女性記者が見たタリバン侵攻後のアフガニスタン。

Society & Business 2021.10.28

マリ、リビア、イラクで取材を行った記者が、タリバンが実権を掌握するアフガニスタンの首都を訪れた。20日間現地を取材した女性ジャーナリストにインタビュー。

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取材を続けるために、ジーンズを諦めアバヤを身につけなければならなかったという。(イメージ) photo : iStock

8月15日、アシュラフ・ガニー大統領の逃亡後、タリバンがカブールに侵攻した。テレビ局TF1の取材記者リズロン・ブドゥルは、カメラマンを伴って、その1週間後にアフガニスタンの首都に到着する。彼女は現地を訪れた最初のフランス人記者であり、この険悪な地域で取材を行った数少ないリポーターのひとりだ。その後20日間にわたって、彼女はアフガニスタン国民の混乱の日々を報道することになる。

 

 

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ーーカブールで、取材記者たちを取り巻く状況はどのようなものでしたか?

私はカタールからカブールへ渡りました。カタールでインタビューしたタリバンのリーダーに、現地へ行くことを「すすめ」られたのです。彼らにとってはこうしたこともコミュニケーション戦略の一環でしたから、私たちはとくに妨害も受けず、取材活動をし、市中を歩き回ることができました。なかには何人か神経質で、その上女性と口をきこうとしない兵士もいましたが。

小さな市場や商店では、それでも「通常の」暮らしに似たものを感じることもありました。山岳地帯からやって来た25歳のタリバン兵士たちが、初めて訪れた都会を見物していました。菓子店の店頭に並ぶアイスも、遊園地も、私たちのカメラも、彼らにとっては初めて見るものばかり……。私たちが到着したのは、ちょうど新しい生活が軌道に乗り始める時期だったのです。

3日後、何度も忠告を受けた末に、私は仕事を続けるためにジーンズを諦めてアバヤ(全身を覆う長衣)を着用せざるを得なくなりました。アメリカ軍の撤退が近づくにつれて、身に危険が迫ってきました。もちろん死にたくはありませんでしたが、できるだけ長く留まりたいという気持ちもありました。非現実的な瞬間でしたから。タリバンが体制を整える前の、グレーゾーンの時間帯であるがゆえに、私たちは現地に入り、撮影し、報道を続けることができたのです……。イスラム原理主義勢力統治下では前代未聞の状況でした。

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ーーどのようにして女性たちとの面会が実現できたのでしょうか?

仲介者を通してコンタクトを取りました。路上で女性たちの姿はほとんど見かけませんでしたし、女性たちは報復を恐れて私たちに近づこうとしませんでした。私は社会科学を教える女性大学教授の家に招かれました。彼女はシーア派イスラム教徒で、7歳と10歳のふたりの息子をひとりで育てています。夫は彼女を捨てて出て行きました。

彼女は20年間、一種の自由を味わってきました。それがいまや、タリバンの格好の標的です。ほかの女性たちと同じように、彼女は仕舞い込んだブルカを引っ張り出し、自分の家にタリバンが踏み込んで来るのはないかという恐怖を抱えて暮らしています。まだ正式ではありませんが、タリバンはすべての独身女性に対し、タリバン兵と結婚せよというメッセージを流している。それだけに、彼女は愕然としています。

ーー顔を見せた状態で彼女を撮影したのですね?

はい。彼女がそうしてほしいと言ったのです。顔を見せることは自分の抵抗行動だからと。弁護士の女性も自分の身に危険が及ぶのをとても恐れていましたが、やはり顔を映してほしいとリクエストしました。彼女はタリバンが破壊したいと望んでいるあらゆるものを体現しています。この先もう仕事を続けることはできません。裁きを下すのは男性たちで、裁判はイスラム法に則って公の場で行われるわけですから、彼女の職業は失われたのです。

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ーー彼女たちとは連絡を取り続けていますか?

できるだけ連絡を取り続けるようにしています。これまでも、どんな取材の時もそうしてきました。先の見えない闇の中で生きているアフガン女性たちの姿に、私は女性として衝撃を受けました。とくにフランス外務省の危機対策本部とカタール当局とコンタクトを取って、この大学教授と2人の息子たちが出国できるよう支援に努めています。ほかの国のパスポートを持っていない場合、ほとんど不可能ですが、彼女のことが頭から離れません。解決策を見つけたいと思っています。

text:Marilyne Letertre (madame.lefigaro.fr)

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