「ビール大国」のイメージが強いドイツ。しかし、ドイツワインも日々進化しており、ドイツ人自身がそのおいしさや、他国からの人気に驚いている状況だ。ドイツワインを堪能したいならぜひ足を運びたいのが、2020年夏にオープンした ルッツ・ツォルハウス。ベルリン市内でも選りすぐりのドイツワインと洗練されたドイツ料理が楽しめると評判を呼んでいる。それもそのはず、この店は市内唯一のミシュラン3ツ星を獲得しているワインバー ルッツの姉妹店。市内に6つの支店があるワインショップのオーナーが営むお店なのだ。
以前は運河を走る輸送船の通行税(ツォル)を払う場所だった建物。
数多くのレストランやカフェが集まる、クロイツベルク地区。ラントヴェーア運河の岸に120年以上前に税関として建てられた組木造りの建物にルッツ・ツォルハウスはある。天気がいい夏の週末には運河沿いのテラス席も開放する予定だ。ドイツではパンデミック以降、換気のいい屋外の人気が急上昇。
中は明るいグレーを基調にした落ち着いたインテリア。
近郊で採れる旬の食材を使ったメニューに合わせて、ソムリエおすすめのドイツワインを選んでくれた。まずは中近東風の豆のコロッケを近隣で取れる地産のエンドウ豆でアレンジした前菜。
ベルリンでも人気のファラフェル(中近東風の豆のコロッケ)を、エンドウ豆を使ってアレンジ。カリッとした食感やエディブルフラワーの酸味が泡に合う。15,50ユーロ
1本目は、ドイツではゼクトと呼ばれるスパークリングワイン。スパークリングといえばシャンパンが最高峰と言われ、ドイツワインの中でもゼクトは長らく評価が低かった。
「ドイツのゼクトを盛り立てるために尽力しているワイナリー、ラウムラントが、好条件の時だけ造る単一畑の泡。ブラン・ド・ブランは酵母とともに90ヶ月以上熟成させて出来上がります。青リンゴやマルメロのようなふくよかなフルーツの香りと、柑橘系の酸味が特徴ですよ」
このワイナリーのおかげで、ドイツの発泡ワインの評価は格段に上がっており、いまやフランスやイタリアからも注目を浴びているのだとか!
今回選んでもらったおすすめワイン3本。グラスで6ユーロ〜
メインには、イワナにエルダーフラワーのふんわりとしたクリームを添え、ドイツ南西部のワイナリー、サルヴァイのピノノワールを。強い土壌を感じさせるミネラル感が、魚に添えた亜麻の実のチップによく合う。
近郊で獲れる岩魚は、歯ごたえが残るほどにしっかり焼いた皮と舌の上で消える繊細な泡の食感の違いも楽しめる。25,50ユーロ〜
イチゴのソルベの下にサンドロンというグミ科の木の実と玄米味噌(!)のソースを忍ばせた爽やかな中にパンチのある甘辛味のデザートには、モーゼル地方のクレメンス・ブッシュの爽やかなリースリングを。アルコール度数も甘さも控えめのワインが、イチゴやハーブのフレッシュ感を引き立てる。
さっぱりとしたフルーツの酸味の中に、玄米味噌の濃厚な旨味がとろけるデザート14,50ユーロ。
定番のブルートヴルスト(血のソーセージ)をこんがりと焼き上げたメニューには、赤ワインはもちろん近隣のビール醸造所から届くビールもおすすめ。
旬の食材を使ったメニューの他に、いつ来ても食べられる定番も。こちらは定番の血のソーセージ14ユーロ
一皿あたりの量は多すぎないので、前菜やメインといった括りに縛られず何皿も頼んでいる人もいる。最近ドイツでも増えている数名でシェアするような形式で、ワインと合わせていろいろな味を楽しみたいお客にはぴったり。心ゆくまでドイツワインを堪能したい。
text: Hideko Kawauchi

河内秀子
ライター。2000年からベルリン在住。ベルリン芸術大学在学中に、雑誌ペンなど日本のメディアでライター活動を始める。好物はフォークが刺さったケーキ、旧東ドイツ、マンガ、猫。ドイツでも日本でも「そとのひと」。 twitter:@berlinbau