フランスBusiness with Attitude受賞者インタビュー リュシーヌ創業者マリーヌ「起業家とは、行動し人々を助けに行く人」

Society & Business 2021.10.26

10月7日、フランスの公的投資銀行Bpiフランスは恒例の年次イベント、Bpifrance Inno Générationを開催した。パリのアコールホテル・アレナに集まった大勢の起業家を前に、フランス・マダムフィガロのBusiness with Attitude受賞者マリーヌ・コティ=エスルスが、不屈の精神とレジリエンスをテーマに自らの体験談を語った。

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プレゼンテーション中のリュシーヌ創業者。(パリ、2021年4月13日)Jean Picon/Say Who

2017年、マリーヌ・コティ=エスルスは、慢性的な痛みを薬以外の方法で緩和するデジタル療法プログラム「リュシーヌ(Lucine)」をリリースした。顔や声、姿勢の認識技術のデジタル技術を用いて患者を支援する。例えばプログラムを使うことで脳内エンドルフィンの生成を促進することができれば、副作用のおそれがある鎮痛剤の使用量を減らすことができる。最初のターゲットは子宮内膜症や月経周期、膣炎に伴う痛みの緩和で、2020年には550万ユーロを調達した。現在、臨床試験の最中で、今年末には結果が出る。売上高200万ユーロ、従業員40名に成長した会社を率いるマリーヌが、起業家としての歩みをキーワードと共に振り返った。

不屈の精神

「この1年半の経験を振り返ると、まだ事業を続けられていること自体、とても幸運だと思っていますし、同時に責任も感じています。誰かがどうにかしてくれるかもしれないと期待しなくなりました。他の人のため、自分の事業のために自ら行動を起こせば何事も前進するし、社会や経済を変えることができるのです。

主体となるのは自分であり、自らの行動が反響を呼びよせるのだということを私たちは忘れがちです。起業家とは抗議する人ではなく、行動し人々を助けに行く人なのです」

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臨床試験と持久力

「自分の会社を立ち上げることは道を切り開くことに似ています。あまり知られていないことですが、事業を始めるのは実は簡単です。気軽に始め、どんな困難が待ち受けているのか思いも寄らない。わかっていたら絶対に始めないでしょうけれど。

リュシーヌで臨床試験を始める際、周囲からこう言われました。『今にわかるよ、長くて辛くて大変で、とてもお金がかかるよ』と。なんでそんな事を言われるのかわかりませんでした。『まあ、やってみよう!』と後先考えず突き進んだのですが、いまなら言えます。確かに長くてつらくて大変で、とてもお金がかかります! しかも長期にわたる持久力が要求されます。

起業家はトップレベルのスポーツ選手のようなものです。良いスタッフに恵まれて、体調をうまく整えていかなくてはやっていけない。本格的な訓練プログラム、栄養面に配慮した超健康的な食事療法、そして睡眠にも気を配る。そうでないと結果を出すことはできません」

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レジリエンス

「レジリエンスとは、失敗に直面した時にどう対応しようかと考えることです。これを乗り越えて、仕事でも個人としても成長していくのです。起業後の時間は97%が上手くいかないことの連続です。波のように次々にやってきます。落ち込んだり、燃え尽きそうになったり、どうしても前向きになれない時もあります。でも、家に帰ってきて、自分にとってなにが大事か思い出せる晩もあります。それは他者への愛、愛する家族やパートナーです。その人たちのおかげでなんとかやってこられました。

自分が特別な存在だなんて思っていません。月に一度はカウンセリングを受けていますし、メンター的な存在も何人かいます。一人、“ライナスの毛布”的な人もいて、泣きたい気分の時に電話します。その人は、私が聞きたいと思っている言葉なんてかけてくれません。その方が逆に立ち直れるんです。

起業における、こうした非常にプライベートな部分も語ることは非常に重要です。起業というのは全力を尽くさなくてはならない、非常に骨の折れる仕事だからです。時には誰かに励ましてもらいたい気分になるものなのです」

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怖いもの

「どうして自分の弱いところを皆さんにさらけだしているのかと言うと、いまの世の中が怖いからです。マスコミが報道することは1930年代の世相にあまりにも似通っています。それでもこの流れを変えることはできるとまだ信じています。

それには“成功した”人がどうやって成功したのかをきちんと伝えることです。つまり、誰しもが特別な存在になる可能性を秘めていることを示すのです。これはとても大事なことだと思います。そうすれば、みんなが未来を恐れずに行動を起こし、なりたい自分を目指すでしょう。自分の人生は何だったんだと不満をためることもなくなります。月日の経つのはあっという間です。こうしたことが不平不満や抗議活動を生むのです。

私自身、リュシーヌを立ち上げる資金がありませんでした。舞台への憧れから副業としてやっていたバーレスクダンサーの出演料が会社を立ち上げる時の資本金となりました。何かを成し遂げる人は、生まれつき特別なのではありません。単に、大人になっても子どもらしい部分を残している人なだけです。『甘ったるいことを言って』と、きっと非難されるでしょうね。でも、厳しくきつい話以外の話をすることも大切です」

text : Morgane Miel (madame.lefigaro.fr)

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