プーチンの実の母を名乗る女性、ヴェラ・プーチナの奇妙な物語。

Society & Business 2022.03.23

1999年にロシア大統領の実母であると主張する女性が現れた。ジョージア在住のこの高齢女性はプーチン大統領は養子として引き取られたと語っている。

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ウラジミールプーチンと彼の両親ウラジミールスピリドノビッチとマリアイワーノフナプティナ。(ロシア、1985年。)photography: Abaca

この女性は2008年に公開された『プーチンのママ』と題されたドキュメンタリーで一躍有名になった。ジョージアの小村メテヒに住む当時81歳のヴェラ・プーチナのもとにジャーナリストたちが訪れた。カメラの前で彼女は失った自分の息子「ヴォヴァ」ことウラジミールの物語を語った。息子は1960年に祖父母に預けられたという。まだほんの10歳のときだ。彼女の家の周辺に住む村の住民たちも、子どものことをよく覚えていた。陽気な子どもだったという人もいれば、寂しそうな少年だったという人もいる。ウラジミール・プーチンのこの「もうひとつの」幼年時代について、現在95歳になるヴェラが語り始めたのは1999年。その年、彼女は50年間音信不通だった息子をテレビ画面を介して目撃した。プーチンは当時ボリス・エリツィン大統領政権下で首相を務めていた。

ロシア大統領の実の両親が誰かということについて、複数の伝記作家の間で意見は一致している。彼らによれば、ウラジミールは軍人の父ウラジミール・スピリドノヴィチ・プーチンと、労働者の母マリア・イワーノヴナとの間に誕生した。どちらも大統領就任前に亡くなっている。しかしヴェラ・プーチナはこれとはまったく別の物語を語る。

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メテヒの学校に入学

 

 

物語の始まりはジョージアのメテヒ。2008年に彼女がイギリスの日刊紙「テレグラフ」に語っているように、別の女性と結婚していたロシア人技術師のプラトン・プリヴァロフと彼女の不倫関係から生まれた子どもが後のプーチン大統領だという。未婚の母として彼女はウラジミールと名付けた息子をひとりで育て、数年後にジオルジ・オセパシュヴィリという名のジョージア人兵士と結婚する。

10歳まで未来のロシア連邦大統領はあらゆる点で模範的な子どもだった。彼は村の小学校に入学したという。奇妙な話に思えたものの、「テレグラフ」紙は調査の末に、1959ー1960年までメテヒの小学校の名簿に「ウラジミール・プーチン」の名が登録されているのを実際に確認した。その後、夫とウラジミールの不仲のために、ヴェラはロシアに住む祖父母に息子を預けることにした。

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証拠に乏しい証言

 

 

ヴェラの存在はドキュメンタリーだけでなく、複数の記事でも取り上げられたが、彼女の証言は証拠に乏しく、辻褄の合わない箇所もある。ロシア人ジャーナリストのナタリア・ティマコヴァ、ナタリヤ・ゲヴォルキアン、アンドレイ・ウラディミロヴィッチ・コレスニコフの共著で2000年に出版された公式に認められたプーチン大統領の半生記『First Person』によると、ウラジミール・プーチンは1952年にレニングラード(現サンクトペテルブルク)で生まれたとされており、ヴェラの主張する誕生年と一致しない。彼女の話では、1960年にウラジミールは10歳だった。

ヴェラがジョージアの日刊紙のインタビューに応じた際の様子はYoutubeでも一部視聴できるが、彼女はカメラの前で「ロシアに行って、何年か留年をしたに違いない。あの子はロシア語を話せなかったから」と述べた後、「だから生まれ年を変えたのだ」と主張している。ウラジミールの両親である、ウラジミール・スピリドノヴィチとマリア・イワーノヴナのプーチン夫妻については、祖父母の家に住んでいたウラジミール少年を養子として引き取ったのだと話す。

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陰謀

当然、クレムリンはこの話を否定し続けている。ヴェラは1999年の告白の後、ロシアとジョージアの当局者が彼女に口封じをするために村にやって来たと「テレグラフ」紙に語っている。この話を裏付けるように、メテヒの小学校の女性教師のひとりがやはり脅しを受けたと明かしている。

真偽を確かめるのは困難だが、この話にはいまも多くの人が興味を抱いている。またその後陰謀まがいの事件もいくつか起きている。そのうちのひとつとして「テレグラフ」紙は、ロシア人調査報道ジャーナリスト、アルティオム・ボロヴィクの件を報じている。2000年に飛行機事故で亡くなった彼は、ウラジミール・プーチンの足跡を辿るドキュメンタリーを制作している最中だった。インタビュー対象者のリストにはヴェラ・プーチナの名前もあった。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)

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