生理用品は贅沢品? フランスの「生理の貧困」の背景。

Society & Business 2021.03.25

フランスでは学生の3人に1人が生理用品が買えない、という衝撃的なニュース。その背景には、どうやら生理用品が"高級品"として扱われてきた歴史があるらしい。パリ在住のジャーナリスト、レベッカ・ジスマヌからのレポート。

【関連記事】フランスでは3人に1人の学生が、生理用品を買えない。

iStock-1199157516.jpeg

衝撃的な「生理の貧困」の状況が明らかになったフランス。その背景には生理用品に課せられた不可解な税制があった。 photo : iStock

文/レベッカ・ジスマヌ(パリ在住ジャーナリスト)

2021年2月23日、フランスのフレデリック・ヴィダル高等教育大臣が、9月に始まる新学期までに、国内のすべての大学に無料の生理用品のディスペンサーを設置すると発表した。

この政策は、「生理の貧困」がフランス国内のニュースで繰り返し取り上げられるようになったことを受けたもので、特にパンデミックの経済的な影響を最も受けているであろうグループのひとつが学生であることを考慮している。ヴィダル氏は声明の中で、「2021年に、食べ物か生理用品かを選ばなければならないなんて受け入れ難いことだ」と述べた。

2017年のIFOPの調査では、フランスでは170万人の女性が生理用品を買うことができないと報告されている。また、別の調査では、13万人の若い女子学生が月経用品を買えないために定期的に授業を欠席していることが明らかになった。

---fadeinpager---

フランスの「生理の貧困」の影にその税制

実はフランスではほんの数年前まで、生理用品は税制上、高級品と同等に扱われていた。

フランスの税制では、生理用品は生活必需品とはみなされておらず、高級ブランド品にも適用される20%の付加価値税(VAT)が適用されていたのだ。一方、コンドームのようなほかの"生活必需品"は、食料品や書籍と同じ5.5%のVAT。生理用品に対するこの不可解な課税は「タンポン税」と呼ばれ、数ヶ月の抗議活動の結果、2016年にやっと5.5%まで引き下げられた。それ以来、生理用品の価格は多少は下がったが、それでもVATの引き下げが、商品の値段に完全に反映されるわけではなかった。

ル・モンド紙の推計によると、女性が一生のうち、月経用品に費やす費用は3800ユーロ(*約49万円)。1ヶ月では7.5ユーロ(*約970円)になる。ただし、婦人科医への通院や痛み止め、下着、シーツの購入など、生理にまつわるほかの経費は考慮されていない。タンポン1箱の価格は3~6ユーロ(*約390〜770円)、生理ナプキン1パックの価格は2~10ユーロ(*約260〜1290円)。特にホームレスや経済的に恵まれない女性、学生など、最も弱い立場にある人にとっては、負担が少なくない額だ。

こうした背景が、生理用品の貧困と戦うための新しいムーブメントを巻き起こした。フェミニスト、特に学生や高校生のような若い活動家たちは、2018年にスコットランドが示した例にならって、学校に無料の生理用品ディスペンサーを設置するように働きかけてきた。私自身も、ティーンエイジャー向けのフェミニストニュースレター「Les Petites Glo」による「#StopPrécaritéMenstruelle(*生理にまつわる不安定な状況に歯止めをかけよう)」の請願書に署名した。彼らの願いは、大学だけではなく、将来的に高校でも生理用品の無料ディスペンサーを設置することだ。

---fadeinpager---

日本で感じた、生理用品をめぐるカルチャーショック

iStock-1277098703.jpeg

フランスでは「緊急時」のためのコンドーム販売機はよく見かけるけれど、生理用品の販売機はあまり見かけないという。 photo : iStock

私が日本に住んでいた時に驚いたのは、日本の公衆トイレには安価な生理用品の販売機が広く設置されていたこと。フランスでは「緊急時」のための安価なコンドームの販売機は広く設置されているけれど、生理用品の販売機を見ることはあまりなかったように思う。

ただ、それ以上に驚いたのが生理用品をコンビニエンスストアで購入した時、こちらが頼まなくても、店員が生理用品を紙製の茶色い袋に入れることだ。

生理用品を人目に触れないようにするためなのか、もしくは生理は不浄なものだから他の食料品などと一緒にしてはいけないという考えなのか...。フランスで男性のレジ係に生理用品を渡すことに居心地の悪さを感じていた私にとって、これはこれで、新たな違和感や恥ずかしさをもたらした。

今回のように、女性の生理の負担を少しでも減らしていくような議論や進歩によって、フランスと日本、両方の社会で生理がタブーでなくなることを切に願っている。

*は編集部注。ユーロの日本円換算については、2021年3月25日現在のレートに基づく。

 

Portrait.png

 レベッカ・ジスマヌ

パリを拠点に活動するジャーナリスト。日本にも滞在経験があり、日本映画の大ファン。

 

texte : Rebecca Zissmann

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
和菓子
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.