ここ数年の日本旅行ブームもあってか、コペンハーゲンの和食ブームは加速中。本場の味を堪能したデンマーク人が増えたことも追い風となり、高級寿司店から割烹や居酒屋、ラーメン店まで、バリエーションも豊かに展開されている。
一方で、なぜか注目されていなかった日本人のソウルフード「おにぎり」も、最近はコンビニや専門店も誕生するなど、口コミで広がりを見せている。

コペンハーゲン中央駅に近い、元食肉市場跡クービュウン(Kødbyen)の一角にある。店名のComéは、「米」と、多くの人に立ち寄ってもらえるよう、英語「come」の意味も込めているそう。
そのパイオニア的な存在「コメ・ライス・キッチン(Comé Rice Kitchen)」を訪ね、店長兼シェフの町田寛夫さんに話を聞いた。
「ミュシュラン星付きのレストランでの経験を通して、特別な日のための料理だけでなく、普段から気楽に楽しめる、おいしいものを提供したくなったのです」と、そのきっかけを話す。
元々は、隣接するアジア食材店の鮮魚売り場を担当していたが、残った食材を活用し、おにぎりを並べてみたところ、毎回完売するほどの反響に。この経験をヒントに、2024年8月におにぎりメインのお店をオープン。
「当然ながら、おにぎりは米ありきですから、長野産のコシヒカリとあきたこまちのブレンド米を日本から取り寄せ、肉や魚などは当地で調達しています。とはいっても、食材については、自分が納得するレベルのものを揃えるのに、苦労しています」

人気の具材は、エビの天むすとサーモンマヨ。おにぎりのガラスケース上には、ライスコロッケ、メンチカツなどの揚げ物も。ほかにも、刺身や大根の酢漬け、海藻や豆腐のサラダなどのサイドメニューも販売。
北欧の人たちの好みに合わせて、全体的に塩を少し強めにしているという。常連客は、近隣のオフィスに勤める人、観光客、学校帰りの子どもたちまでと幅広い。唐揚げやキムチ、コロッケなどサイドメニューも充実。ランチにスナック、そしておやつにも使え、利用の仕方が多岐にわたるのも人気の理由のひとつだ。
コペンっ子たちは、寿司やほかのアジアンフードでご飯に慣れていることもあり、おにぎりに自然になじんでいる。片手でも食べられ、価格も手頃。特に女性客からは「ヘルシーだし、豊富なバリエーションのなかから選ぶ楽しみもある」と。
人気メニューは「天むす」だが、納豆や唐辛子味噌などの日本的な具や、ヴィーガン向けのものもラインナップ。常時11種類くらいが揃う、やはり何度通っても飽きないのもうれしいポイントだ。
「おにぎりは、いわゆるファスト・フードとされますが、日本の味をきちんと伝えられるよう丁寧に作っています。ぜひ多くの人に楽しんでもらいたいです」

日本小物などが並ぶ店内。イートインも可能だが、ほとんどがテイクアウト客だという。
おにぎりは1個35クローネから、コペンハーゲンの屋台で売られているホットドッグなどと大差なく気軽に食べられる価格も、町田さんの心意気があって実現したものだ。
現地の人たちからも広く受け入れられ、近々2号店をオープンする予定だ。この先、日本人のソウルフードのおにぎりが、デンマーク人の日常にも欠かせなくなるかもしれない。

Comé Rice Kitchen
https://www.comefood.dk/
@come.rice.kitchen
●1デンマーククローネ=25円(2026年1月現在)
photography: Chieko Tomita

冨田千恵子
コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、犬ネタが得意なジャンル。音楽はラヴェルが好きな北欧のフランスファン。
Instagram: @chi.tomita photography: Kazue Ishiyama




