性器整形を受ける若い女性が増加中。手術を選ぶ理由とは?

Society & Business 2021.11.16

今年9月、インフルエンサーのマエヴァ・ゲナムが性器リフティングのメリットを語ったところ、インターネットユーザーの間で大反響が。彼女と同じように、毎年若い女性たちが彼女たちのコンプレックスである小陰唇のサイズを小さくする手術を受けている。フランス状況を「Madame Figaro」の記事から紹介する。

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17、19、21歳 。小陰唇が外に出ている自分の性器が嫌いで手術を受ける女性がいる。photo: Getty Images

多くの女性に見られることだが、21歳のソニア(1)の性器は、陰毛で覆われたふっくらとした大陰唇の隙間から小陰唇がはみ出している。蝶の羽のように、と表現する人もいる。しかし彼女は「この垂れているものを切る」決心をした。言語学専攻の大学生の彼女は、2018年にラビアプラスティとも呼ばれる、小陰唇のサイズを小さくする女性器の整形手術を受けた。毎年数百人の女性たちが同じ決断をしている。

友人たちは鏡を見ては服装やにきびやお尻の形のことをあれこれ気にしていたが、彼女は長い間、自分の性器のことしか眼中になかった。好奇心が旺盛だからではなく、むしろ嫌悪感からだ。「もうこればかり見ていた。顔の真ん中に不細工な大きな鼻がついているようなものね。ただこっちは、むしろコッカースパニエルの耳みたいだったけど」と彼女は語る。「しょっちゅう小陰唇をいじって、どうして自分は“普通ではない”のだろうと思っていた。ある日、自分の性器にセロハンテープを貼り付けたこともあった。これが皺ひとつなくすべすべだったら、どんな気分だろうって」

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関心はコンスタントに。そしてますます若い世代に

フランスで女性器整形への関心が急激に高まっているのは紛れもない事実だ。フランス美容形成外科学会(SOFCEP)によると、性器の手術を受けた女性の数は2010年には全年齢層で1839人だったのが、2016年では4600人に増加した。より最近のデータはない(公的医療保険を管理するアシュランス・マラディから発表されていない)が、今回の調査に協力してくれたパリ、ナント、リールの医師たちによると、つねに一定の要望があり、施設によって差はあるものの、1年で3~50件の手術が行われているという。

比較としてアメリカの状況を見てみよう。アメリカでは性器整形を受ける人の数はここ5年間に大幅に増加している。アメリカ形成外科学会(ASPS)によると、増加率は53%。臨床心理士で精神病理学博士のサラ・ピアザは、この主題を扱った論文のなかで、アングロサクソン諸国ではかなり一般化していると述べている。精神分析家でもあるピアザは、ポルノ女優の写真や『プレイボーイ』の切り抜きを持参して美容外科を訪れ、「こういう風になりたい」と要求する患者もいると語る。

フランスではどうかというと、「ここ10年、性器の整形手術はトレンドです」と、パリ郊外のサン=ドニ市に「メゾン・デ・ファム(Maison des femmes)」を設立した婦人科医のガダ・アテムは話す。「小陰唇縮小手術は女性器形成では最も多い受診理由のひとつ」と言うのは、パリで開業する女性器専門美容外科医のシルヴィ・アブラアム。「当院では、意見を求めるために、あるいは手術を受けるために、年間100人ほどの女性たちが訪れます」

医療専門家たちがとくに驚いているのは、最近は手術を受けたいと相談する女性の年齢が下がっていることだ。「当院では、患者の90%が20歳以下です」と、リール大学病院の婦人科外科医ジェラルディーヌ・ジロデは言う。「最近もある高校生が自分より先に手術を受けた同級生がもう4人いると話していました。みな同じ美容外科で手術を受けたそうです」

婦人科外科や美容外科で実際にどのような手術が行われるのか。通常は、膣口を取り囲む小陰唇の余分な皮膚を切除する。手術費は公立病院で400ユーロ程度から、私立のクリニックでは5000ユーロまでの開きがある。

