連載【石井ゆかりの伝言コラム】第20回「ひまわり」&「朝顔」
石井ゆかりの伝言コラム 2019.07.01
第20回「ひまわり」&「朝顔」
夏が近づき、ひまわりや朝顔を見かけるようになると、小学校の理科の授業を思い出します。1人1つずつ植木鉢を用意し、種を蒔いて育てたものでした。終業式では家に持って帰らなければならなかったので、タダでさえ荷物が重いのに四苦八苦したものですが、今の小学生も朝顔やひまわりを育てるのでしょうか。
ひまわりや朝顔が小学校の授業で選ばれたのは、丈夫で比較的育てやすい植物だからだろうと思います。それでもなかには、なかなか芽が出ない子もいたようで、人によって育ち方が違っていました。
夏になると朝顔やひまわりだけでなく、多くの植物がさかんに繁茂します。だだっ広い空き地だと思っていた場所が、いつのまにか藪のようになっていて驚かされることもしばしばです。
この植物がもし、話ができたらさぞかしうるさいだろうなあ、と思っていたら、先日、こんな一節に巡り合いました。
「警報を発する植物として有名なのはトマトだろう。トマトは、草食の昆虫に襲われると、数百メートルも離れた場所に生えているほかの植物にも警告が届くほどの大量のBVOCを出す。」『植物は〈知性〉をもっている』(ステファノ・マンクーゾ、アレッサンドラ・ヴィオラ著 NHK出版刊)
BVOC(植物起源揮発性有機化合物)というのは、植物がその体内で作り出す物質のことです。たとえば植物が発する「におい」がその代表です。モノを言わない、と信じられてきた植物ですが、なんと、植物は植物同士で、においなどを使って「話し合っている」というのです! トマトがほかのトマトに「ヤバイ虫がきたぜ! 気をつけろ!」と伝えることがあるらしいのです。びっくりするではありませんか。
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何も考えていないように見える植物ですが、この本を読むと、植物がものすごく知的な存在であることがわかります。もとい「知性」とは何なのか、この本を読んでいると、よくわからなくなってきます。「賢い」ってなんなんだろう、という気持ちになるのです。自分の中の「賢い」のイメージがどんどん壊されていくようで、妙に気持ちが良くなってきます。
緑が所狭しと繁茂する夏、なぜ「怪談」が流行るのか、私はかねてから疑問に思ってきました。「暑いと、恐怖でひんやりしたいから」などというのは、詭弁ではないかと思ってきました。
ですが、これは私の単なる思いつきなのですが、もしかしたら、夏に怪談が流行るのは、「人間以外の生き物の気配」が強くなるからなのではないでしょうか。植物同士がさかんにコミュニケーションを取っているその「気配」を、私たち人間も、何となく感じとってしまうからなのではないでしょうか。たとえ「におい」などで話し合っていたとしても、そのへんでガヤガヤやっている気配というのは、やはり同じ生き物同士、伝わってくるということではないのでしょうか。
子どもの頃、毎日しゃがんで見つめながら育てた朝顔やひまわりも、もしかしたら幼い私に、何か大事なことを、そっと伝えてくれていたのかもしれません。
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