サステイナビリティや健康コンシャスが生活習慣に浸透しているロサンゼルスでは、ナチュラルワインや低アルコールドリンクの探求が新しいお酒の愉しみ方のひとつだ。ワインショップのセレクトやレストランのワインリストも自然派ワインやノンアルコールのチョイスが増えてきた。運転や健康などの理由でお酒を飲まない人でもレストランの食事やバーの雰囲気を満喫できるようにと、店がノンアルコールドリンクに力を入れたり、「今日は軽く飲みたい」などの低アルコールを選ぶことがめずらしくなくなった。
自然派ワインといえば、かつて代表的なものとしてビオディナミ(バイオダイナミック)など特有の匂いが苦手な人も多かったが、最近は選択肢が広がり、飲みやすいものも多くなったようだ。ワインショップやレストランで、カリフォルニアやオレゴンの造り手によるナチュラルワインについてスタッフに話を聞けば、やはり生産者の取り組みが素敵で、あれこれ試したくなる。そんな飲み手の好奇心や嗜好が、ロサンゼルスでのナチュラルワイン人気に貢献しているように思う。
豊富になった自然派ワインや低アルコールのイチオシは、ジョアナ・アヴィレスによるイラストも魅力的なスパークリングドリンク、 ジュジュだ。メディアクリエイターであり、サラダ・フォー・プレジデント主宰(&同名の料理本著者)ジュリア・シャーマンの閃きから生まれた発泡性のヴェルジュ。ヴェルジュとは未熟のブドウを絞ったジュースで、フレッシュな酸味が料理やカクテルで重宝されてきた。アーティストをインスピレーション源としたサラダ料理本サラダ・フォー・プレジデントのブックツアーでワイナリーを訪れたシャーマンは、たまたま発酵してシュワ〜っと開いた自家製ヴェルジュを味見して、「これは飲み物としてイケる!」と開発を決断したという。
シャーマンがコラボを依頼したのは北カリフォルニアのワイナリーで小規模ながら真摯に自然派ワインを生産するマーサ・スタウメン。自然やサステナビリティ、さらにクリエイティブな個性やライフスタイルを尊重する女性ふたりの取り組みは、2年間の試行錯誤を経て、新種のライトなお酒ジュジュとして実現した。
オーガニックのブドウと天然酵母で造るジュジュは酸化防止剤や保存料など添加物は一切不使用。昼バージョンのジュジュデイ(写真)はアルコール度数が3.5%だが、スパークリングワイン気分を味わえる。アルコール量が倍増するナイトバージョンともに公式サイトやワインショップなどで購入可能。各29ドル。
オーガニックのシャルドネとマスカットを100%使用したペットナット(微発砲のナチュラル)風のジュジュは、フレッシュなシトラスやハニーサックル、洋梨などのフレーバーが弾ける泡ですっきりした酸味がある。アルコール度数3.5%の昼バージョンDayと7%の夜バージョンNightがあり、それぞれ通常のワインの4分の1から半分のアルコール度数だ。冷やしたボトルをシャンパングラスでストレートにいただくのが定番だが、カクテルへの応用もおすすめ。
2019年、収穫後のブドウ踏みをするコラボレーターのふたり。女性起業家でもある彼女たちは誰も商品化したことのない新製品を開発。準備期間中に妊娠、出産、初めての子育てを経験しつつ、ジュジュをローンチした。
自然の恵みと造り手のポジティブなエネルギーがギュッとお酒になったようなスパークリング ヴェルジュは、手土産にも喜ばれるだろう。愉快にグラスを交わすボトルのラベルを見ているだけでも幸せになるし、家に常備すれば日常のささやかなことをいつでもお祝いできる、といいこと満載なライトドリンキングのニューカマーだ。
フードもデザインもいつも楽しげな姿で取り組むジュリア・シャーマン。家族と料理をしたり、『Salad for President』に続く2冊目の著書『Arty Party』出版ディナーを催したり、エネルギッシュな日々がインスタグラムに投稿されている。photography: Julia Sherman
text:Chinami Inaishi
稲石千奈美
在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。