ドイツの冬、クリスマスマーケットの裏に隠れた甘くておいしい伝統とは?

世界は愉快 2025.12.06

河内秀子

クリスマスのひと月前くらいから、ドイツではオーブンが大活躍となる。特に子どもがいる家庭では子どもと一緒に様々な種類のクッキーを焼く風習「Plätzchen backen(プレッツヒェン・バッケン)」があるのだ。たくさん焼いて学校や職場、近所の人に配るほか、ひと抱えもありそうな巨大なクッキー缶に詰めて、アドベント(待降節、クリスマスまでの4週間)の週末にお茶のお供とする。

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バニラシュガーがたっぷりかかったキップフェルなど定番のクリスマスクッキーが詰まった、専用の缶。

家庭によって好みの味も種類も異なり、作られるクッキーもレシピも少しずつ違うが、人気があるのはキップフェルと呼ばれる三日月型のクッキー。ナッツの粉と卵黄で作るほろほろした食感と、バニラシュガーの出すほんのりした甘さのあるもの。また、シナモンの香りの星形のクッキー、ツィムトシュテルネも定番だ。

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クリスマスまでの4週間「アドヴェント(待降節)」を祝うためのリース「アドヴェントクランツ」とクッキー。クッキー用には専用の盛り皿も販売されているほど。

この風習の中心となるのは子どもたちだ。色々な型を揃えてクッキーを抜いて、思い思いにデコレーションをする。この季節になると、週末は家族でクッキー作りという人も多いだろう。甘いバターとお砂糖の香りがキッチンを満たす。

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クリスマスマーケットなどでも、子どもたちとクッキーを焼くワークショップが人気。

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一方、街の菓子店やパン店のショーウィンドウを飾るのはスパイスたっぷりの硬いクッキー「レープクーヘン」で作るお菓子の家。スーパーマーケットでは簡単に作れるキットも売っているので、自宅でのホリデー気分を盛り上げる。

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レープクーヘンで作るお菓子の家「ヘクセンハウス」。グリム童話の、ヘンゼルとグレーテルに出てくるお菓子でできた魔女の家を模している。

お菓子の家にはマーブルチョコやグミを貼り付けて、アイシングでデコレーションしたり、ヨーロッパの伝統菓子マジパンで飾り付けをしたりする。クリスマスまでに色々なところがつまみ食いされてしまうのも、ご愛嬌。

実はこの伝統、いつからどのように始まったのかはわかっていない。一説には、中世の修道院でクリスマス前に、スパイスや蜂蜜を入れた日持ちのするパンのようなものを焼いて、貧しい人たちに分け与えたというのが始まりだというのもある。自分たちで食べるだけでなく、みんなで分け合うのが重要というのはいまも同じ。 誰かが喜んでくれる顔を思い浮かべながら作るクッキーは、どんな高級菓子よりも、おいしいに違いない。

河内秀子

ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau

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