「生活費6カ月分の貯金」はなぜ必要?

Society & Business 2022.01.07

From Pen Online

文/川畑明美

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生活費6カ月分の貯金があれば、なんとかなることも多い。あなたの命を守るためにも最低限の貯金が必要な理由を紹介しよう。photo:iStock

不足の事態が起こったときや臨時支出が必要な時に備えておくお金を「生活防衛費」という。投資を家計に取り入れるにも、この「生活防衛費」の貯金は必要だ。投資したら必ずプラスになっているという保証はないからだ。では、その生活防衛費は、どのくらい必要なのか?

筆者は生活費の半年分の貯金が必要だとよく話している。その理由について解説しよう。まず、なぜ貯金なのかというと、すぐに現金化できるからだ。そしてなぜ、生活費の半年分なのか。どの年齢の方でも考えておきたいのは突然職がなくなった時のことだ。病気で働けなくなる、会社が倒産してしまう、被災してしまう、仕事が辛くて働けないなど様々な理由があるだろう。仕事が原因で命を絶つくらいならば、辞められるくらいの貯金があけば精神的にも余裕ができる。

半年分の預金が必要な理由を知るには、まず働けなくなった時にもらえるお金について考えてみよう。雇用保険の失業給付だ。失業給付は、雇用保険の被保険者が失業した時にもらえるお金のこと。このお金があれば、次の就職先を見つけるまでの間、一定額を受取れる。

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理由その1
→自己都合で退職した場合、失業保険をすぐにはもらえない。

iStock-1221954100.jpeg退職した時に失業給付は有難いが、自己都合の退職の場合、給付金を受け取るまでに時間がかかる。photo: kazuma seki-iStock

失業給付は、次のふたつの要件を満たしていれば申請できる。

1.ハローワークに来所して、求職の申し込みを行い「働く意思と能力がある」にもかかわらず、職業に就くことができない状態にむあること。

2.原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12カ月以上あること。

受給額の計算は下記になる。

(1)賃金日額×(2)給付率×(3)所定給付日数

(1)賃金日額は、退職する前6カ月の賃金の合計を180で割った金額だ。(2)給付率は、年齢と賃金日額で違う。(3)所定給付日数は被保険者だった期間、離職日の年齢、離職理由によって日数が決まる。たとえば年齢が35歳、勤続年数が13年で退職前6カ月の賃金総額が216万円の場合を計算してみよう(ちなみに216万円としたのは日本の平均給与に近い金額だから)。賃金日額は、216万円÷180日=1.2万円となる。自己都合退職だと給付率が50%なので、1.2万円×50%=6000円。所定給付日数をかけると6000円×120日=72万円が給付される。カシオ計算機のサイトで計算できるのでご自身の賃金で計算して欲しい。

給付率は年齢と賃金日額で違う。45%~80%の間で賃金が低い人ほど高い給付率になる。所定給付日数は、最低90日、最大360日だ。次の3つの要件で受給できる期間が決まる。

1.離職時の満年齢

2.雇用保険の被保険者であった年数

3.再就職の難易度

自己都合退職の場合は、再就職の難易度は低くなる。障がい者や急なリストラにあった人は再就職の難易度は高めとなる。

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退職理由で受給の開始時期が変わる。

自己都合の場合は、ハローワークに申請して7日目に待機満了日を迎える。1回目の受給は、待機満了日から約2カ月程度かかるのだ。生活防衛費として生活費の6カ月分の貯金があれば、受給までの資金として十分だ。会社に縛られることもなくなる。体調を崩しての退職としても治療費と失業給付がもらえるまでの資金になる。筆者もストレスを抱えながら仕事をして20代のときに歯が8本も抜けてしまった。いま思えばそこまでストレスを我慢する必要もなかったのでは……と、思うこともある。また仕事のために命を落とす人もいるのだから、いつでも退職できるくらいの貯金があるのは精神的にも安定できるのだ。貯金がないという方は、ご自身を守るためにも生活費の6カ月分は貯めて欲しい。

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理由その2
→民間の医療保険は入院した日数すべての保障ではない。

4685a5fb85302055c1571b83602c2905c1e9f227.jpeg病気やケガで働けなくなった場合にも預貯金が助けてくれる。お守りのための貯金があれば安心だ。photo: MicroStockHub-iStock

病気やケガで働けなくなった場合も考えておこう。会社員の方は健康保険に加入していれば「傷病手当」を受けることができる。働けなくなってから4日目以降、最長1年半にわたって直近の収入のおよそ3分の2の金額が支給される。支給額の計算式は、下記のようになる。

支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

治療が長引いてしまっても、すぐに無収入になってしまうことはないので安心だ。たとえば直近の収入が30万円ならば20万円が1年半支給される。不足するのは、月10万円くらい。仮に1年半休んでいたとしたら、180万円が不足するということになる。収入すべてが生活費に回っていたとして、その6カ月分の貯金30万円×6カ月の180万円があれば不足額をカバーできる。

また病気やケガを心配して民間の医療保険に加入しているから貯金がなくても大丈夫とは、いかない。医療保険は入院した日数すべてに支給されるものではないからだ。1回の入院限度日数があるので全期間をカバーしてくれるわけではないのだ。

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自営業やフリーランスの方は保険も必要?

