キャリアを傷つけずに、テレワークを続けることは可能?

Society & Business 2021.12.23

実態が見えにくかったり、怠けているのでは?と疑われたり、家にいることを利用して家事をしたり…。テレワークは、キャリアにとって、特に女性にとってリスクがないわけではない。うまくテレワークを続ける上で取り入れるべき良い習慣とは。

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実態が周りから見えにくい、仕事とプライベートの両立。テレワークは、キャリアにとってリスクがないわけではない。優れた反射神経を持てば、テレワークをうまく続けることは可能だ。photo : Getty Images

テレワークを続けるためにはどうしたらいいのか。この課題は、見かけほど明白ではなく、かなりの数のフランス人社員が頭を悩ませている。調査会社のセンサスワイド(CensusWide)がLinkedInの委託を受けて行った最新調査によると、社員の35%はテレワークがうまく認知されていないと考えており、52%はオフィスに顔を出すことによって上司から「好意的」に見られる可能性が高まると考えている。

その結果、40%の社員は「テレワークが自分のキャリアに影響を与える」と考えており、そのうちの大多数(85%)がネガティブな結果を予想している。特に女性には警戒すべき理由がある。家事や家族の仕事の大半を担っている女性は、男性よりも仕事とプライベートの両立のために柔軟な働き方をしたい傾向が強い。この柔軟な働き方を利用して、仕事とプライベートをうまく両立させる一方、テレワークのための時間が減り、人脈作り、社内での影響力の構築、自分の仕事のアピールなどに使える時間が減ってしまう。

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上司に求める、そして責任を負う

一方で、多くの企業は締め付けを強化したいと考えているようだ。フランスの労働省によると、週1日以上のテレワークを義務付けられている社員は、8月末時点では19%だったものの、現在は10%にまで減少している。この大規模なオフィス復帰の理由は? まず、物理的に目に見えるチームを管理する方が、オフィスと仕事場でひとつのパートをこなすよりも簡単である。

しかし、経営者の中には、テレワークの利点が効率性と相容れないかのように、「従業員がテレワークでは精を出さなくなるのではないか」と危惧する人もいる。その疑念のせいで「週末を延長したいのか?」とか「子どもを学校に迎えに行きたいのか?」と頻繁に陰湿な小言を言ってくる。「罪悪感を感じる必要はありません」と語るのは、Woman Impact(ウーマン・インパクト)プログラムの生みの親であり、『Guide de l'auto-coaching pour les femmes(女性のためのセルフコーチガイド』(1)の著者でもあるコーチのチャイン・ランズマン。対策としては「毎週水曜日、往復の移動時間を節約したほうが効率的」だとか、「週2日は田舎にいた方が便利」と言い切る。もしくは、「息子をダンスに送っていくけど、2時半から3時は席を外すのは残りの時間に影響がない」と述べるべきだ。

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離れた場所でも証明する

それどころか、在宅勤務の日を決める交渉の際に、上司に「家や田舎の方が集中できるし、自由に調整できる方が仕事中の緊張感がなくスムーズ」と説明することも可能だ。「要するに、子どものために1時間休みたいとか、ひとりで黙々と仕事がしたいとか、仕事をうまく進めるために必要なことを上司に説明することが重要です。上司にとっては、基本的にそれがすべてなのです。コントロールしたいという感情は、安心したいという感情の裏返しなのです」とチャイン・ランズマンは総括する。穏やかな上司は、情報を把握している。疑惑は、上司が自分のチームが何をしているかを知らないときに生じるものだ。チャイン・ランズマンは、上司に自問自答する時間を与えないことが重要なのだと言う。彼女のアドバイスは? 1日2通、報告メールを送ることだ。

「朝いちばんのメールは、あなたが家にいることを知らせ、その日の予定を提示するためのものです。そして『ところで、午後3時に電話しても良いですか?』と一言添えるのだ」。これを利用し、「子どもの下校時には連絡が取れないが、夕方には埋め合わせをする」などと言ってみてはどうだろうか。

1日の終わりに送る2通目のメールには、3つの要素が含まれている。1つは、自分が行った仕事の要約、2つ目は自分が行き詰っている点、そして3つ目はその点について相談したい内容である。「仕事を進める上でこの情報を頂けませんか?」といったメッセージを添えて、上司に翌日の仕事概要を説明する。

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コントロールを取り戻す

大変? 必ずしもそうではない。同僚の心に残るためには、メールに数行の文章をたせば十分である。何よりも時間の節約になる。情報を追いかけたり、情報がないまま放置された上司の疑惑の目を晴らしたりする必要がなくなる。「同じように、自分だけが遠くから会議に参加している場合は、15〜30分前に短いテキストメッセージを送って、自分が参加していることをアピールしましょう」とチャイン・ランズマンは続ける。例えば、「戻ってきたら話そう」というメッセージに対しては、「5分ほど時間があれば、いまお電話できますか?」などといった返信をする。

これにより、重要な会議を欠席しなくて済むだけでなく、「バレたらどうしよう」という不安や、いつもの10倍の仕事をしなければならないという罪悪感からも解放される。テレワークでは、「何をするか」よりも「何をしているかを知らせる」ことが課題となる。上司に情報を提供し続けることは、必要な時間と静けさを獲得し、時間の節約にもつながる。近所の散歩や友人との長めのランチなど自分自身そして子供を労わるため時間、そしてエネルギーをチャージする時間を獲得することにつながるのだ。

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かつてないネットワーキング

会社に通勤していても同じ理屈である。自分の存在をアピールしたり、みんなと一緒にコーヒーを飲みに行ったり、会議の最後に集まってカジュアルな会話をしたり。より良く、より早く仕事をするために有益な情報を得るだけでなく、上司や同僚の心にも存在感を示すことができる。これは、新たなプロジェクトや昇進があったときに違いを生むかもしれない。

もう一つのポイントについてチャイン・ランズマンは語る。「週1~2回は長めに(オフィスで)仕事をします。会社では、その時間帯に色々なことが決定されます。せっかく会社に来る回数が減るのであれば、出勤日には全力で取り組んだほうがいいですよね。自分のための時間をどこで確保しますか?子供の面倒を見るとき?友達に会うとき?朝遅めに仕事を始めたり、昼休みを長くとったりするなどの工夫で補うことができます。大体は帰宅する時間を妥協することにかかっています。ほとんどの女性は、毎日同じ時間に会社を足早に出てストレスを感じています。事前に計画を立て、その日の夜は家にいないことを家族に伝えることで、負担が軽減されます。子供たちはなんとかなります」とチャイン・ランズマンは説明する。

チャイン・ランズのアドバイスには貴重な意見が込められている:「一度になんでもしようとせずに、できること少しずつ始めましょう。あなたは士気が高い仕事のプロであると同時に忙しい一人の女性であり、常に完璧な友人、妻、母であることは難しいことを認めることです。それを言葉にすること、そしてそれを受け止めることは簡単ではありませんが、すでに別のリズムへの扉を開くことにつながるのです」。

(1) 「Guide de l'auto-coaching pour les femmes」(Chine Lanzmann著, ピアソン社, 288ページ, 25ユーロ、eyrolles.comで購入可)

text : Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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