JICAメンバーのイチ押し、環境について考えるための6冊。

Society & Business 2021.10.20

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貧困削減や教育、保健医療など、さまざまな課題・分野で途上国への国際協力を行っているJICA(ジャイカ)。そのなかでも環境問題に関するプロジェクトを多く担当しているのが地球環境部だ。今回は、そのメンバーが「環境について考えるきっかけになる本」をテーマに選んだとっておきの6冊を紹介しよう。

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環境を守るために、何をすればいい?

『森を守るのは誰か フィリピンの参加型森林政策と地域社会』
根本歩美著 新泉社刊 ¥3,300(写真左)

フィリピンに留学して棚田の研究をしていた頃、農村では国の政策とは異なる現場のルールで地域住民が自然保全に取り組んでいました。その姿を目の当たりにし、「環境を守るためには、誰が何に従い、どう行動すればいいのか?」という根本的な問いを抱くように。帰国後、森林保全における森林官や住民の暗黙知に基づく独自ルールの重要性について書かれたこの本と出合い、フィリピンで感じた問いの答えに一歩近づけたように感じています。読み直すたびに新しい発見があり、ずっと手元に置いておきたいと思える、おすすめの本です!

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selected by 黒住知代|KUROZUMI Tomoyo

いまも受け継がれる再生の物語

『木を植えた人』
ジャン・ジオノ著 原みち子訳 こぐま社刊 ¥935(写真中)

20世紀初頭、南仏の荒廃した村でただひとり木を植える男。ふたつの大戦後、村に広がる奇跡の光景――人と環境を巡る希望の短編。私は主人公の半生に感銘を受け、日本の「木を植えた男」を探してみたことがあります。そこには東京の真ん中に原生林をよみがえらせた本多静六、多くの災害をもたらした天竜川流域の治水治山に生涯をかけた金原明善、足尾の鉱害対策に奔走した田中正造など、確固たる信念と行動力をもった先人の姿がありました。そして、「木を植えた男」と同じようにその志は今も引き継がれ、未来への羅針盤となっています。
※「木を植えた男」とのタイトルの版もあります。

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selected by 岩崎英二 | IWASAKI Eiji

途上国での出来事を自分ごととして考える

『クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録』
石井明男・眞田明子著 佐伯印刷刊 ¥1,650(写真右)

本書にはJICAプロジェクトのひとつであるバングラデシュの首都ダッカのごみ問題への取り組みが記録されています。さまざまな手法を組み合わせて現地の人々、専門家、JICA職員が粘り強くごみ問題に向き合う様子が伝わってきます。毎日出る生活ごみが途上国では深刻な環境問題を引き起こしていることや、日本も昔は同じような問題を抱えていて乗り越えてきたことがわかり、途上国や日本のごみ(環境)問題を自分ごとに感じるきっかけになると思います。日本の生活・環境と、途上国との接点を見つけたい方に読んでもらいたい一冊です。

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selected by 五百藏 夏穂 |IHOROI Natsuho

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環境やSDGsについてゼロから学ぶ入門書

『環境政策論講義 SDGs達成に向けて』
竹本和彦編 東京大学出版会刊 ¥2,860(写真左)

一見すると難しそうな本に見えるかもしれませんが、水、大気、廃棄物などの環境問題から、生物多様性に関する課題や気候変動まで幅広いテーマが丁寧に解説されています。さらにSDGsと、環境・気候変動との関係性、国際的な潮流、私たちの暮らしとの接点についてもわかりやすく書かれており、持続可能な社会を考えるための情報がたくさん詰まっています。これから環境問題・気候変動の勉強を始めたい方や学生さんに読んでいただきたい本です。また、教育現場にいる方なら高校・大学の授業テキストとして活用するのもおすすめです。

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selected by 宮崎明博|MIYAZAKI Akihiro

再発見もいっぱい世界を驚かせた先見性

『沈黙の春』
レイチェル・カーソン著 青樹簗一訳 新潮文庫 ¥781(写真下)

1962年に出版された『沈黙の春』は、DDTをはじめとする農薬などの化学物質の危険性を、「鳥たちが鳴かなくなった春」という出来事を通し訴えた作品です。60年代の社会では経済や企業活動の発展に焦点が当てられ、環境に対する意識は人々の間にも社会にもほとんどありませんでした。そのような時代のなかで著者は先見性をもち、やみくもに化学物質を批判するのではなく、事実に基づいてその危険性を訴えたのです。世界で初めて環境問題に目を向けさせたといわれるその思想は、環境について考えるきっかけを与えてくれるはずです。

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selected by北野瑛詩 |KITANO Eishi

映画を超える壮大さで自然との関係を描く

『風の谷のナウシカ(アニメージュコミックスワイド判)』
宮崎駿著 徳間書店刊 全7巻 各¥473(7巻のみ¥605)(写真右)

国民的アニメのひとつ、『風の谷のナウシカ』。「火の七日間」と呼ばれる最終戦争より千年の時を経た世界を舞台に、異形の蟲(むし)たちが生息する腐海とそれに怯えながら暮らす人間との共生を描いた作品です。映画公開から10年後に完成した原作は、映画以上といっても過言ではないほど自然と人間の関係をより立体的に描いた名作です。物語終盤の主人公ナウシカの「選択」は、気候変動や環境問題における人類が直面する「選択」にも置き換えられます。原作を読まないなんて、もったいない。全7巻の、一気読み間違いなしの作品です。

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selected b y丸山真司 |MARUYAMA Shinji

今回紹介した記事をはじめグリーン・リカバリーを特集した「JICA Magazine」10月号を、下記サイトにて公開中。経済的な回復だけでなく、環境問題にも取り組みながら持続可能な社会をつくっていく。そのために必要なことを一緒に考えていこう。

「JICA Magazine」をチェック!

editing: Ikumi Tsubone, photography: Saori Kojima

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