仕事に行き詰ってる? キャリアパスを仕切り直す5つの助言。
Society & Business 2021.11.29
文/ドリー・クラーク(デューク大学フクア経営大学院客員教授)
転職の場合も社内異動の場合も「自分は変われる!」という信念の下、これまでの経験を武器に諦めず取り組もう。
photo: C.J. BURTON/Getty Images
専門職として働く人の多くが、このコロナ禍で生活の大きな変化に見舞われた。仕事を失った人もいれば、リモートワークへの切り替えを突然迫られた人もいるだろう。
仕事環境の変化の影響はいまも続いている。そこでニューズウィーク米国版と人脈サイト「リンクトイン」のインタビューシリーズ「ベター」が、キャリア形成の専門家リンゼー・ポラックにこの時代を生き抜くためのポイントを5つ挙げてもらった。ポラックはコロナ禍がもたらした変化に対応するための指針をまとめた著書『リキャルキュレイティング』を出版したばかりだ。
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「成長マインドセット」から始めよう。
今後のキャリアプランを変えるに当たっては「絶対に変化は起こせる」と心から信じる必要がある。スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックは「成長マインドセット」と「固定マインドセット」という概念を提唱した。これは、今後も自分は成長できると考えるか、自分の資質は変わらないと思い込むかということだ。
ポラックによれば、この成長マインドセットで物事に取り組むことが大切。「粘り強く頑張れば何でも可能だと信じるところから始めよう」
キャリアの見直しはゼロからの出発にあらず。
仕事を変えることになったとしても、ゼロからやり直すわけではない。ナビシステムに例えるなら、ルートを再検索したとしてもスタート地点に戻って出直す必要はない。「(新しいルートは)常に現在地から始まる。どんな職種であれ、これまでの技術や知識や経験の蓄積がある」とポラックは言う。
自分で自分を「査定」してもいいし、コーチングのプロに依頼したり、母校の就職課を頼るといった手もあるだろう。とにかく既に身に付けた自分の強みや技術の中で、次のステップに役立ちそうなものを見極めるのだ。
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話をして前向きになれる相手を見つけよう。
次に進む道を見つけるのは根気と忍耐力の要る作業だ。ポラックのおすすめは、状況報告をする相手を2~3人決めておいて、モチベーションが下がってきたらすぐに話ができるようにしておくことだ。
ポラック自身、嫌気が差したりやる気をなくした時に連絡を取る相手を決めている。友人たちはその時の状況に合わせ、いまやらなければならないことをきちんと終わらせろとハッパを掛けてくれたり、その前にひと休みして疲れを癒やせと言ってくれたりする。
学生時代もポラックは、大変な作業の最中や終わった直後には母に電話し、励ましや支えの言葉をもらっていた。「そうすると、ひるむ気持ちや面倒に思う気持ちが少し和らいだ」とポラックは言う。
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人と人との繋がりを大切に生かそう。
転職先やキャリアアップの機会を探す場合、個人的なコネを使うと成功率は上がる。筆者自身、人と人とのつながりの重要性は以前から強く感じているし、ポラックもそうだ。「私がこれまでの人生でもらったアドバイスの中で最も優れたものは『何であれ、連絡先のリストを増やし、人とのつながりを維持し続けること』というものだ」
たとえばリンクトインで繋がりを申請する場合も、短くていいから相手に合わせたメッセージを添えるべきだとポラックは考える。「先日はご一緒できてよかったです」とか「就職フェアではお世話になりました。同じ学校の卒業生なんですね」とか。いつも同じ定型文を送っているわけではないところを示すのだ。
同じ会社でもキャリアの仕切り直しはできる。
勤務先での役職や職務に不満があったとしても、必ずしも別会社に移る必要はない。会社も転職を考えている社員がいることは承知しているから、配置転換の交渉のハードルはそれほど高くないかもしれない。ポラックの言うように「自分の考えや提案、そして方向転換をしたいとか社内起業家になりたいといった今後の希望」を伝えるのだ。
ただし最後通告のような印象を与えることは避けること。「いまのポジションでも楽しいし幸せだということ、会社に貢献し続けたい気持ちがあることを、大げさなくらい強調しなければならない。そして、この先やれたらいいと思うことについて、いくつか案がある(と話を持っていく)」とポラックは言う。「思いどおりにならなければ辞めるとか、自分が望んでいるのは配置転換だけでいまの仕事には関心がない、という態度を取らないことが重要」
コロナ禍のような予見不可能な事態に行く手を阻まれたとしても、まだ道に迷ったわけではない。自分を見直すことは、もっといいルートを見つけるきっかけにもなる。
text: Dorie Clark