パリの街角が乳房の写真で埋め尽くされた理由とは?

Society & Business 2021.10.24

フランスの授乳服専門ブランド、タジーヌバナヌがインスタに投稿した授乳している胸の写真を、アメリカのアプリが検閲で削除した。これに対抗し、同ブランドはパリ市内に授乳中の乳房の写真数千枚を展示した。

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photo : iStock

10月11日以降、授乳期の乳首の写真や子どもに授乳をしている女性の写真がパリのあちこちの壁に貼られている。授乳服ブランド、タジーヌバナヌが起こした行動だ。

同ブランドは9月24日、濡れた乳首から一滴の母乳が零れ落ちている写真をインスタグラムに投稿したが、インスタグラム側はその写真を検閲、削除した。このことに対するタジーヌバナヌのリアクションだったのだ。SNS企業は、自社が指定するヌード画像に関するコミュニティガイドラインに違反しているから削除したと説明している。

「インスタグラムが“有害”と判断したこの写真は、男女老若誰もが見るべきものです!」とタジーヌバナヌはインスタグラムに投稿した。更に、より多くの人に自分たちの行動を知ってもらうため、ストリートマーケティングの会社に協力を呼びかけたとも発表。目的は「パリ市内に数千の広告を張り巡らすことです」とブランド創設者のアリソン・キャヴァイユは電話インタビューで答えた。このアクションは10月11〜17日までの「世界母乳育児週間」のまっただ中に行われた。

 

 

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その乳房を隠しなさい…

写真が検閲により削除されてから、同ブランドの存在はインスタ上で「見えない化」されているとアリソン・キャヴァイユは訴える。これはインスタグラムのアルゴリズムによるものだ。「例えば、2週間ほど前からlive配信ができなくなりました。配信しようとすると、“このアカウントはコミュニティガイドラインに違反している”と表示が出てしまいます」。3年前の創設以来、いつでもどこでも授乳できる権利を訴えてきたこのブランドにとって、PR上の大きな痛手だ。

実はこのブランドの投稿が削除されたのは今回が初めてではない。「私たちが作っている服は、授乳できるよう片側が開く仕組みになっています。Tシャツを手で開いている写真を投稿すると必ずはねのけられてしまいます。代わりに、上半身裸の夫の写真を投稿してみましたが、その写真は通りました。筋が通っていませんよね」とアリソン・キャヴァイユは訴える。しかも、授乳する母親の写真は同社のポリシーに適合しているとガイドラインに書いてあるのだ

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“露出している肌の割合”

このようなインスタグラムの検閲の矛盾点や、恣意的で厳しく、理解しがたい点などはしばしば指摘されている。太った身体、人種の特徴が強く表現された身体、女性の乳首(男性の乳首は問題なし)などだ。

総合的に男性の体より女性の身体に対する検閲が多いとの指摘もある。2020年9月にフランスのメディアMadmoizelleに掲載された記事は、インスタグラムには「プラットフォームの不条理な規約のせいでダブルスタンダードの検閲」が存在すると非難している。この記事では2018年にポーカープレイヤーのダン・ビルゼリアンが投稿した、腰にトロフィを乗せいている前かがみの裸の女性の写真を許可していることを指摘。一方、Entrenoslèvresが性教育の目的で裸の身体の写真を投稿したことでアカウントが削除されそうになった。

その原因は、おそらくプラットフォームのアルゴリズムにあると思われるが、その仕組みは誰にも分からない。このAIの役目は裸の身体を検出することだが、微妙なニュアンスを識別することはできないようだ。この問題に関し2020年10月にNumeramaがある記事を発表した。そこではインスタグラムのモデレーション機能を担当するチームがFast Compagnyというサイトに以下のように説明したとされている。「“マシーンラーニング”は肌の露出度のパーセンテージを認識していると言えます。実際にはもう少し繊細で複雑なことが起きているのですが」

インスタグラムとその検閲に対する改善を働きかけるアリソン・キャヴァイユは、パリ市内の屋外広告は大きな反響を呼んだと言う。「いつでもどこでも授乳できる権利に対してたくさんの声を上げたかったのです。乳房と、授乳している乳房は全く異なるもの。比較するのは実のない議論です。授乳している乳房を脅威とするのはやめてほしい」と強調した。

彼女はインスタグラム・フランスに対して自身のブランドが受けた検閲に異議を申し立てた。「納得できないという点においては同意がなされ、アメリカのチームに連絡を取ると言ってくれました」。しかし今のところはまだ返信は来ていないそうだ。インスタグラムによると、「モデレーションのチームが調査している最中」だそうだ。

text : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)

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