連載【石井ゆかりの伝言コラム】第23回「いわし雲」&「女心と秋の空」

第23回「いわし雲」&「女心と秋の空」

「いわし雲」といえば「まもなく雨」。
何で読んだのかもう忘れてしまいましたが、確か小説かマンガで、忍者の合い言葉としてこの組み合わせが用いられるシーンがありました。忍者の合い言葉なら「山」「川」が有名ですが、私の中では断然「いわし雲」「まもなく雨」。これは実際にほんとうのことで、いわし雲・うろこ雲と呼ばれる、細かく波を打つような雲が出ると、半日ほど後に雨が降ることが多いそうです。私の人生の中では、この合い言葉はけっこう役に立っています。
というのも、私は今京都に住んでいるのですが、京都盆地はその名のとおり山に囲まれているため、わりと「山の天気」です。「山の天気は変わりやすい」と言われますがほんとうにそのとおりで、天気予報があまりアテになりません。洗濯物を干す時などは、東京の冬のピーカンが懐かしく感じられることも多いのです。ゆえに自然、雲の様子を自分でちょこちょこ眺めては「そろそろ雨がくるかな」「風が強くなってきたぞ」などと判断しなければなりません。「いわし雲」「まもなく雨」は至言なのです。

「女心と秋の空」という言葉がありますが、これは「変わりやすさ」を言った言葉です。ただ、私はこうした表現には「鏡」の要素が含まれているように思います。自転車操業で火の車気味の業者さんは、逆に取引相手の支払い能力をやたら気にする、と聞いたことがあります。浮気性の人ほど、恋人の浮気について大変疑り深くなる、とも聞きます。罵倒語はたいてい、罵倒した本人がいちばん言われたくない、コンプレックスの表れである、という話も聞きます。「バカ」と言った人は「バカ」と言われることを最も怖れている、それは、実は自分自身がバカなのではないか、というコンプレックスを抱いているからだ、というのです。
「自分自身」に深く関わりのあることほど、相手の中にも無意識にそのような要素を見ようとしてしまう、ということが、けっこうあるのかもしれません。言葉は鏡なのです。

そんなわけで、決まり文句や諺には、「いわし雲」「まもなく雨」のような「なかばほんとうのこと」もあれば、そうでないものもあるんだろうな、と思う今日この頃です。

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