起業で天職を見つけた、10人の女たち 自然と人が調和する「里山」の知恵を、次世代や世界へ繋ぐ。
Society & Business 2021.12.16
社会と向き合い、自身の夢を描き、それを起業という形で現実のものにした女性たちがいる。
天職と出合った人の女性が伝える、仕事を始めた理由と、働くことの意義。
曽 緋蘭
ルーツ代表/ソーシャルデザイナー
1980年、大阪府生まれ。サンフランシスコで社会課題解決型のデザインプロジェクトに携わり、帰国後、オムロン ヘルスケアにて企画・戦略デザインを行う。築250年の古民家と出合い、京北への移住をきっかけに、2018年に中山慶とROOTS(ルーツ)を起業。2児の母。
https://rootsjourney.jp
里山の知恵を、世界へ、次世代へ。
起業のきっかけは、築250年の茅葺き屋根の古民家との出合いだったという曽緋蘭(ツェン・フェイラン)。子育ての環境を変えるために京都市内から京北へ移住。会社勤めのかたわら、広く開放的なその自宅でジビエやヨガのイベントを重ねるうち、地域の職人や多様なクリエイターとの繋がりが広がり、コミュニティデザインの仕事に惹かれていく。そして、京北で新しいツーリズムを創生していた中山慶と出会い、ともに起業。林業や農業など里山の知恵を次世代や世界へ繋ぐことを目的に、地域資源を生かした国際教育プログラム、民泊施設を活用した事業、他地域のコミュニティデザインという3つの事業を展開している。特にメインの国際教育プログラムは、社会課題を解決する若い人材の育成で注目度が高い。
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ー 起業の際に苦労したことは? どう乗り越えましたか?
世の中になかった仕事を1年かけてようやく形にできた頃にコロナ禍になったこと。ですが、時間ができたことでサイトやカタログを再編したり、オンラインで海外デザイナーと地域の生産者を繋いで、ともに課題を解決するビジネスデザインを提案するなど、世界と連携する新たなプログラムが生まれました。
ー 仕事の成功に役立った、 スキル上での強みは?
サンフランシスコにいた時に、英語力を補うため、ビジュアルでコミュニケーションする能力が高まりました。帰国後は、ヘルスケア分野のデザインに携わり、さまざまなバイタルデータを可視化するスキルが身につくように。そういったデザイン的思考があるので、創りたいビジネスのありようを可視化するとワクワクします。
ー 憧れの人、もしくは目標とする人物を教えてください。
触発される素敵な大人はたくさんいるけれど、こんな姿でいたいとイメージしているのは京都・広隆寺の弥勒菩薩。まったくその領域に達していないけれど、あんなふうに心穏やかに人の救いになるようなプロジェクトマネジメントができたら素敵。あたふたしたり、小さくなった時に見に行くようにしています。
ー これからやりたいことや最終的な目標は?
里山の知恵には脈々と続いてきた日本人の精神性やアニミズムにも深く繋がる部分があります。それらはユーチューブではわからない、実際に体験するからこそわかること。時代に合った知恵の継ぎ方とともに新しい事業を創り出すこと、さらに、そういった事業が次に継ぎたい文化となることを目標にしています。
ー 新しいことに飛び込む際、 心がけていることはありますか?
自分が責任を持ってやりきれるか、そのことに惚れ込んでいるかを問います。新しいことは簡単に立ち上がるけど、一筋縄ではいかないし、挫折するほどの問題が出てくる。何が起きても愛し続けられるかを問う。イエスの場合は、ゴールやビジョンは何なのかを可視化して整理します。
ー 働くことのモチベーションは?
見たい景色が現実になっていくこと。
ー 人生のモットーを教えてください。
「Be the change.」。ガンジーが言ったとされる言葉で、自らが変わる潮流になること、を意識しています。
*「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋
photography: Yoshiki Okamoto editing: Natsuko Konagaya