イギリスのおやつと聞いて、女王さまの名前を冠したケーキのヴィクトリアスポンジや、ジャムとクロテッドクリームがこんもりと乗ったスコーンを思い浮かべる人が多いかもしれない。でも全国津々浦々、世代を超えて誰にでも愛されている国民的スナックとして揺るがぬ地位を築いているのは、まぎれもなくソーセージロールだと思う。
ソーセージロールの断面はこんな感じ。冷たいままでも良いけれども、温めるとさらに美味しい。
イギリスのソーセージは独特だ。ハーブやスパイス、パン粉などを混ぜ込んだ生のひき肉(豚が多いが牛、鹿などの場合もある)を腸詰めにしたもので、加熱しないと食べられない。
ソーセージロールは、そんなイギリス特有のソーセージの皮を外した肉の部分(ソーセージミートと呼ばれている)だけをパイ生地で巻き、オーブンで焼いたものだ。スーパーはもちろん、ベーカリー、時にはお肉屋さんでも売られている。ミニサイズはパーティのフィンガーフードに欠かせない存在と言っても過言ではない。
その人気のほどは大手スーパーのソーセージロールコーナーに行けば一目瞭然。
大きなスペースを占め、圧巻のスーパーの専用コーナー。複数入ったパックが主流で、みんな大好きなのがうかがえる。
大手ベーカリーチェーン、グレッグスのものは特に親しまれており、一週間に250万個、年間では1億4000万個が売れているという。
グレッグスでは温かいソーセージロールが売られている。同店がヴェジタリアンのソーセージロールを売り出した時には全国的なニュースになった。
こだわり食材で作った、ちょっと豪華なものも。
屋外飼いの豚の肉を使用した高級なバージョン。
近年は肉の代わりにチーズや野菜を使ったヴェジタリアン対応や、野菜だけのヴィーガン用、さらにはグルテンフリーのものも数多く店頭に並んでいる。
日本のコンビニの肉まんに匹敵するような手軽さで、小腹が減った時に最適なソーセージロール。嫌いというイギリス人に、私はいまだ会ったことがない。
text,photography: Miyuki Sakamoto
在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。