注意が必要なのは、自営業やフリーランスの方だ。国民健康保険に加入している方は、傷病手当を受けられない。会社員のように「有給休暇」もないので自分が働けなくなると収入もなくなってしまうことになる。傷病手当金を受けられない自営業やフリーランスの方は、民間の医療保険と所得補償保険や就業不能保険を組み合わせるといいだろう。

所得補償保険と就業不能保険は、取り扱いの保険会社が違う。所得補償保険は、損害保険会社で就業不能保険は、生命保険会社の扱いになる。所得補償保険と就業不能保険ともに働けなくなった時に備える保険だが若干、仕組みが違う。所得補償保険と就業不能保険で支払われる保険金を比較して、どちらがより手厚い保障を受けられるか確認してから加入すると良いだろう。

ただし、どちらの保険もうつ病などに対応していないケースがある。長期間働けない病気で最も多いのは「うつ病」なのだ。その点も考慮して加入を検討するといいだろう。もちろん万が一のことを心配しての保険は、安心だが掛け過ぎには注意したい。

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理由その3
→災害直後は、現金だけが頼り。

iStock-629584830.jpeg何かと災害が多い日本。災害にあった時のことも考えると、すぐに現金化できる預貯金は必要だ。photo: vicnt-iStock

地球温暖化の影響もあって、台風をはじめとした災害が多くなっている。大雨による洪水や台風、地震など日本で生活する上で災害の時のお金を考えることはとても大切だ。ある一定額の貯金は必須なのだ。災害直後は「現金だけ」がたよりになる。大きな災害がおきるとライフラインが停止する。そうなると電気もガスも止まるため料理ができず、缶詰などの調理不要で食べられるものが頼りになる。

いままでの大災害でも、食べ物や日用品を売る店やコンビニは、自身が被災しているにもかかわらず災害後短時間で店を開けていた。手持ちの現金がないからATMで引き出そうとしても電気がなければATMは動かない。また、災害時はお釣りが出ないこともあるので小銭の現金を貯金箱などに準備しておくと安心だ。ライフラインが復旧してくると、お金を引き出して使えるようになる。

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災害の時のためにも生活費の6カ月分があると安心。

普通預金口座ならば、残高さえあれば引き出し可能になる。なので、資金のすべてを運用に回してしまうと、いざという時に現金化できるまで時間がかかり過ぎてしまう。東日本大震災のときにはATMが使えない期間が10日間ほど続いたと聞く。洪水や津波などの水害の場合、自宅に置くタイプの金庫は流されてしまう可能性がある。大きな災害の場合、義援金が集まるが被災者がそのお金を手にいれるまでには、数か月かかることを忘れてはいけない。

もちろん火災保険に加入していれば補償を受けられる可能性はある。ただし損害保険の保険金がおりるまでには時間もかかるのだ。保険会社にもよるが必要書類を提出してから30日以内というのが原則だ。また、特別な照会や調査が発生するとそれ以上の時間がかかることも考えられる。やはり生活費の6カ月分は、普通預金で確保しておきたい。通常の生活に戻るまでには半年ぐらいかかると、いう経験測からそう言われている。住宅や家財については、保険で備えるようにしておくといいだろう。

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賃貸でも火災保険は使える?

賃貸物件に住んでいる方も火災保険はあった方が良いだろう。ただし仲介会社がすすめる火災保険に入るのではなく、ご自身でも調べてから加入しよう。仲介業者に都合の良いタイプのものもあるからだ。賃貸契約時に指定された火災保険に入っていても、見直しできるケースもある。契約書に「指定の火災保険」と記載がなければ変更することも可能だ。

賃貸でも火災保険をかけておけば、模様替えで壁に家具をぶつけて穴をあけてしまった場合や、よろけてガラス戸にぶつかって、ガラスを割ってしまった時にも保険金で直せるので便利だ。ただし、格安プランの火災保険ではこのような補償はついていない。火災保険の補償内容に次の補償がついている場合のみ有効になる。『「借家人賠償」の「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」』これは家主に損害を与えてしまった時の費用を負担してくれるというもだ。敷金を使わなくても、火災保険の保険金で修繕できる。
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気を付けたいのは、入居中でないと使えないこと。壊してしまったら、壊した箇所の写真を撮ってすぐに保険会社に連絡するといいだろう。もちろん賃貸だけでなく、マイホームの場合でも不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)の補償がついていれば、同様に火災保険で直せる。

生活防衛費として生活費の6カ月分の貯金がなぜ必要なのか、ご理解いただけただろうか。人生はお金がすべてではないが、お金でなんとかできることも多い。イソップ童話のひとつである「アリとキリギリス」のキリギリスのように「なんとかなるさ」という考えでは、命を縮めてしまうかもしれない。

川畑明美

ファイナンシャルプランナー。「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。
www.akemikawabata.com

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text: Akemi Kawabata

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