LAで車を走らせることがあるなら、ぜひトライしていただきたいのがタコス巡り。フードトラックからストリートに現れるカート、ショップインショップのポップアップや人気レストランなど、LAの多彩な食文化を次から次へとタコスで体験する。おやつサイズなのでいくつも食べられるのもタコスの魅力のひとつ。
まずはタコスの基本であるトルティーヤについて。日本でおなじみのハードシェルのタコスもあるが、LAの主流は小さめのトルティーヤで包むタコスだ。トルティーヤはコーン(とうもろこし粉)とフラワー(小麦粉)の2択があり、中身との組み合わせも楽しめる。コーンは深い味わいともっちりした食感、フラワーは具材をシンプルに包む柔らかさがある。元祖メキシコシティ風と言われるストリートタイプのトルティーヤは直径10cmほどで2枚重ねが原則。LAでは毎年トルティーヤ大会が開催され、地元のレストランやトルティーヤの造り手がトーナメント形式でベストトルティーヤを競い合う。
次に具材。中身はバルバコアやカルニータといった伝統的なメキシコの煮込み肉や焼き肉、チョリソなどの加工品。そして韓国焼き肉をタコスに仕立てたコギ、ズッキーニの花やサボテンなどの植物系、魚介もメキシコ沿岸名物のフリッターや最近ではウニや刺身などのモダンな具材も登場している。メキシコ各地の名物からオーガニックなヴィーガンまで幅広い具材のチョイスがあるのがLAらしい。
ポイントとなるトッピング&ソース・サルサには、野菜やハーブ、ライム、チーズ各種など好みのフレイバーに、トマトや赤唐辛子のレッドソース、ホオズキのような酸っぱさのあるトマティーヨやシラントロを使ったグリーンサルサ、クリーミーなマヨネーズ風のクレマなどを合わせる。ソースやサルサも店自慢なので、あれこれ試してみるのがおすすめ。
街頭のカートで1ドルで購入できるシンプルタコスも、今年地元紙のレストランランキングでベストレストランを獲得したアナジャックタイの美しいシーフードタコスも、それぞれのおいしさがある。毎週火曜はTaco Tuesday(タコスの火曜日)が定着し、LAでは外でも家でもタコスを食べる人が多い。火曜に限らずLAで小腹が空いたら、まず近くのタコスを探して!
2008年、駐車場に突如として登場してからグルメフードトラックの元祖となったコギ(Kogi)は韓国焼き肉をタコスに仕上げ、現在も不動の人気だ。
左の白いトルティーヤが小麦、右の黄色いのがコーン。具材はかぼちゃとルッコラ、黒豆とサボテン、豚のグリル、牛の煮込みなど。
LAタイムズ紙2022年のベストレストランを受賞したアナジャックタイレストランのタイタコチューズデイは毎週火曜の人気イベント。予約が取れないレストランだが、火曜のタコスは予約なしなので、待ち時間を辛抱する覚悟があれば名店のユニークなタコスが堪能できる。
ファーマーズマーケットでは自家製のカラフルなサルサやホットソース、職人が手作りするトルティーヤが購入できる。写真のサルサは左からあっさりとしたフレッシュトマト、アボカド、焼きトマト、トマティーヨ、チリペックィンなど、瓶詰めのソース同様に野菜と唐辛子の組み合わせや辛さが豊富だ。
text: Chinami Inaishi
稲石千奈美
在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。