「男らしさ」「女らしさ」を押しつける教育、やめにしませんか?

Society & Business 2021.10.07

「男らしく正々堂々と…」「女の子らしく落ち着きなさい」。いつか誰かに言われた記憶、あるのではないでしょうか。それをそのまま、下の世代の子どもたちに押しつけていませんか? 保護者向けの性教育サイト「命育」の代表・宮原由紀の著書『子どもと性の話、はじめませんか?』(2021年 CCCメディアハウス刊)から、子どもを導く大人の心構えを抜粋してお伝えします。

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「こうあるべき」というステレオタイプをなくすために気を付けたいことは? photo: FatCamera_istock

子どもはジェンダーの感覚を家族やテレビ、本、友達などから受け取ります。小学生になると、学校や友達との関係の中で「男の子なのにすぐ泣く」「女の子なのにサッカーが好き」など、性別のステレオタイプにふれる機会も多くなることでしょう。また、自分が生まれながらの性別に違和感を覚えていることに気づき始める子もいます。

近年は、「男の子は男の子らしく」「女の子は女の子らしく」と性別によって決められる“こうあるべき”という価値観そのものが見直されつつあります。子どもにおもちゃや本を選ぶときや、習いごとを始めるときなどに保護者自身が、「もし子どもがいまの性別でなければ、同じ選択をしただろうか?」と考えてみるところから始めましょう。

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子どもの価値観を尊重しよう

一方で、考え方や価値観は一人ひとり異なります。ピンクやプリンセスが好きな女の子がいれば、そうでない女の子もいる。青や強いヒーローが好きな男の子もいますし、そうでない男の子もいますよね。

保護者としてできるのは、子どもの「好き」を尊重すること、子どもの興味の赴くままに、さまざまなことに挑戦できるようサポートすること。もし「スカートをはきたい」と思う男の子がいれば、まずは家の中だけでも叶えてあげてはいかがでしょうか。

女性のサッカー選手や職人、男性のバレエダンサーや看護師など、競技する人や職業とする人の数に、女性と男性とで差があるものを選択している人を、ロールモデルとして見せるのも方法のひとつ。子どもは性別によってやりたいことが制限されるわけではないとわかり、人生の選択肢を広げることができるでしょう。

また、保護者自身が性別のステレオタイプをなくそうと意識しすぎてしまい、別の意味での「こうあるべき」にとらわれないよう注意しましょう。たとえば、女の子がピンクを選んだときに「女の子だからってピンクを選ばなくてもいい」と伝えるような、女の子らしさや男の子らしさを極端に避けようとするケースです。その子が好きだと思うなら何色を選んでもいいし、何をしたいと思ってもいい、好きなことを尊重してあげましょう。異性のきょうだいがいる場合は、性別で区別せずに同じように接するよう心がけましょう。

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●伝え方の例

STEP① 性別で制限を感じさせない伝え方

NG「男の子なんだから、バレエではなく、サッカーとか野球をしてみたら?」
↓(ロールモデルを見せる)
「バレエに興味があるの? この人、世界で活躍している男性のバレエダンサーなんだって」

NG「女の子なのに、ヒーローのおもちゃがほしいの? これは男の子向けだから、こっちの人形にしたらいいんじゃない?」
↓(その子の趣味を尊重した受け答えを)
「かっこいいね! いいと思うよ」

STEP② 異性のきょうだいがいるとき

NG「〇〇(女の子のお子さん)は、女の子なんだから、大声でふざけたりしないの」
↓(男女同じように注意を)
「〇〇(女の子のお子さん)も、〇〇(男の子のお子さん)も、大声でふざけたりしないの」

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大人こそ知っておきたい性の多様性

性のあり方は多様であり、境界線がはっきりと分かれているわけではありません。たとえば、異性が好きだと思っていても同性に惹かれることもあれば、かわいらしいものが好きな男性もいます。

性には、「生物学的な性(体の性)」「性自認(心の性)」「性的指向(好きになる性)」「表現する性」の4つの側面があり、それぞれがグラデーションのように混ざり合っています。何が普通で何が正解というものではなく、一人ひとり違うのが当たり前。

ところで、近年浸透しつつある「SOGI(ソジ)」という言葉を知っていますか?「性的指向(Sexual Orientation)」と「性自認(Gender Identity)」の頭文字を取った言葉で、性的指向や性自認にかかわらず、すべての人が持つ属性を表します。

セクシャルマイノリティの総称「LGBTQ(Lesbian 、Gay 、Bisexual 、Transgender 、Questioning)である」「LGBTQでない」と、特定の誰かを指すのではなく「すべての人が持つ属性」を意味するため、そこにはあなたも含まれます。

いま、保護者が性の多様性についての知識を身につけると同時に、自身の常識や価値観を見直す必要があります。

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子どもの差別的な発言を耳にしたら

たとえば、子どもが「オカマ」「オトコオンナ」などの差別的な発言をしていたら? 子どもは大人を手本にして育つため、あなたやパートナーがテレビ番組などを見て、誰かをそのように呼ぶことがあったのかもしれません。また、テレビ番組で誰かが発言した差別的な言葉に反応して笑ったのかもしれません。

無意識のうちに、自分の子どもは「生まれたときの性別と、性自認が同じ」「異性のことが好きなはず」と思い込んでいませんか? 「好きな男の子(女の子)はいるの?」「将来あなたに彼女(彼氏)ができたら?」などの発言は、男の子は女の子を(女の子は男の子を)好きになるのが普通、というメッセージを送ることになります。子どもが将来セクシュアリティで悩んだときに、あなたに相談することをためらう理由にもなり得ます。

本を読んだり、アニメーションや映画を見たりしながら、大人も子どもも多様な性についての誤解や偏見をなくし、肯定的にとらえられるようになるといいと思います。そうすれば、子どもが何か知りたいときやセクシュアリティの悩みを持ったときに、あなたに相談してくれるようになり、子どもにとって家庭が安全な場所だというメッセージにもなります。保護者は、子どもがさまざまなことに挑戦し、可能性を広げられるための味方であってほしいと思います。

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●伝え方の例

STEP① 友達に対して「あの子は、女みたいな(男みたいな)服装をしてるんだよ」と言ったとき

「女の子の服装、男の子の服装って、どんな服装? 誰でも自分らしく、好きな服を着て、好きなことをしていいんだよ」

STEP② 子どもとの会話の中で

NG(男の子に対して)「好きな女の子、いるの?」
NG(女の子に対して)「あなたが将来、好きな男の子とつきあったら……」
↓(シンプルに、多様な性を包括した言い方に)
「好きな人、いるの?」
「あなたが将来、好きな人とつきあったら……」

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『子どもと性の話、はじめませんか? からだ・性・防犯・ネットリテラシーの「伝え方」』
\1,540(税込)

ある日突然やってくる子どもからの疑問、子どもの性への興味、性の会話を避けてきたまま思春期になってしまった…そんなとき、あなたはうまく対応できますか?テーマは、妊娠や避妊、性交だけでなく、自分のからだは自分のもの、防犯の知識(プライベートゾーン)、男女の体の違い、性的同意、急増している自画撮り被害、性の多様性・ジェンダー、ネットリテラシーのことまで……性教育ってとっても幅広い!

 

 

text: Yuki Miyahara

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