 

 

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見た目への不満、身体的な不快感

手術を受ける理由として多くの患者が挙げるのは、日常の動作に支障を来す不快感だ。16歳になったばかりの頃、アメリは趣味の馬術を諦めざるをえなくなった。「馬に乗るたび、15分ごとに中断して、小陰唇をきちんと“収める”ためにトイレに行かなければならなかった」と彼女は回想する。「そうしないと鞍やズボンが擦れて、後で何時間もひりひりした痛みに耐えなければならなくなるから」

多くの場合、痛みに加えて、重度のコンプレックスが加わる。何年もの間、学校で「恥ずかしい」目に遭ってきたという19歳のランは、自分の性器を「直し」たいと思っている。彼女によれば「左右非対称」で「不恰好」で「色が黒すぎる」のだという。「プールの更衣室で服を脱いだり、シャワーを浴びたりするのがいつも拷問でした。みんなから股の間を凝視されているような気がして。もっと厄介なのはプールに入ってから。陰唇が外に出て、水着からはみ出るのではないかと不安になる」

こうした自己評価の低さは性生活にも大きな影響を及ぼす。「初体験のときはとても痛かった。彼が挿入したときに小陰唇が巻き込まれてしまったせいです。それ以来、心理的には恐怖でした」とソニアは話す。「セックスをしたいと思っても、“下のほう”に触れられるのが怖かった」

「なかには気にするあまり、実際に診てもらう前に携帯で撮影した写真を見てほしいと言う患者もいます」と、ナントのアトランティック・エルサン複合クリニックの婦人科外科医ファビエンヌ・マルシャンは話す。

パリの婦人科医で外性器疾患を専門とするソフィ・ベルヴィル=レヴィは2013年に臨床心理士のサラ・ピアザとともに、小陰唇縮小術を受けるために診察に訪れた71人の患者を対象に調査を行い、女性器整形手術への急激な関心の高まりについて考察した。「性生活の質を測る女性性機能指数(FSFI)のスコアが平均値に比べてかなり低かった」と婦人科医は指摘する。「彼女たちにとって、自分の外陰部を人目にさらすことは何が何でも避けなければならないことなのです。彼女たちはオーラルセックスを避ける、性行為の間は電気を消すといった対策を取っていました」

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表象の重荷

ただし医学的観点からすると、臨床心理士と婦人科医の質問に答えた患者たちのなかに、小陰唇肥大(余剰部分の幅が4cm以上)の症状が見られるケースはひとつもなかった。生理学的に問題がないとすると、ティーンエージャーたちが訴えるこうした居心地の悪さをどう説明すればいいのだろうか?

ポルノの影響は、一見、あつらえむきの犯人のように思える。しかし、パリ第8大学博士課程でこのテーマを研究するリュディヴィーヌ・ドゥモルは、この問題におけるポルノの影響は「大海の1滴」程度でしかないと言う。「ポルノでは現実と同じように、性器の形もアンダーヘアの整え方も多様です。もし問題の原因がポルノにあるなら、まず女優の間で手術件数の増加が見られていたはずです」

「性器に関するコンプレックスにはむしろ女性性についての幻想が関与している」と臨床心理士のピアザは分析する。初潮前のまだ形の定まっていないピンク色のアプリコットを追い求めるこの風潮の源流は、YouPornの登場やXジェンダーの認知向上よりもはるか前にさかのぼるという。「古代以来、医学や芸術の歴史において、女性器の形はセクシャリティとの関係を表しているという考えが集合的無意識として作り上げられてきました」とピアザは指摘する。「毛もクリトリスもないつるりとした割れ目が評価され、過剰な皮膚は性的放縦や男性性と同一視されます。余分な皮膚を除去することは、こうした逸脱をなだめ、正すことなのです」

