起業で天職を見つけた、10人の女たち 捨てられてしまう花をアップサイクルして、空間装飾に。
Society & Business 2021.12.22
社会と向き合い、自身の夢を描き、それを起業という形で現実のものにした女性たちがいる。
天職と出合った人の女性が伝える、仕事を始めた理由と、働くことの意義。
河島 春佳
リン 代表/フラワーサイクリスト
長野県生まれ。大自然の中で幼少期を過ごす。東京家政大学服飾美術学科卒業。クラウドファンディングで資金を集めパリ留学、2019年に株式会社RIN設立。ロスフラワーで空間装飾を手がける。
https://lossflower.com
世界の花業界を、 アップサイクルに 。
「会社員だった頃、ご褒美として花を一輪買うことが習慣でした。でも飾った花を捨てられなくてドライフラワーにしたことが、私の活動の原点です」。河島春佳は、さまざまな理由で廃棄されてしまう花をロスフラワーと名付けてアップサイクルさせる。大学で服飾を学んだ後、玩具会社に就職したが、幼い頃から好きだった植物に関わる仕事をしたいと考えた。最初は友人を招き、ロスフラワーを用いたワークショップを開催。その後、パリに留学して花修業を積んだ。その活動は口コミやメディアで話題になり、企業の装飾も手がけるように。花のある暮らしが広がって いくことで、ロスフラワーも削減されていく。彼女が描くそんな未来に、多くの人が共鳴している。
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ー 起業の際に苦労したことは? どう乗り越えましたか?
普段から楽しさややりがいのほうが強いので、苦労ということはあまり意識しないかもしれません。ただ大きな装飾や案件が重なった時には、制作スペースや人員が足りないことも多々あり、いつも試行錯誤していますね。でもその度に、チームの連携が強くな っているという実感があります。
ー 1週間の仕事のリズムを教えてください。
基本的に土日は関係なく、案件に応じて動いています。朝は市場に仕入れに行ったり、夜の営業後に施工したり、生活リズムは一定ではないですが、打ち合わせをオンラインにするなど、可能な限り調整しています。オフの日は、趣味の山登りに出かけたりして、リフレッシュする時間を意識して取るようにしています。
ー 新しいことに飛び込む時に心がけていることは?
自分の思いを信じて、突き進むことです。不安が多少あるようなことも、その先の好奇心が勝っていたら優先するようにしています。
ー 憧れの人物を教えてください。
お会いしたことはないけれど、こんまり(近藤麻理恵)さんです。 片付けメソッドという人生にプラスになる考え方を提唱し、いままでなかった分野を確立するビジネスの切り拓き方が魅力的だと思います。アーティストでいうとピカソです。フランス、スペインなどの4つの美術館で作品を鑑賞しました。マーケティングにも長けていたことが彼の成功要因だと思います。多作な美術家としてギネスブックに記録されるなど、その生きざまも魅力的ですね。
ー これまでに影響を受けた本は?
学生時代に読んだ、『20代にしておきたい17のこと』(大和書房刊)です。好きなことを仕事にするという考え方が、ずっと頭に残っていました。働くモチベーションは、いまも、楽しむこと。それが、なお人の役に立っているなら続けていけると思っています。
ー 悩みや不安がある時は、 どのように解決しますか ?
不安があるということは、問題に対する理解が浅くて、まだ熟知できていない状態だと思うんです。勉強したり調べたりして、自分で行動して知ろうとすることが解決の糸口。
ー 最終的な目標を教えてください。
パリに留学した際、マルシェでワインやチーズと花を買って帰るのが当たり前という光景を目にしました。日本では、どちらかというと、花はギフトのような特別なイメージがまだ強いけれど、フランスみたいな日常に花のある生活が文化として根付いてほしい。
*「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋
photography: Kei Sakakura