常に相手から選ばれる、最強の「話し方」とは?

Society & Business 2021.12.24

自分の意見が通らない。ほぼ同じ内容のプレゼンなのに、自分ではなく、ほかの人が選ばれてしまう。それほど優秀とは思えない人が、自分より先に昇進していく……。そんな「選ばれない」という状況に陥ってしまうことはないだろうか?

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写真はイメージ。photo: iStock

悔しい状況を変えるにはどうすればいいのだろう? そんな悩みを解決する糸口になるのが、書籍『「選ばれる人」の気遣い』(CCCメディアハウス刊)だ。著者の佐野昭子は約15年間、国際線の客室乗務員として活躍した後、社員研修をメインに講演、セミナー、大学の講義を受け持ってきた人材育成のエキスパート。同書から、「選ばれる人」になるための心構えとその実践方法を抜粋してお届けする。

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もしもあなたは、誰かから「ばっかだなぁ」という言葉をかけられたら、どう感じますか? 親しい友人や、信頼関係のある上司・同僚なら、「あはは!」「ですよねぇ!」などと受け流すでしょう。でも、信頼関係のない人なら、カチンとくるでしょう。尊敬している上司や、憧れている人、好きな人から、「すごいね!」と言われたら、天にも昇る心地になりますが、自分より仕事経験が浅い人、親しくない人から言われても、特別うれしくは感じないでしょう。いつも仏頂面の人が、朝礼のスピーチで「笑顔は大切です。いつも笑顔を心がけましょう」と言ったところで、ちっとも説得力はありません。

しかし、いつも笑顔の社内のムードメーカーが同じことを言えば、みんなは納得し、笑顔を心がけようと思うはず。このように、言葉は、その意味するところだけが機能するわけではありません。たとえ正しいことを言ったり、素晴らしいアドバイスをしても、「誰が言うか」によって、相手の心にヒットしたり、しなかったりするものなのです。信頼・信用されていない人の言葉には、誰も耳を傾けません。そのような人の発言は、無駄になるばかりか、ときには反発を買うことすらあります。以上のことからわかるのは、相手に行動してもらうには、まず自分が相手に賛同してもらえる人にならないといけない、ということです。選ばれることも同じです。そのカギを握るのは、周囲の人があなたの行動をどのように思っているか、ということです。

相手から好感が持たれる行動を取っていますか?
相手から信頼される行動をしていますか?
相手から尊敬されるように行動していますか?

相手から選んでもらえる人の話し方には、この三つが重要になります。そして、その三つを手に入れるためには、次の心構えが必要です。

好感を持たれたいなら、まず、あなたが相手を好きになること。
信頼されたいなら、まず、あなたが、相手を信頼すること。
尊敬されたいなら、まず、あなたから相手を尊敬すること。

これは宇宙の方程式ともいうべきものです。謙虚な気持ちで、相手の存在価値を認め、信頼し、尊敬するからこそ、相手も自分を認め、好意を持ってくれるようになるのです。求めるだけではだめなのです。選ばれたいと思うなら、この三つを意識し、行動することが不可欠です。

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常に相手と向き合う心を忘れないで

あなたは人と会話をするとき、話すことと聞くことの、どちらが好きですか? また、どちらに比重を置いていますか?「話し上手は聞き上手」という言葉がありますが、私は、この言葉のあとに「おもてなし上手=ホスピタリティ」という「隠し言葉」も添えています。これらの言葉には、次の図式が成り立ちます。

話し上手=聞き上手=おもてなし上手=ホスピタリティ

では、なぜ隠し言葉なのでしょうか?近年、人と向き合って話すことが苦手な人が増えてきたように思います。その原因として考えられるのは、自分の意見を文字にして、言いたいことを伝えられるツールの発達です。目の前の人と話さなくても、ツイッターやフェイスブックなどインターネットを通じて、自分の情報や言いたいことを表現できるような時代です。「いま、私はここで○○しています」「今日こんなことがありました!」「○○のことについて、私はこう思います」……こんなふうに、自分の意見や思いを発信しています。

そして「いいね」の数を確認し、コメントでコミュニケーションを取り、「私には人との交流がある」「取り残されていない」と、心の平和を保つわけです。もちろん、それが悪いと言うわけではありません。情報発信はとても大切なことです。たとえバーチャルであっても、周りの人と活発にコミュニケーションをとりましょう。ただ、インターネット上のつぶやきのような情報発信がなにを意味しているのか、別の角度から考えたとき、そこには、「自分のことを知ってほしい」「話を聞いてほしい」という見えない思いが込められていることに気づかれるのではないでしょうか。

