起業で天職を見つけた、10人の女たち 価値のある「もったいないもの」を生かすビジネスを。

Society & Business 2021.12.23

社会と向き合い、自身の夢を描き、それを起業という形で現実のものにした女性たちがいる。
天職と出合った人の女性が伝える、仕事を始めた理由と、働くことの意義。

文 美月

ロスゼロ 代表取締役

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文 美月 Mitsuki Bun
奈良県出身。在日コリアン3世として生まれ、現在は日本国籍。同志社大学卒業後、日本生命に同大初の女性総合職として入社、融資に携わる。留学、結婚、出産を経て専業主婦から2001年に起業。18年に食品ロス削減事業、ロスゼロを立ち上げた。
www.losszero.jp

“もったいない”を、価値あるものに。

食品ロスを減らすフードシェアリングサービス、ロスゼロ。代表を務める文美月は、もとはヘアアクセサリーの通販事業をしていた。社会貢献活動として日本でユーズドへアアクセを募り発展途上国に寄贈したその経験から「どこかで不要でもどこかでは喜んでもらえる。もったいないものを生かすビジネスをしたいと思ったのがきっかけでした」と、起業のきっかけを振り返る。日本における“もったいない”の最たるものが、食品ロスだ。日本の食品ロスは年間約600万トン。「食品メーカーはブランドイメージの低下を恐れ、安売りすることが難しい」ことからロスゼロはここに特化。販路をなくした約400万点の食品を消費者に繋げ、エシカル消費を追い風に“もったいない”に新たな価値を生み出している。

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カンボジアやラオスの少女たちにヘアアクセサリーを寄贈。現地で販売し、その売り上げを職業訓練費用として支援した。

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未使用のまま廃棄される製菓材料を使ってリメイクしたサステイナブルなチョコレート「Re:You」。今年1月に企画製品化した。

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ー 2度の起業で苦労したことは?

最初の起業は、結婚、出産を経て31歳の時。小さな子どもがいることで再就職先が見つからず、「自分の雇用は自分でつくる」と自宅でヘアアクセサリー専門のECを始めました。月商7,000万円と急成長した一方で、ネットの炎上を経験したりと原点に立ち返る大切さを感じました。2社目となる食品ロス事業を始めたのは48歳になってから。若くないことに自信をなくしましたが、長年の経験を生かせると思い一念発起しました。当初は上手くいかず、メーカーの理解は得られませんでしたが、社会的意義があると協力を得やすいと思い、カンボジアのトイレ建設のクラウドファンディングのリターンとして規格外のスイーツを提供していただき、突破口を開くことができました。

ー 毎日のタイムスケジュールを教えてください。

5時30分に起床して、ダルメシアンとボクサーの2匹の犬を公園で運動させます。どちらもよく走る犬種なんです。帰宅してから朝風呂に。お風呂好きなので、1日に2回入ります。家事を終えて出社し、19時頃まで仕事をしますが、会社の成長期なので深夜まで働くことも。

ー 働くことのモチベーションは?

人生一度きり。自分の可能性を追求したいです。また、マイノリティな人たちの役に立ちたい。女性でも、子どもがいても、さまざまな問題に直面する社会的少数派の人たちのロールモデルになれたら。こんな人もいるんやと、「自分にもできるかも!」と思ってもらいたいですね。

ー 新しいことに飛び込む際、 心がけていることは?

はっきりイメージできない時はすぐに動かないようにしています。常にアンテナを張り巡らせて準備は怠らないようにしていますが、そうするといまだ!というのがやってくるので、その瞬間を逃さないようにしています。

ー これからやりたいことは?

あらゆる“もったいない”を減らしていきたい。 食品ロスに限らず、人材も含めて。働きたいのに働けない女性の能力や、民族的マイノリティの可能性などもそうです。価値のあるもったいないものを生かせるようにマッチングを進めていければと思います。

ー 人生のモットーを教えてください。

韓国のことわざである「シジャギ パニダ」。直訳すると「始まりは半分だ」。物事を始めるにはエネルギーが必要ですが、最初の一歩を踏み出してしまえば、ゴールまではもう半分来たのと同じという意味で好きな言葉です。

*「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋

photography : Yoshiki Okamoto editing : Akiko Wakimoto

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