「私たちウクライナ人は生きるか死ぬかの瀬戸際」紛争を映像に収めた女性監督が語る、現地の真実。

Society & Business 2022.03.08

ウクライナのドンバス地方で3人の女性兵士を撮ったドキュメンタリー『Inner Wars(インナー・ウォーズ)』の映像作家が、母国ウクライナの現状を語る。

 

 

ウクライナ東部にあるドンバス地域を舞台に3人の女性兵士を撮った『Inner Wars(インナー・ウォーズ)』のウクライナ人監督、マーシャ・コンダコワ。Instagram/@mashakonda

キエフ生まれの映像作家マーシャ・コンダコワはここ5年ほど、パリと母国を行き来して暮らしている。2本の短編映画を撮った後、2020年にドキュメンタリー『Inner Wars (インナー・ウォーズ)』を完成させた。撮影地のドンバス地域はウクライナ東部にあり、2014年からロシアとの紛争地帯となっている。このドキュメンタリーは2023年2月23日までarte.tvで配信中だ(日本未配信)。危険をかいくぐり、命がけで撮影されたこの作品は、国と自由を守るために兵士に志願した3人の女性の声を伝えている。映画「Guerrières(女戦士たち)」を製作中のフランスで取材した。監督はロシアの攻撃と侵略に立ち向かう自国民の勇気について語った。

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――ロシアの侵攻を聞いたとき、どのように感じましたか?

驚愕しました。21世紀にもなって、しかもヨーロッパの真ん中で都市が爆撃され、市民が殺されたり逃げ惑う事態が起きるなんて信じがたいことです。プーチンは攻撃すればウクライナ人が屈服するだろうと楽観していたのでしょう。しかし、ウクライナの民衆はたくましく、勝利するまで闘うでしょう。たとえ軍の規模は小さくても、わたしたちの肥沃な土地や活力を狙った攻撃をこれまでも撃退してきました。ウクライナでよく知られていることわざは「自由か死か」です。すべてを物語っています。私たちウクライナ人には、他の選択肢はないのです。

 

 

Masha Kondakovaがドキュメンタリー『Inner Wars(インナー・ウォーズ)』で撮影したウクライナの女性兵士のひとり。Instagram/@mashakonda

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――ウクライナでは、女性はどのように組織化されていますか?

前線に出ている女性もいます。私が『Inner Wars(インナーウォーズ)』で撮った女性兵士の一人もそうで、彼女たちはドンバス地域で命を張りながら最前線で戦っています。12月17日以降、法律改正で女性がこれまでよりも簡単に入隊できるようになり、女性兵士が増えています。また一次救急や食料衣料補給に多くのボランティアが活躍しています。救急員も当然、動員されて負傷者や地下で出産する女性を助けています。今日、性別、年齢、社会階層はもう意味を成しません。ただ、「どうすれば役に立てるか?」という命題があるだけです。この場を借りて、ウクライナの親族からの感謝の言葉を伝えたいと思います。防弾チョッキ、おむつ、乾電池など、どんな支援も有難いですし、ヨーロッパ各地から多くの物資が寄せられています。私たちは最後までやり抜くつもりなのでそうした支援が必要です。

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――あなたの家族は?

母や妹は避難所に隠れていますが、物理学の教授である父はキエフに残り、いまでも「心配ないよ、ヴァカンスみたいだね」などとユーモアたっぷりのメッセージをどうにか送ってきています。これがウクライナ人気質なのです。68歳になる私の名付け親の庭にミサイルが4発落ちたのですが、私が避難しようと言っても断られました。「ここは私の土地、私の先祖の土地よ」と言い、「孫を救うために戦車に火炎瓶を投げつけてやる」そうです。

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――映像作家として、どのような支援活動をされているのでしょう?

私はウクライナからの情報を伝えることでロシアのプロパガンダと戦っています。断固として決断すれば、自分には関係ないと思っていた人たちの目も開くはずです。たとえば、競技から追放されたロシアのスポーツ選手や、カンヌ映画祭から締め出されたロシアの代表団は、プーチンが自分たちをも裏切っていることを理解することでしょう。意識が高まれば高まるほど、抵抗勢力も拡大します。

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――キエフに戻り、前線で撮影することも視野に入っているのでしょうか?

ええ、ウクライナに戻る方法を探しています。うまく戻れたら前線に行き、この戦争の現実を撮影し、勇敢で決意に満ちた同胞の姿を示したいと考えています。子供の頃、女性は男性の後ろにいるべきだと聞かされました。私はだいぶ前に、カメラの後ろにいることを選びました。情報と発信は強力な武器です。

text: Marilyne Letertre (madame.lefigaro.fr)

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