つまり、「自分の話を聞いてほしい」という思いです。そして、これはある意味、人間の本性でもあります。そんな思いに応えることは、おもてなしであり、ホスピタリティだといえます。そして、そのような態度で話を聞ける人が、好感を持たれるのです。

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人から好感を持たれれば、あなたは選ばれる人になれるのです。これから、上手に話を聞くための「ホスピタリティリスニング」についてご紹介します。自分自身の話の聞き方を振り返りながらお読みください。

ホスピタリティリスニングのベースとしての必須条件に、「話をする相手のことを、どれだけ思う気持ちがあるか」を確認する必要があります。どれだけの人が、いま、心から相手を思い遣りながら話を聞いているでしょう?コミュニケーションが大切だと言いながら、相手が話していることよりも自分のことばかり知ってもらおうとする、つまりは自分中心のコミュニケーションを行ってはいないでしょうか? ホスピタリティリスニングにおいて、それが相手に伝わってしまえば、なにもかもおしまいです。どんなテクニックを使ったところで、素晴らしいコミュニケーションは生まれてこないのです。ですからまずは、相手を一〇〇パーセント大切に思う気持ちを抱くことからはじめます。それができて初めて、次からのステップに移ることができます。

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①「あなたの話を聞いていますよ」という態度を示す
必ず相手と正対します。上半身だけであっても、です。ここで言う正対とは、剣道で言うところの、「礼に始まり礼に終わる」という〝礼の位置〞のことです。実は、この正対している人としていない人の違いは、話をする側のモチベーションに非常に大きく影響します。いつも実感していることですが、大学の講義でこの正対姿勢も教えたその次の講義の始まりに礼をするときに、それを実行する学生としない学生が現れます。このとき、ものの見事に私の気持ちが変わります。

身体の向きがこちらに向かっているその学生のやる気が一瞬にして私に伝わってくるのです。大人数の中でこの違いは、推測するよりはるかに大きいものなのです。このように上半身は、話をしている相手としっかり向き合い、顔を見て話を聞きましょう。

②視覚から相手の本音、言いたいことを読み取る
話を聞くだけでなく、相手の表情・身振り手振りもしっかりと見ます。相手が本音で話しているかどうかわかるのは、実はこの部分。話している内容と、態度や表情が一致しているかどうかを見極めるのです。第5章でもくわしくお伝えしますが、人は言葉よりも態度を信じます。ですから、あなた自身の目で言葉と態度が一致しているかを確認します。もし違和感があったら、より集中して注意して話を聞くようにします。

③相手の話に関心を持つ
相手の話を少しでも「つまらない」「興味がない」と思った瞬間、それは相手に伝わります。すると、話をする側は、一気に話をする意欲が失せ、気分が落ち込みます。聞き上手として、このような失態は許されません。ですから、自分も日ごろから知識を増やしたり、考えを広げたりして、ひとつの話題についていろいろな解釈ができるよう鍛錬しておくことも、聞き上手となるテクニックです。

このように、相手の話を聞けるようになると、その人の考えや欲しているもの、話したい中身が見えてきます。そのため、こちらから相手に合わせた話題を提供することができるようになります。そうすると、自然に会話が弾み、人間関係がうまくいくようになり、相手はもっとあなたと話をしたくなるのです。営業パースンにとってこれらのテクニックは、営業成績に大きく結びつく秘技でもあります。お客さまの要望を最初に聞き取ることで、話す内容も変わってくるからです。

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「うちの商品は、あれも、これも、それも、みんな素晴らしい!」いくら熱意を持っているとはいえ、ずらずらと説明をするだけではだめなのです。お客さまが聞きたいのは、そのうちの二、三項目についてでしょう。こんな話し方をしていては、うんざりされ、嫌われるのも当然です。これではクロージングにつながりません。まずは、お客さまが話したいこと、欲していることを聞き取ることが大切なのです。

私の営業研修では、「お客さまの要望を聞き取るためには、聞く:話すは、八:二で」と、申し上げています。しかし、これを頭で理解していても、現場では七:三くらいになってしまうようですが……。ぜひ、相手の話をすべて聞きとり、相手を理解することからはじめましょう。

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「選ばれる人」の気遣い
人から「選ばれる、選ばれない」ということこそが重要であり、それは、その人の人生の質までも変えてしまうものなのです。元日本航空CAが教える、会社で思い通りの評価を得ている人がこっそり実践していること。「誰からも認められ、必要とされる力」は身につけられる!

佐野昭子 著
2016年 CCCメディアハウス刊
¥1,320(キンドル版)

 

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