お酒 from ロンドン ロンドンに日本人ミクソロジストの新しい風が吹く。

お酒好きには広く知られているが、イギリス、特にロンドンは世界のカクテルシーンを牽引する街と言っても過言ではない。老舗からエッジの効いた新しい店まで、さまざまなバーがキラ星のごとく集まり、どこよりも先駆けてカクテルの新境地を切り開いている。

そんなロンドンの人気店で活躍する日本人ミクソロジストがいる。鳥潟彦人さんだ。

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渡英からまだ1年にも満たない鳥潟さんだが、すでに業界内にたくさんの友人ができたそうだ。「イギリスのバーテンダー間のフレンドリーなコネクション、そして日本のバーやバーテンダーへの高い注目度を改めて感じます」。ロンドンの人種やバーのスタイルの多様さも、日々の学びとなっているという。

大学で哲学を学んだ後、シェフを目指すものの、カクテルの魅力に目覚めバーテンダーの道へ。銀座の名店を皮切りに、オーストラリアでも経験を積み、その後はシンガポールの名店Gibsonで4年に渡ってマネージャーとして活躍。昨年11月からはロンドンの高級街ベルグレイビアにある、日本と北欧をテーマとした複合施設Pantechniconのヘッド・ミクソロジストとして腕をふるっている。

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1830年に建築されたギリシャ様式の建物内は6つのフロアで構成され、食やドリンクだけではなくファッションや雑貨のセレクトシップもある。

鳥潟さんがPantechniconのドリンクチームとのコラボレーションで作るカクテルは、店内4箇所で味わえる。

地下にある日本料理店Sachiのカクテルラウンジでは、日本のクラシックカクテルを鳥潟さん独自の解釈で再構築した一杯や、日本のウィスキーや日本酒に加えて、柚子やミョウガなどの旬の和の野菜や果物を巧みに使ったカクテルを提供。

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右:シイタケをインフューズしたウォッカ、伊根満開の赤米酒などで作るユニークなダーティ&ブロッディマティーニ。左:ヤマザキ・オールドファッションド。大定番のカクテル、オールド・ファッションの新解釈。日本のウィスキーをカラメライズした醤油で作り、炙ったイチジクを添えている。どちらもSachiカクテルラウンジのメニューより。

トップフロアにある北欧スタイルのRoof Gardenでは、燻製や発酵の料理のテクニックを取り入れながら、アクアビットベースや白樺の樹液を使ったカクテルをメニューに並べる。

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右:アクアビットを使った「イエロー・ネグロニ」左:デンマークのウィスキー、スタウニング・ライを使った「プラムサワー」は、色のグラデーションも印象的。

日本産のウィスキーと日本酒に特化した店Sakayaの一角にあるカウンターでは日本のお酒をベースにしたカクテルが楽しめる。

カクテルメニューは季節に応じて変わる。「シーズンごとの新鮮な食材で創作したカクテルは、季節感を表現することをテーマにしています。旬が終わればそのカクテルも売り切れ、次の旬の材料で新たに創作しています」と鳥潟さん。

また9月11日までは建物奥のコートヤードにあるRoku Gin Summer Terraceでかき氷にインスパイアされたフローズンカクテルも味わえる。誰にでもわかりやすく楽しんでもらえる「日本の夏」仕様のカクテルをテーマにシンプルに構成したという。

「日本の夏の風物詩であるかき氷をビンテージのかき氷機で作るので、皆さんに楽しんでもらっています。驚いたのは日本通の外国人にかぎらず、日本人のお客さんも懐かしんで喜んでいただいていること。かき氷なんて何十年ぶり、とお客さんの言葉が印象的でした」

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昔ながらのかき氷機を使った、「かき氷メロン&抹茶」。日本製ジンで大人の味に仕上げている。

さまざまな食材を使って、自由で独創的なカクテルを創作したいと常に考えている鳥潟さん。一般的によく語られる日本人ならではの繊細さ、細部へのこだわり、シンプルさなどは自分では特に意識はしていないというが、それらも自然に加味されながら、ドリンクチームとの切磋琢磨で作り出されるカクテルは、お酒に造詣が深いロンドンっ子たちを虜にしている。これからますますの注目の存在となっていくのは間違いないだろう。

text: Miyuki Sakamoto

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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