「人生に失敗した...」40代を過ぎて人生を後悔する人たちに共通する「ある特徴」とは?

Society & Business 2022.05.12

「人生に失敗してきた」、「やりたいことができていない」。残念な話だが、40〜50代になってこう確信する人々がいる。この感覚は何を物語っているのだろうか? 本当に失敗は人生の行き止まりを意味するのだろうか? 心理学者が解説してくれた。

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「『人生に失敗した』と発言する人は、何においても比較しがちです」-サラ・ヴァンデカステール Getty Images

「私は人生に失敗した」と嘆く。その言葉は、マリーラインさん(41)のインタビューが終わった後もずっと頭の中に響いていた。彼女のヘーゼルナッツ色の瞳は霞んでいた。「人生設計の枠から外れている」ことを自覚した彼女はこんなことを述べた。かつての彼女の人生のリストには、良い職業に就き、マイホームを持ち、パートナーと子どもを持つという伝統的なものばかりが並んでいた。

「今年中に返済を終える予定のワンルームマンションを除けば、大失敗でした」と彼女は言う。そして、「私が定期的に会っているのは、私のうつ病の治療を担当する精神科医だけ」とも語る。

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誰もが子ども時代に、偉大なことを成し遂げること、並外れた人生を築くこと、夢のような人生を生きることを心に描く。ただ、現実世界を知るようになると、私たちの人生は突然、平凡に見えてくるのである。この感覚は何を物語っているのだろうか?自分がたてた目標は何処へ?

「『人生に失敗した』と発言する人は、比較しがちです。よくこのような話をする人は、自分と他人を比較したり、理想とする社会像と比較したり、理想的な自分と比較したりする傾向があります」と幸福のためのセラピーを専門とする心理学者、サラ・ヴァンデカステールは言う。

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思い描いた願望

ある年齢に行き着いた時、自分のおかれた状況は控えめに言っても酷かった。50代のアンヌ=リースは、それを端的に表現している。彼女にとって「人生に失敗した」ということは、「50歳になって何も成し遂げられなかったという思いで目覚めること」だと言う。

世界的なマルチエネルギー企業で責任あるポジションに就いているが、メトロに乗って仕事して寝るだけの人生に窮屈さを感じている。

「『潜在的な思い』が心に忍び込んでいる。学校から墓場への片道切符を手に入れたよう。学校から墓場まで、驚きも見どころもないわ」と語る。

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この「人生に失敗した」という思いに、44歳のティメオも「強く打ちのめされた」と言う。2021年、エンジニアの彼は結婚式で高校時代の友人と偶然に再会する。その友人がアジアのホテルチェーンのトップであることを知ったのだ。好奇心を刺激された彼は、SNSで自分のかつてのクラスメートのことを検索してみた。すると、もうひとりがアラブ首長国連邦でモデルと結婚し、常に旅をし、素晴らしい風景を背にしてシャンパーニュを楽しみ、駐在員生活を送っていることを知った。その事実を知って、彼は苦い思いをした。「彼らは私と同じような子供時代を送り、同じ町で過ごし、同じような機会を持っていたはずなのに、なぜ私ではなく彼らなのだろう?」と彼は自問する。

彼らの言葉を聞いて、心理学者のクレマンス・ブルックは次のように指摘する。

「人生に失敗したのではない。かつて思い描いた願望に失敗したのである」。そして、それには理由があり、幼少期、つまり子どもの頃の願いを投影している。

「結婚して子どもがいる自分を想像していたのに、彼は40歳になっても独身である」と心理学者は説明する。その中で、「子孫を残すこと」「家族を養うこと」という、あらゆる社会や職業に共通するパターンを見出すことができる。

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失敗したときの対処法

自分の人生についてそのような発言をすると、恐ろしい結果につながる。それは自分の価値を下げ、自尊心の喪失につながっている。つまり悪循環なのだ。「失敗の予感は、ある意味で失敗を呼び起こす傾向があるのです」とクレマンス・ブロックは警告している。サンドラ(39歳)は、2年前にこの下降線に陥った。その日、彼女は自分の職場である旅行会社の支店長に自分が「不要不急の人員」と判断されたことを知った。必要とされていない感覚が、彼女の中で偏った内観を始め、ついには命を絶つことまで考えた。

「姉がアパートに来て、私が無反応な状態のところを発見してくれました。姉は自殺を試みた私を受け止め、失敗や辛いことはずっとは続かないと言ってくれたのです」と彼女は振り返った。心理学者のサラ・ヴァンデカステールは、この地獄への転落に対抗するために、感謝の気持ちを持つことを勧めている。

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「人は常に自分が思う以上に、はるかに多くのことを成し遂げてきています。それを知るために、私はいまの自分から1年前の自分へ手紙を書くことを勧めています。目的は、大小さまざまな自分の成果を自分自身に伝えることです。子どもたちを素敵なイベントに連れて行ったり、ずっと散らかっていた家具を地下室から出したり、なんでも良いのです」と、彼女は主張する。

心理学者のサラ・ヴァンデカステールは、つい最近も高齢の患者さんにその方法をアドバイスし、これまでの人生を振り返ってもらった。「人生の終盤で人間関係を振り返り、行動よりも大切なものに気づくことがよくあるのです。老後、人が幸せになるのは、達成したことや物質的なことよりも、むしろ人との交流です」。

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人生の挫折は、必ずしも行き詰まりを意味するとは限らない。「人生に失敗したと思っても、それぞれに道はあります。何もせずに停滞するか、現状を否定するか。あるいはそれを原動力に変えるか(生活を改めたり、自分の人生の捉え方を変えたりすることによって)」と心理学者クレマンス・ブルックは分析する。

この感覚をきっかけに、全く新しい広い可能性が広がっていることに気づく人もいる。42歳のときにマディは人生に失敗してきたと思ったことをきっかけに、すべてを変えた。「日常生活、そして自分の人生が自分に合っておらず、自分の価値観にも合っていなかった」。彼女にとって些細なことから変えて行った。月1回はしっかり休み、頻繁に利用していたタクシーを自転車に変え、無理な誘いはあえて断り、外出の機会を増やすなど、自分のための時間を大切にしている。さらに、人権擁護団体に時間を割くために、勤務先の法律事務所ではパートタイム勤務に変えるなど根本的な変化も。

「窓際に追いやられることもなく、自分のポジションを楽しんでいる。かつて少女だった自分に会ったら、やっと私のことを誇りに思ってくれると思う」と微笑んだ。人生に失敗したと思った時こそ、再出発のチャンスでは?

text: Caroline Lumet (madame.lefigaro.fr), translation: Hanae Yamaguchi

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