方で、コレクターやアートに関心がある人に限定せず、楽しいことが好きな老若男女も大歓迎のアートフェスというのも特徴だ。
コンペで選ばれた、中庭の"Re-Route by Samuel Charles Barratt" 。交通コーンをイベントの灯台として解釈し、再利用できる素材で循環型デザインアプローチを採用している。 @samuelcharlesbarratt photography: Jan Søndergaard
コペンハーゲンの晩夏を彩る、現代アートの祭典。
みんなのアートフェア「CHART(チャート)」。
会場は市内中心のシャルロッテンボー。デンマーク王立美大と複数の美術施設が集まる、1670年代の歴史的な建物だが、まず訪問者を迎えるのは、中庭のインスタレーション。街でよく見かけるオレンジの交通コーン約4000本を使った、建築家サミエル•チャールズ•バレットによる「Re-Route(リルート)」という作品。その下には、クラフトビールや弁当などの屋台が設置され、夕方からはDJやパフォーマンスで賑わった。日中はコレクターやアーティストの公開トークもあったが、展示エリア以外は入場無料という気軽さも売りのひとつだった。
チャートの設立メンバーでもある、コペンハーゲンのV1ギャラリーは、Frederik Nystrup-Larsenの個展、「Bonding(ボンディング)」で、絵画、彫刻、家具でアーティストの世界観を表現した。 @vlgallery @frederik_nystrup_larsen photography: Jan Søndergaard, courtesy of the artist and V1 Gallery
アーティスト、Frederik Nystrup-Larsen。着用のアクセサリーも自身の作品。 photography: Chieko Tomita
「チャートは、世界のアートイベント業界でも独自で、関連するパブリックプログラムとプレゼンテーションを重視しています」とディレクターのユリエ・クオットルップ・シルバーマン氏は話す。
「今年は特に公共の場でのアートに光を当て、議論を活発化させ、環境を形作る上でのアートの役割を強調しています」
そのコンセプトを、「チャート・パブリック」とし、中庭のインスタレーション、市内各所やテーマパークの「チボリ公園」にも作品を展示、観光客にもアピールした。
コペンハーゲンの観光スポット、チボリ公園内に展示された、Frederik Næblerødによる、 Saphead, Buffoon, Zany, Prankster, 2025。ピエロの顔のようにユーモラスで、ちょっとグロテスクな陶器の作品。@alicefolkergallery @naebleroed @tivolicph photography: Courtesy of the artist, Alice Folker Gallery and CHART in Tivoli
ヘルシンキのGalerie Anhava のブース。これは、EEVA-LEENA EK-LUNDの作品のコーナー。各ギャラリーの展示方法も見どころのひとつだ。@galerieanhava
@eevaleenae
そして、チャートが3年前から力を入れているのが、「スタート・コレティング・ウィズ・チャート」。これは、「現代アートを自宅に飾りたいが、高すぎて無理」という、ビギナーのための企画。参加ギャラリーが、20,000クローネ(約46万円)以下の作品を提供、予算内でお気に入りが見つかれば、ギャラリーとの関係が築け、コレクターへの道が開けるという。
Start Collecting with CHARTは、各展示ギャラリーから小品を集めたコーナー。来訪者にアート作品を所有する楽しみを提案。 photography: Joakim Züger_BARSK Projects
北欧らしい民主的な考え方に基づくチャートは、みんなのアートフェアだ。訪れた誰もが、現代アート好きになるにちがいない。
チャートのディレクター、Julie Quottrup Silbermann。コペンハーゲンのマーティン•アスベック•ギャラリーのディレクターなどを経て、2022年より現職。 photography: Joakim Züger

冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
Instagram: @chi.tomita photography: Kazue Ishiyama