連載【石井ゆかりの伝言コラム】第25回「タクシー」&「占い特集」

第25回「タクシー」&「占い特集」

年末が近づくとファッション誌の占い特集や占いMOOKなどが賑やかに書店さんに並びます。「来年の運命!」など、ドラマティックな見出しにはっと目を奪われる方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、「フィガロジャポン」の毎年恒例「袋綴じ」をはじめ、何誌かに寄稿し、また、インタビューを受けました。ここ数年はラジオにも出させていただいていますが、主なる話題はもちろん「来年はどんな年?」です。各所でおんなじようなお話をしてしまうことになるのは誠に恐縮なのですが、2020年の星の動きは、それひとつしかないわけで、ネタが被るのは致し方ありません。ギャグがヒットした芸人さんのように、方々で同じようなことを語っております。

私は京都在住なので、ラジオの収録やインタビューとなると、東京に出張することになります。短い日数に予定を詰め込むことが多いので、勢い、タクシーをよく利用します。京都でもしばしばタクシーは使うのですが、東京のタクシー運転手さんは、京都の運転手さんとかなりカラーが違うので、新鮮です。京都のタクシー運転手さんは観光客の相手をする機会が多いためか、対応が比較的安定している印象があります。いっぽう、東京の運転手さんは、個性的な方が多いように感じるのです(当社比)。

そんな、東京の運転手さんのひとりに、こんなお話を伺ったことがあります。
「最近は車の呼び出しアプリとかもありますし、スマホでみんなすぐ電話できますから、車を呼んでいただく機会が多いんですが、我々タクシー運転手はやっぱり、道端で手を上げて乗っていただくのが、醍醐味なんです、それが何よりうれしいんですよね」
この運転手さんだけの思いなのか、一般にそういうことなのかは、私にはわからないのですが、なるほどそうか、とはっとさせられました。もちろん、電話などで呼び出しがあれば「呼ばれたところまで行く」というコストがあるわけなので、有り難くない話かもしれません。でも、いるかどうかわからないお客さんを探して回るより、確実にお客さんがいるとわかっている「呼び出し」のほうが、好ましい部分もあるのではと思っていたのです。
でも、その運転手さんは、「流していて乗ってもらうことが醍醐味だ」と、キッパリ言い切ったのでした。

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また、ほかの運転手さんは、雑談の中でぽつりと、こう言いました。
「我々は、その日、自分がどこに連れて行かれるのか、わからないんですからね」
そうなのです。
お客さんに目的地を指示され、降ろしたところでまたほかのお客さんに別の場所を指定され、というふうに、まったく行方のわからないジャーニーを毎日、繰り返しているのです。もちろん、無茶なオーダーには「ムリです」と断る場合もあるでしょう。でも、基本的には、言われた場所に向かうのです。

あるかどうかわからない出会いを探し、出会った相手にみちびかれて、次にどこに行くのかわからない旅をする。タクシー運転手さんとは、なんと神秘的な仕事だろう、と感心してしまいました。もちろん、それ故のご苦労はたくさんあるのだと思うのですが、少なくともこの2人の運転手さんは、仕事の「おもしろみ」の側に光を当てて、私に語ってくれたのでした。

ですが、よく考えれば誰もが、運転手さんたちと同じような日々を送っている、と言えなくもないような気がするのです。誰もが日々、あるかどうかわからない出会いに心を動かされ、その出会いの向こうにある、未知の目的地を目指して生きているところがあるのではないでしょうか。
それ故に、多くの占い手や書き手が毎年、「来年の星占い」の中で、私たちの未来に待っている「あるかどうかわからない出会い」について、懸命に語っているのだと思うのです。

design : SANKAKUSHA

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