「#MeToo」以降議論を呼んだ、芸術における女性の表現とは?

Society & Business 2022.05.03

#MeToo時代以降、多くの絵画や彫刻などの芸術表現が、制作から何年も経ってから公判の対象となるようになった。

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エドゥアール・マネ作「フォリー・ベルジェールのバー」1881-1882年。Abaca

2018年1月、ロンドンのマンチェスター・アートギャラリーの入口には、「本ギャラリーでは、受動的に着飾っている、あるいはファム・ファタールとしての女性の身体をご紹介していますが、これはヴィクトリア朝のファンタジーです」と書かれていた。これは、イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスによるラファエル前派の作品「ヒュラスとニンフたち」の絵について釈明したものである。この絵画は、時に批判され、時に賞賛されているが、今回の取り組みは、芸術における女性の表現について、来場者のビジョンを問うことを意図したものだ。

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ジェンダー、社会階級、セクシュアリティの問題、#Metoo運動、ウォーク(Woke)・カルチャーなどが渦巻く社会で、美術館は大きな現象の中心に身を置こうとしている。つまり、名作を現代のイデオロギーに照らして再読しているのだ。これは、元美術史家が立ち上げたフェミニストのポッドキャストやインスタグラムのアカウント「Vénus s'épilait-elle la chatte?」のように、男性画家たちによる女性の見方に疑問を投げかけるものである。ラファエル前派について語る上で、彼女は、同じジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品『ラミア』をもとにしたある書籍の中で、次のように説明している

「それらは主に古代や中世の題材にインスパイアされたもので、(中略)共通してミソジニー(女性蔑視)をよく含んでいる」。

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エドゥアール・マネの「フォリー・ベルジェールのバー」

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エドゥアール・マネ作「フォリー・ベルジェールのバー」1881-1882年。Getty Images

このように、多くの論争を経て、マンチェスター・アートギャラリーは、逆に論争を引き起こす危険を冒してまで、自ら論争に参加することで、収蔵品に対する攻撃の可能性から自らを守ることができたのである。

4月13日、ロンドンのコートールド・ギャラリーは、フランス印象派の画家エドゥアール・マネの絵画「フォリー・ベルジェールのバー」の解説を張り替えた。1882年に制作されたこの肖像画は、パリのカフェ・コンセールで忙しく働くウェイトレスが、鑑賞者と背後の大きな鏡に映る男性の両方を見つめる姿を描いており、ギャラリーは性差別的であると判断したようだ。

この絵の新しい解説には、「この女性の謎めいた表情は、特に男性客と会話しているようで気になる。彼女はワイン、シャンパーニュ、ペパーミントリキュール、ブリティッシュバスビールなど、魅力的なアイテムの中のひとつに過ぎない」と書かれている。

これは、女性を虐待してでも欲望の対象にしようとする男性の視線を糾弾するために生まれたフェミニズムの概念に基づき、作品の「男性の視線」に警告を発するための説明文である。

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バルテュスの「夢見るテレーズ」

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バルテュス作「夢見るテレーズ」(ドイツ、ルートヴィヒ美術館所蔵)Getty Images

エドゥアール・マネが数々の論争を巻き起こしてきたとすれば、バルテュスは多くのフェミニスト運動の怒りを買ってきた画家である。さらに悪いことに、このアーティストは盗撮や倒錯、さらには小児性愛者の思考で告発されている。このような非難がなされるのは、彼の作品が幼い少女のスカートの下に観客の視線を置くものであることによる。

1938年に描かれた名画「夢見るテレーズ」がそうだ。赤いペチコートを着た子どもが、淫靡な姿勢で日光浴をしている様子が描かれている。2017年11月には、メトロポリタン美術館(MET)からの撤去を求める嘆願書が世界中を駆け巡った。この騒動を起こしたミア・メリルは、「私はただ、METが壁に掛ける絵画にもっと警戒心を持ち、これらの絵画が何をほのめかしているかを理解するよう求めているだけ」と説明した。このキャンペーンは、女優へのレイプで有罪判決を受けたアメリカのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン事件の際に立ち上げられ、約9000人の署名が集まったが、絵を撤去させることには至らなかった。

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ソン・タの「より醜く」

制作から数年経って世論を騒がせた作品である。2012年に制作された、中国のアーティスト、ソン・タによる「Uglier and Uglier(より醜く)」は、大学のキャンパスで知らないうちに撮影された女子学生たちの約5000枚の画像を、7時間近くにわたって映し出す映像だ。外見によって分類され、番号が振られている。2013年に初公開され、あまり反響がなかったが、2021年6月に上海のOCT Contemporary Art Terminal(OCAT)で来場者に公開され、今度は怒りの声が上がっている。2013年のViceのインタビューで、この作品について 次のように語っている。「最終的には恐ろしいものになった。一般人たちで手も耳も目もあるが、彼女たちは不細工で人々を不快にさせていたのだ」。

 

 

衝撃を受けた多くの来場者は、このプロジェクトの性差別的で侮辱的な内容を糾弾し、施設からの即時撤去を要求してきた。「批判を受け、作品の内容や作家の説明を再度検討しました。女性蔑視であり、肖像権侵害の問題があることがわかりました」とOCATは説明した。

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アニッシュ・カプーアの「女王の女性器」

インドのアーティスト、アニッシュ・カプーアもスキャンダルの常連だ。2015年には、ヴェルサイユ宮殿の庭園に設置された作品「女王の女性器」で驚きを演出した。しかし、中でも特に不穏な空気を漂わせているのが、2019年6月にロンドンのリッソン・ギャラリーで発表された一連の絵画だ。画家であり、ビジュアルアーティストでもあるアニッシュは、女性の月経周期を、かなり刺激的で嫌悪感さえ感じさせる方法で表現した。キャンバスに描かれた血の跡、壁一面に飛び散った水しぶき、滴り落ちる穴…。彼のシリーズの解説には、女性、痛み、暴力、汚れに関する問題を描くことは男性にとって正当なことなのか、という問いかけがなされている。

 

 

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パームスプリングス美術館のマリリン・モンロー

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マリリン・モンローの像。Abaca

永遠の欲望の対象であるマリリン・モンローは自身をかたどった銅像を建てるほどの人気であった。

彼女へのオマージュとして、映画『7年目の浮気』のカルト的なシーンをモチーフにした高さ8メートル近い彫刻が、昨年6月にアメリカのパームスプリングス美術館の近くに設置された。当然のことながら、女優マリリン・モンローはファム・ファタールとして映し出されている。ハイヒールを履き、薄手の白いワンピースを飛ばして下着を見せながら、物憂げにポーズをとる。

しかし、この作品は、女優や女性に対する性差別や性的虐待とみなされ、地元協会の怒りに触れ、撤去を要求された。2021年夏、数々の抗議行動が起こり、アメリカのリバーサイド郡に対する嘆願書や訴訟まで行われたほどだ。しかし、いずれのフェミニスト団体も女優の銅像撤去には成功していない。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr), translation: Hanae Yamaguchi

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