最近起きたマエヴァ・ゲナム論争がそのことを裏付けている。去る9月、24歳のリアリティ番組のスターは、性器の美容整形を受けたことを嬉々として報告した。「私は幸せ。私の膣は本当にきれい」と、SNSに投稿した動画で彼女は語っている。「小陰唇も何もはみ出しているものは何もない(…)。いまは、まるで12歳みたい!」

「インスタグラムのデッサンで性器の形の多様性を知り、新しい性教育を発見している女性たちと、ヘテロセクシャルの規範に基づいた性や女性の身体についてのビジョンを持ち続けている女性たちとの間に、社会的な断絶がある」と婦人科医のベルヴィル=レヴィはコメントする。

 

 

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時間を稼ぐ

一方で、医療関係者たちはティーンエージャーへの施術に対して抵抗感を隠さない。「思春期には生理的な異形恐怖症が見られることがあります。まだ変化する可能性がある年齢でコンプレックスを手術で取り除くべきかどうか、私には確信が持てません」と、パリで開業する婦人科医のベルヴィル=レヴィは自問する。

しかし、一定の条件のもとで手術には公的医療保険が適用されることから、医師たちの仕事は一層複雑なものとなっている。医療保険が適用されるかどうかは、小陰唇の余剰部分の大きさや痛みがあるかどうかが基準となるが、測定や数値化は実際のところ難しい。したがって手術費用には一律57,44ユーロの医療保険負担が適用される。確かに払い戻し金額はそれほど高くないが、患者たちに疾患を「正当化」する根拠を与えている。

そのため診察室で文字通り交渉が行われることになる。「話し合いをしながら時間を稼ぐよう努めています。成人するまで待つように、あるいは来年また来なさいと言って聞かせます」とベルヴィル=レヴィは語る。それでうまく行くこともある。「普通の性器というものはなく、生理学的にバリエーションがあるだけだということを説明するのも医師の役目です」と、パリの形成外科医ナタリー・ラジャオナリヴェロは強調する。「ときには1度の診察だけで、専門家の意見を聞いたことで安心して帰って行く若い女性もいます」

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熟慮の末の自由な選択?

疑いがあるときは、医師は心理学者や性科学者あるいは臨床倫理コンサルテーションといった外部の専門家に意見を求めることもある。サン=ナゼール医療センターの臨床倫理コンサルテーションチームのディレクターを務めるギヨーム・デュラン(2)は、乗馬のときに小陰唇が邪魔になるという17歳のルイーズの訴えに直面した。「患者は自分自身で意思決定ができると私たちは評価しました。自分の選択を言葉で表現し、手術の不可逆性や手術後のリスクといった影響についても理解し、多少なりとも理にかなった理由を提示する能力がありましたから」とナント大学助教授のデュランは説明する。

哲学者は患者自身が語る言葉をより重視するよう呼びかける。「こうしたティーンエージャーたちは、グループやメディアに操られているのだと見なされがち」とデュランは嘆く。「しかし若者たちの多くは読解力もあり、自分でものごとを判断する明晰さを持っています。美容整形は公衆道徳に背くと考えられがちですが、自己実現を助け、個人の身体的健康、心理的・社会的な幸福に貢献する行為でもあるのです。民主主義の世の中で、生き方や自分の身体との関係についてのこうした考え方を否定することはできないと思います」

彼女たちはいつか自分の行為を後悔するだろうか? 「選択する以上は、後悔することもありますが、それも人生の一部です」と哲学者は結ぶ。「いずれにせよ、受け入れるしかありません。元に戻らないものを後悔しながら生きるのはつらすぎますから」。いまのところランはまだ手術を受ける決心がついていない。ソニアとアメリは新しい外見に大満足だと言う。「もう夜中にうなされることもない。最近、ハイカットのビキニにも挑戦しました。自分の動きもちっとも気にならなかった」とソニアはうれしそうに話す。「セックスに関してはまだこれからだけれど、おかげで重荷から解放されました」

(1)仮名
(2)Guillaume Durand著『Un philosophe à l’hôpital』Flammarion出版刊

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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