「今日は17回しか接続しなかった」欧州ビジネスマンの「リンクドイン依存」の背後にある、消費社会の構造とは?

Society & Business 2022.05.05

惹かれる書き込み、新たな転機、出会い……。 2016年のマイクロソフト社からの買収後、リンクドインは中毒に陥ってしまうほどに、ユーザーにとって職業上切り離せないソーシャルネットワークになりつつある。しかしこれは、とりわけ大量に集められた情報による「営利戦略」なのだ。

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ユーザーは、ネット上に掲載された投稿のコメント欄や個人メッセージに、完全に依存している。photo: Getty Images

「忙しい一日だったので、今日は17回しか開きませんでした」と言う投資会社の専務取締役補佐マーク。彼はチェーンスモーカーが何となくタバコを吸ってしまうように、そして彼の携帯のスクリーンタイムの時間計算をオフにしてしまうほどに、機会的に青と白のアイコン押してしまうのだと語る。

驚いたことに、彼のプロフィールを見る限り写真はなく履歴書も特に面白みがない。投稿は週に一度で、会社の仲介メッセージが主に彼の仕事なのだ。

「投稿するよりも多くの時間を、閲覧することに費やします。競争相手を知り良いとこ取りをして、雇用契約については面会予約を取ります。一日にやるべき大きな作業のひとつは、リンクドインのコメント欄を見ることから始まるのです」。

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計算された依存性。

交渉を結び、職を見つける......。2003年の開始以降、リンクドインは職探しのソーシャルネットワークとしてこのふたつの約束を守り、素早い結果を約束してきた。2005年から2012年の間に、利用者は一気に2億人に達した。2016年に、マイクロソフトは変化を固く心に決め企業を26億円で買収したのだ。

「リンクドインはウェブ上の最も人気なサイトのひとつだが、誰もが使い方を楽しめているわけではない」と、ワシントンポストは強調する。新たな機能性の開発、フォーマットの増加(文章、ビデオ、オーディオも近々登場する)など、状況は当時より随分変わっている。コンテンツの開発を委ねられたチームの新製品、影響力を持つ会員リストの作成、テーマ別有名人 「トップ ヴォイス」、 または視聴者増大のための利用者への助言などが新たに加わった。

結果として、現在リンクドイン8億人の登録者の内2,000万人は、フランスが占める。

企業は、日常的にアクセスがあるユーザーでも、あまり利用しない者であっても、積極的に利用者と毎月連絡を取ることはない。それでも、常に高い水準を維持し交流が行われていることに非常に満足している。

「私たちは前年度に比べ、2021年7月から9月の間、利用者同士の会話の21%の増加を確認しました。また、共有公開コンテンツも同様、2021年度の7月と2020年の同月では上昇が見られました」とラテンアメリカ・中東・ヨーロッパ担当の編集部長サンドリーヌ・ショーヴァンは述べる。

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まるで新しいインスタグラム?

何人かのユーザーは、個人メッセージ、もしくはマッチング相手とのコメント欄でのやり取り、そしてこのネット上に掲載された書き込みに夢中になっているのだ。
「インスタグラムの上辺だけのものとは違います。リンクドインは本当に親切で誠実さが窺える」と、フリーランスで活動するようになってから熱心にサイトを使用するようになったコミュニケーションコンサルタントのメリッサ・オスマニは語る。

「リンクドインを見ていると、ひとりぼっちじゃない気がします。時間を浪費している感覚はまったくありません。周囲に認知してもらうためには登録しなければならないと思ってましたが、こんなに気に入るとは思っていませんでした」

今後は、自身の限界を超えないよう努め、規則的なリズムを作ると話す。午前中に投稿し、日中は何度も現状の繋がりを確認、そして返信漏れがないようまた夜に確認する。

リンクドイン上では、頻繁に交流がなければ存在しないのと同じことなのだ。企業が自社イメージアップのために行うように、それぞれがパートナーの可能性や新入社員のイメージに気を配っている。

「ユーザーは、雇用主がより注意を払うソフトスキルに基づいて、自身の職業的アイデンティティが個人を示すことをしっかり理解しています」サンドリン・ショーヴァンは続ける。
課題はソーシャルネットワークを超えて、雇用市場の大部分に影響を及ぼす。それぞれが雇用主に自身の名前を知ってもらうために、最大限の努力をする義務があるのだ。

