テレワーク中、電話に出たがらない同僚への対処法とは?

Society & Business 2021.03.16

電話はメールより早く的確に用件を伝えられるけれど、ときには精神的負担になることもある。仕事を中断されたくないから、あるいは仕事の形跡を残すためという理由で、メールでしか連絡を取らない社員もいる。とはいえ社内の人間関係を円滑に保つにはメールだけでは不充分。対話を再開するためのアドバイスを紹介する。

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メールより早くて的確な電話だけれど、精神的負担やコントロールの道具とみなされることも。photo:Getty Images

3時間で3回電話をしたけれど、いつも留守番電話だ。同僚は休暇中でもないし、病気で休んでいるわけでもない。会議が半日以上かかることなどめったにない。だんだん心配になってきたところへ、頻繁なコールに驚いたのか、当の同僚から電話が。何度も電話されてイラついた感じが伝わってくる。「メールをくれればよかったのに。その方が簡単でしょ」と。

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テレワークが本格的に始まって1年あまりが経つ。100%在宅勤務というわけではないが、社内のコミュニケーションは劇的に変化した。だが、必ずしもよい方向に進化したわけではない。オフィスでは社員同士の自然な会話があるけれど、そうした貴重な交流の機会を補足するコミュニケーション環境を整えられていない企業は多い。社内コミュニケーションの点で、メールと電話の守備範囲は同じではない。文字には声の抑揚のような非言語情報が含まれていない。またメールでは業務以外の話題に触れることも少ない。「電話は人間関係を円滑にするのに役立ちます。お互いに近況を伝えるためだけでも、定期的に電話で話すことは大切。コロナ禍の出口が見えないいまのような状況ではなおさら」と話すのは、心理・社会的リスク予防を専門とするコンサルティング会社Empriente Humaine代表で、労働・組織心理学者のクリストフ・エンギュエンだ。

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電話による精神的負荷

ではなぜ電話アレルギーになる人がいるのだろう? 理由は単純なものから、深刻なものまでさまざまだ。そもそも仕事の内容や進め方は人によって違う。日々会議に追われている社員もいれば、同僚の電話でしょっちゅう仕事が中断されている人もいる。仕事に集中する時間が必要なのに、落ち着いて仕事ができる時間がほんの少ししか取れない。しかも16時30分には子どもたちが学校から帰ってくる。そんな時は、携帯電話をサイレントモードにして、画面をテーブルに伏せてしまいたくなることもある。

しかし場合によっては、電話アレルギーは不調のサインかもしれない。フランスでは、とりわけ女性や管理職のあいだに、疲労やストレスを抱える人の数が増えている。Empreinte Humaineの委託で調査会社OpinionWayが12月に行ったバロメーター調査によると、会社員のふたりにひとりが心理的に追い込まれていると感じており、うつ病を懸念する人は31%に上った。昨年秋の2度目のロックダウン時には、会社員のふたりにひとりが、より条件のいい転職先を探しながらいまの仕事を続けていると回答している。普段と同じように仕事に熱意を注げなくなり、同僚や上司に対して徐々に距離を取る人も出ている。Empreinte Humaineによる調査では、管理職の10人中8人が、「リモートワークの場合、ストレスや孤立感で苦しんでいるサインが現れても気づきにくく、社員が悩みをひとりで抱え込みやすい状況にある」と答えた。

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非難せずに率直に話す

それだけに、マネージャーはこうしたサインに気づいたらすぐに対話の場を設けることが重要だ。「まず大切なことは、理解しようとすること」とエンギュエンはアドバイスする。

「相手を観察してわかったことに基づいて、就業時間に何もしていないと暗に非難するような発言は避ける。たとえば、”最近あまり電話に出ないようだし、会議でも発言が少ないけれど、大丈夫? 仕事が大変? ストレスを抱えている? やる気がおきない?”といった言い方をするといいでしょう」

重要なのは、部下に自分自身の気持ちを表現する余地を与えること。ではもし部下が、何でもない大丈夫だ、と答えたら?

「その場合、上司には部下に期待することをしっかり伝え、コミュニケーションがチームワークに果たす役割について説明する権利があります。”あなたが電話に出るのは重要なこと”とはっきり言って構いません」

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ルールを決める

次のステップは、社員それぞれの状況に合わせ、コミュニケーションの取り方にルールを設けること。電話を掛けない時間帯を決めておく、電話に出られない時は手短にSMSで返事をする。「電話をする時間、理由、緊急度をはっきりさせることはとても重要です」とエンギュエン。とくに、突然電話をかけて、きちんと仕事をしているか、何かあった時すぐ対応できる態勢にあるか、連絡が取れる状態にあるかチェックしていると考える社員もいるからだ。

「なかには”監視”されていると感じて、不当な干渉であるという理由から、会社関係者からの電話にいつも出る必要はないと考える人もいます」

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監視を解除する

テレワーク中の着席率を評価する風潮があるなかで、身を守るために、また仕事をしている形跡を残すために、メールを優先する社員もいる。なかにはチームメンバーの半数にCCでメールを送る人までいる。昨年11月にEmpreinte Humaineが行った調査では、回答した会社員の50%近くがCCに上司を入れたメールを通常より多く受け取っている、出社時よりも報告メールを頻繁に送っていると回答。47%がデジタルツールを介して監視されていると感じると答えた。上司の目の届かない自宅で仕事をする社員たちのなかには、さぼっていると疑われているのではないかと危惧する人もいる。実際は会社員の多くがテレワーク導入前より業務量が増えたと感じているのにだ。

同僚同士のコミュニケーションでも距離は混乱をよんでいる。小さな齟齬からチームの信頼関係が損なわれることもある。「社員がメールを重視するのは、誤解されたくないからでもあります」とエンギュエンは言う。

「行き違いや緊張を避けるためには、勤務時間の管理や業務の進捗状況の報告といった事柄について明確に定めることが重要です」

やはりいちばんいいのは、定期的に連絡を取り合うこと。たとえば、週に1度、進行中の案件についてメールで報告する、ちょっと電話して近況を伝えるといったように。個人の時間と集団の時間の調整が大切なのは出社勤務の時と同じだ。ただ少しだけ気をつけるようにすればいい。

texte:Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr)

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