「あと何人子どもが死ねばいいの?」ウクライナ大統領を支える妻オレナ・ゼレンスカの悲痛な叫び。

Society & Business 2022.03.09

ロシアの特殊任務部隊に狙われながらも決して屈しない。ウクライナの大統領を支えるファーストレディはどんな人?

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ウクライナのファーストレディ、オレナ・ゼレンスカ。(2021年9月1日、バージニア)photo: ZUMA Press/アフロ

2022年2月24日、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーはSNSに投稿したビデオスピーチで「私は1番目のターゲット、妻と子どもたちは2番目のターゲットだ」と語った。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻して以来、ウクライナ大統領は戦時下でリーダーシップを発揮している。彼の妻、オレナ・ゼレンスカも同様に奮闘している。

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2022年2月24日、オレナ・ゼレンスカはインスタグラムにこんな投稿をした。「今日はパニックにならない、涙も流さない。落ち着いて堂々と振る舞う。子どもたちが私を見ている。子どもに寄り添い、夫やウクライナの人々の側にいよう」と。10日後、彼女は同じSNSにまた投稿をした。「あと何人子どもが死ねばいいの?」と、悲痛な叫びにも似た言葉とともに、戦闘が始まってから亡くなった子どもたちの写真を載せた。

 

 

最初のモノクロ写真は、キエフのポリーナだ。「彼女は両親やきょうだいと共に、首都の路上で爆撃を受けて亡くなりました。生き残ったきょうだいのひとりも深刻な状態です」とウクライナのファーストレディは悲しみと共に綴る。そして続く写真はアリサ、アルセーニ、ソフィーヤ......。

オレナ・ゼレンスカは当初から、身の危険が迫っても首都キエフに留まることを表明しており、大統領夫妻に対する暗殺予告以降は身を隠している。

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8年間求婚し続けたコメディアン

 

 

大統領の精神的な支えであるオレナ・ゼレンスカは、夫が国のリーダーとなる以前から長年にわたって支え続けてきた。現在44歳。1978年2月6日にウクライナのクリヴィーリフで生まれ、ファーストレディになる前は脚本家だった。俳優時代の夫のコントの脚本も手がけている。その後、2019年に夫が大統領に当選すると専属イメージコンサルタントとなった。しかしながらふたりはすんなりと結ばれたわけではない。

ウォロディミル・ゼレンスキーがオレナ・キヤシュコ(旧姓)と出会ったのはクリヴィーリフ大学の学生同士としてだった。ところが当時の彼女にはすでに婚約者がいた。ウォロディミル・ゼレンスキーはめげずに8年間、せっせとアタックし続け、晴れて彼女を射止めた。オレナ・キヤシュコは婚約を解消し、建築の勉強を中断してテレビ番組制作会社「クヴァルタル95」を設立したウォロディミルについていくことにした。ふたりは2003年9月6日に結婚し、子どもふたりを授かった。2004年にアレクサンドラ、2013年にキリロが誕生している。

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夫が政治家に

結婚後のオレナは脚本家兼プロデューサーとしてウクライナの人気番組、「Liga Smichu(リーガ・スミーチュ)」を制作している。お笑い芸人たちがジョークや社会風刺で競い合う番組だ。並行してオレナは「クヴァルタルの女性たち」というキャリアウーマンに語ってもらう番組も始めた。脚本家としてのキャリアは絶頂期にあった。

 

 

夫妻の会話で夫が好んで口にしていたのがロナルド・レーガンやアーノルド・シュワルツェネッガーの話だった。共に俳優出身の政治家だ。夫はテレビよりも広い、国際的な舞台で輝くことを望んでいたのだった。夫が大統領選に出馬したいと言いはじめた時、妻は渋い顔をした。2019年5月、イタリアのコリエーレ・デラ・セラ紙の取材にオレナはこんな風に語っている。「私は絶対反対でした。とても乱暴なやり方で夫に伝えました。私にとってそれはひとつのプロジェクトというより、生活が完全に変わることを意味していましたから」

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ひっそりと暮らしたい

しかしながら最終的には譲歩した。「夫が本気で、家族を守るためなら何でもすると分かったので支持することにしました」とオレナは言う。2019年、ウォロディミル・ゼレンスキーはウクライナ大統領に当選した。以来、ファーストレディは多忙だ。ロシア語の方が流暢な夫にウクライナ語の先生を見つけ、打ち合わせにどんな服装で行くべきかをアドバイスし、彼のスピーチに必ず目を通して添削する。「時には過剰なまでにね」と匿名の情報筋はイタリアの新聞にこっそり漏らした。

 

 

「ひっそりと暮らしたい」と思っていたのにいまや脚光を浴びる立場だ。だが、それをうまく利用したいとも考えている。「働く中でこれまでずっと心にかけてきた人道的・社会的活動を支援するのにウクライナのファーストレディがどんな役割を果たせるか悟りました」と2021年9月にメディアの「ディプロマティック・クーリエ」の取材に語っている。ファーストレディになってからは男女平等、文化への平等なアクセス、肥満対策などに取り組んできた。いまや外交の分野でも影響を持つに至り、夫の貴重な戦力となっている。

text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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