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労働分野の拡大

「リンクドインのつながりは自然にできるわけではありません。エクセルを使って準備し、計画して投稿を書き上げ、返信やコメントに目を配ります」。情報処理専門学校でコミニュケーションとマーケティングオペレーションを担当する27歳のカレン・カマユウは説明する。彼女も膨大な時間を費やしているのだ。

給料交渉術を学んだり、仕事でよりよいポストにつくための知識を得たり、仕事でいちばんになるために膨大な投稿を読む。さらに数百名のグループに加入し、意見を交換することは目に見えて情報量が増えることに繋がる。

「このまま携帯を見続けるのはいけないと意識はしているものの、ネットで時間を使うことは何かしらを生産しているような気分にさせるんです」。

彼らはスマホを肌身離さず常に持ち歩く。ベッドの中でも、週末も、そして家族との食事にも……。

携帯電話でメールを確認できるようになったことで、すでにプライベート時間はなくなったに等しい。

パンデミックによって後押しされ、リンクドインもさらに深い波に乗り、プロと個人との間の壁に揺れている。2年前から社会的な生活は極端に減少したが、ネット上だけで築かれた関係では、人との繋がりは消えてしまうのだろうか? 本質的なアイデンティティは複雑で秘められたものだが、はたして職業上のユーザー像に取って代わられるべきなのだろうか?

とてつもなく複雑なアルゴリズムによって潰され、ハッシュタグでフィルターにかけられ、見せかけの誠実さでふるいにかけられた個性には、一体何が残るのだろうか?

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アルゴリズムによる問題。

「リンクドインには特徴があります。まずはコンテンツをお試しメンバーに紹介し、それによって生じるリアクションを書き留め、クオリティーのレベルを評価します。そして‘‘いいね’’が押されコメントがつき、それらが共有されて他のユーザーの元に届きます。その繰り返しによって、この“格付けシステム”と“シェアリング”は永遠に続くのです。」と、デジタルマーケティング「OTTA」エージェント創設者、そしてグランゼコールビジネススクール「INSEEC」の校長でもあるステファニー・ラポルトは断言する。 適切な方法、適切な手順、そして多くの時間を使用すれば、「リンクドイン・ゲーム」をプレイするような感覚で、視聴者を簡単に増やすことができるのだ。

「彼らはネットワークを活き活きとさせる方法を合理化しました」と、ステファニー・ラポルテは続ける。「以前は、たとえばほかのwebサイトやYouTubeチャンネルなど、多くの外部リンクを共有していました。しかし現在、自社のコンテンツ作成を助成するため、それらに不利益を被らせる施作がとられています」。

ユーザー観点からすると、この施策には疑問が残る。リンクドインはユーザーに最も適切な情報を表示しようとしているのか、それともユーザーの注意を引こうとしているだけなのだろうか?

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「私たちのアルゴリズムについては多くの神​​話が広まっています」と、編集部長のサンドリーヌ・ショーヴァンは言う。「これは人工知能に基づいて多くの複雑なパラメーターを考慮し、適切なコンテンツを然るべき人、妥当なコミュニティへ良いタイミングで配信することを目的としています。 私たちの最終目標は、すべての人が優れた専門家と連絡を取り、仕事を見つけることなのです」。なるほど、これは利益を妨げない。

ソーシャルネットワークはユーザーが鍵を提示しているドル箱の上に座っている様なものなのだ。

「リンクドインは、ユーザーによって絶えず更新される、レベルの高い精度と正確さ、そして専門的な情報を提供します」とステファニー・ラポルテは強調する。「したがって、データは他よりも高価で、たとえば、ターゲットを絞った広告の観点から価格が急上昇しています」。 

さらにはマーケティング、採用、トレーニング専用のツールに加えて、リンクドインは経済界、雇用市場、さらには活動の各セクターの主要なトレンドに関する正確な情報を意のままにしているのだ。非常に収益性の高いデータベースで、2021年6月、マイクロソフトはリンクドインの収益が9億2800万ドル増加し、初めて100億ドルを超えたと発表した。

text: Sofiane Zaizoune(madame FIGARO.fr)

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