お金が貯まらないのは脳が原因! 貯蓄体質になる3つの方法。

Society & Business 2021.12.24

From Pen Online

文/川畑明美

投資のやり方を教えていると、少しのマイナスでも怖くなってしまい「本当に大丈夫ですか?」と、聞かれることがよくある。株や投資信託は、購入した時より価格が下がると購入時よりマイナスの表示になる。その状態を含み損というのだが、価格が変動する株や投資信託では、含み損のマイナスになることは、よくあることだ。投資で利益を得るには「安く買って高く売る」しかないのだから、安くなる=マイナスにもなるということだ。とはいえ、この含み損でマイナスになって怖くなるとか、焦ってしまうのは、脳の性質から考えるとごく当たり前のことなのだ。

脳は損をすることが嫌いで、どちらかというと得をするよりも損をしてしまうことに敏感なってしまう。なので含み損でマイナスになって、怖くなってしまうのは当然の感情といえる。このような脳の性質は、投資をする時だけでなく日々の買い物の時にも影響する。たとえば「30%OFFで買えるのは、最後のこの1点だけです!」と、言われる、とつい衝動買いしたい気持ちになってしまうだろう。これは、その最後の1点を買えなくて「損した」ことを悔しく脳が思うからだ。だからいま買わなければいけないと感じてしまう。こうした買い物のクセがあればお金が貯まらない原因にもなる。

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買い物の悪いクセを正すには3週間必要?

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新しい習慣が身に付くには3週間かかる。それは、長期記憶の仕組みが関係している。photo:iStock

買い物のクセをを消すには、新しい良い習慣で上書き保存するしかない。自分に必要か、必要でないかの基準で購入するという良い習慣を実行することだ。ただしこの上書き保存が上手くいくには、一定期間続けることが必要になる。人間が新しい習慣に上書き保存するのに約3週間くらいかかるからだ。

それは、脳の中の「海馬」(記憶に非常に深く関わっている所)の仕組みにかかわっている。人間の「記憶」は、いったん海馬に入って、夜寝ている間に整理されて長期記憶になっていく。そして海馬の中に新しい情報が保存される期間は、大体3週間、長くて4週間くらい時間がかかる。この約3週間の間に、何度も何度も同じ情報が海馬の中に入っていくことによって「長期記憶化」がしやすくなり、習慣を変えられるのだ。このように私たちの消費行動には、心理的によるものが多くある。同じく「貯金ができるようになる」にも、人間の心理を利用することで、貯蓄体質に変わることもできるのだ。心理的にお金を貯まりやすくする方法を3つご紹介しよう。

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私が500万円貯めた、シンプルな方法。

iStock-1095286692.jpeg銀行口座をふたつに分けただけのシンプルな貯蓄方法でも、500万円を貯めることができる。photo: Minerva Studio-iStock

筆者が20代の頃に¥500万ほど貯めることができた方法をご紹介しよう。その方法ではまず、銀行口座をふたつ準備する。生活費用が引き落される銀行口座と貯金用の銀行口座のふたつの口座だ。毎月なんとか貯められる¥40,000を、お給料がでたらすぐに貯金用口座に入金するのだ。そしてルールも作った。どうしてもお金が足らない時は、その貯金口座から引き出してもいいとする。そのかわり使ってしまったら、翌月はそのお金もプラスして貯金用の口座に振り込むというルールだ。たとえば毎月¥40,000貯金口座に移動してどうしても足りなくて¥5,000引き出して使った場合、翌月¥45,000を貯金口座に入金する。このルールはかなり大変だった。だから極力手をつけないように頑張ることができた。

これは、実は行動経済学から見ても、お金が貯まりやすい行動だったのだ。ある行動経済学の実験で、お給料を全部ひとつの封筒に入れて渡したグループとお給料を複数の封筒に分け、のりで封をして渡したグループの違いを調査した。お給料をひとつの封筒に入れて渡したグループは無駄使いをしてしまいお金が残らなかった。ところが、複数の封筒に分けたグループは使うお金が減ったのだ。それは、のりで封をしている封筒を開ける際に「このお金を使ってもいいのか?」と自問自答するからだ。筆者もお給料が振り込まれてすぐに貯金用の口座に移動することと、翌月返済のルールから、「このお金を使ってしまったら来月が大変だぞ」と自問自答することで、お金が貯まるようになったのだ。

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心理的にお金が貯まりやすくなる方法その1。
→貯金口座と生活費の口座を分ける。

お金の扱い方には、感情や心理が大きく影響する。そのためお金に対する心理を知ることが貯蓄、投資上手になる第1歩だ。ひとつの口座だけを使っていると、特に利用目的のないお金が貯まっていくことになる。利用目的はないので、「何にでも使えるまとまったお金」という意識になってしまい、ついつい使ってしまいがちになってしまう。その一方で、貯蓄のゴールを設定していないため、いくら貯めたらいいのかわからず、貯めても貯めても不安だという心理になってしまう方もいるのだ。

貯蓄が上手な人は、貯蓄の目標や目的を考えるのが上手い。その目的以外のほかの使途でお金を使うことに心理的な抵抗感が出ることで、無駄に使うことを避けることができる効果があるからだ。行動経済学を上手に活用法できているということだ。筆者も収入の一部をあらかじめ「貯蓄のためのお金」と分類することで、知らずに心理的に使いにくくする効果を利用していたのだ。

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心理的にお金が貯まりやすくなる方法その2。
→大きすぎる目標を設定しない。

「\500万貯めよう」と目標を設定しても、なかなか達成できない。そういう経験はないだろうか? 人間の脳は、最初から大きな目標を設定してしまうと実現までの道のりを遠く感じてしまい早々に諦めてしまうという性質もある。そのため目標は、「達成しやすい金額」から考えることが大事なのだ。たとえば¥500万貯めたいのならば10年で達成しようと考えてみると1年の目標は、50万円となる。月の目標にすると¥42,000だ。このように、月単位まで金額を落とし込むと達成しやすいと感じる。

これは行動経済学ではフレーミング効果と呼ばれている。実現性の高い目標に切り替えることで心理的なハードルを下げることができるのだ。そもそも私達人間は、将来的な利益よりも目先の利益を優先しがちなのだ。だから10年で¥500万を貯めると思うと先が長いと考えてしまう。10年というフレームで考えるのではなく、月に4万2000円と月のフレームで考えると達成しやすくなる。

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心理的にお金が貯まりやすくなる方法その3。
→脳に考えさせずに貯蓄する。

将来的な利益よりも目先の利益を優先しがちな具体例をあげると、1年間我慢すれば¥10万もらえるという状況よりも、いますぐ¥50,000もらえる方に魅力を感じてしまうような心理だ。¥500万貯蓄するという目標があるのにも関わらず、目の前の誘惑やその場の衝動に流されてしまうのだ。それを避けるためにも、1カ月¥42,000円と小刻みにする目標の方がが達成しやすくなる。

さらに言うと、自分の意思が必要ない状態にすると、さらに貯まりやすくなる。給与口座から、毎月決まった金額を貯蓄用の口座へ引き落とされるように設定しておくのだ。銀行の定期自動送金サービスを活用するといい。「脳に考えさせずに貯蓄する」ことで目標を達成することができるのだ。

川畑明美

ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で¥2,000万を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。
www.akemikawabata.com

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text: Akemi Kawabata

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