BWAピッチコンテスト ファイナリスト発表会 生理の貧困問題を解決する、エシカルアパレルブランド。

Society & Business 2022.05.27

Professional Award#2
SHIFT 80(シフト 80)

発表者:坂田ミギーさん

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坂田ミギー / Miggy Sakata
クリエイティブディレクター / エッセイスト
アフリカの孤児・貧困児童へのサポートを目的としたエシカルアパレル「SHIFT 80」代表。
キャンピングカーをモバイルオフィス&ハウスとして、日本各地を旅しながら働くスタイルを実践中。
instagram : @shift80jp
twitter : @shift80jp


 

 

坂田ミギーさんによる、SHIT 80のピッチ。

坂田ミギーさんは利益の80%をアフリカに還元する、エシカルアパレルブランド「SHIFT 80」を手がけている。彼女が提起するのは、生理の貧困を解決するためのアイデアだ。ピッチの冒頭では、スラム街における少女たちの過酷な現状を明かした。

「世界には、たった50円の生理用品と引き換えに売春をしなければならない女の子がいる。巨大スラム街・キベラ(ケニア)にはそのような女の子がたくさんいます。彼女たちは家族の食べ物も十分にない状態のなか、『生理用品を買ってほしい』とは言えません。そのため、古い新聞紙や布の切れ端を使っている。ある15歳の少女は布の切れ端を使っていたために、学校の制服や椅子を汚してしまいました。それから、いじめを受けるようになったため、生理期間中は学校へ行くことができません。学校を休めば成績が落ち、進学ができなくなって仕事を得ることもできません。そして、貧困が連鎖してしまうのです。また、売春による妊娠も問題になっています。ケニアでは18歳未満の女の子が妊娠する確率が25%。一度、妊娠してしまえば、学校に戻ることはできなくなってしまいます」(坂田ミギーさん、以下同)

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坂田さんは、2018年からキベラの女子学生に向けた支援を続けているという。(坂田さん提供)

こうした状況を受け、坂田さんは2018年から月経教育と生理用品の支援を開始。以後4年にわたり、キベラのスラムにある女性向けの医療機関や、15の学校とネットワークを作り、支援を続けてきた。

「支援先の1つ、マゴソスクールの調査では、年間の欠席日数が1人あたり36日減りました。また、成績も11%アップしました。難関校に入れる成績の子もどんどん増えてきています。そして、妊娠で中退する生徒も減り、2019年は1名でしたが、2020年と2021年には0になりました。子どもたちの自己肯定感がアップし、夢や希望を語ってくれるようになりました。布の切れ端を使っていた少女はジャーナリストになりたいと、目を輝かせて教えてくれました」

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すべての子どもたちが希望を持てる社会に。

学校に通い、基礎学力を養うこと。これが、スラムを根底から変えていく第一歩になると坂田さんは言う。ただし、そのためには生理用品だけがあればすべて解決するわけではないと付け加える。

「学校に通えない子には、さまざまな理由があります。生理用品がないこと以外にも、保護者が学費を払えなかったり、孤児や虐待を受けたりしている子どももいます。そこで私は、スラムの教育機会を守るため、分配可能な利益の80%をアフリカに還元する事業を立ち上げました。それが『SHIFT 80』です」

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日本でも来てもらいやすい柄をチョイスし、着心地の良いTシャツやハーフパンツなど普段使いしやすいアイテムを受注生産している。(坂田さん提供)

いわゆるエシカルファッションだが、ポイントは「欲しいと思ってもらえる洋服」だということ。アフリカンテイストをバランスよく盛り込み、個性と自信を引き出す“普段着”を作っていく。同時に、坂田さんは現在のエシカルファッションの課題についても口にする。

「多くの人がエシカルファッションに関心を持っていますが、欲しいのに買えていないという状況もあります。大きな理由は2つ。1つ目は値段が高いこと。2つ目は貢献度が不明なこと。エシカルなのに、顔が見えていないことです。私たちはこの問題点を解消し、強みへと転換します。工場と直接取引をして自社のECで販売することで中間コストをなくし、高品質な洋服をリーズナブルな価格で提供します。平均価格は1万5000円。また、大量仕入れによる過剰在庫で収益を悪化させないよう、オンデマンドの受注生産を行なっています。

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SHIFT 80のアパレルデザインは、キベラのデザイナー、リリアンさんによるもの。彼女も貧困児童に教育を届けたいと、同地で学校を運営しているという。(坂田さん提供)

そして、2つ目の強みが貢献を実感できること。服につけたQRコードを読み取るだけで、『利益を何に使ってほしいか』を投票することができます。投票先は先ほどの生理用品をはじめ、女性への支援、貧困児童の学費支援や孤児の生活の支援などから選ぶことができます。この投票の結果で、利益の80%を支援していきます。支援成果はレポートでお届けするほか、現地とつながるような配信もおこなうため、貢献を実感できる。また、環境負荷を抑えるため、不要になったアイテムの回収と再利用のプログラムも用意しました。服を返却すると1000円以上のクーポンが還元され、廃棄を防ぐ仕組みとなっています」

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支援先の学校のOB、OGを起用したSHIFT 80のイメージ画像。(坂田さん提供)

支援してきた生徒は3000名を超えた。また、ノベルティをキベラの工場で生産することで、現地の職業訓練や雇用創出にも役立てている。将来的には現地で洋服やアイテムそのものの生産も視野に入れているという。

「支援先の学校のOBやOGをモデルにキャスティングし、ルックの撮影も行っています。後輩たちに、こんな素敵な先輩たちがいるから頑張ろうという、ロールモデルになってほしいからです。支援を受け、高校生になった少女は私に約束してくれました。『私は貧しい人でも安心して医療を受けられる社会にしたい。だからお医者さんになりたいのだ』と。彼女のように、すべての子どもたちが夢を描き、希望を持てる社会にしたいと思っています。過酷なキベラスラムにおいて、教育は光です。女性でも貧困でも、未来を切り開いていける教育をしていきたいです」

<審査員のコメント>

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ファイナンシャルアドバイザー・財務モデラー 秋山紘平さん
現地の子どもたちが夢を抱くストーリーに心を打たれるとともに、妊娠による中退を0にするといった明確な結果を出していることに驚いています。この事業のポテンシャルの高さがしっかりと伝わってきました。

その上で、3つほどアドバイスを。ひとつは、SHIFT 80は「利益の80%をアフリカにシフトする」というのが大きな特徴。ですから分配可能額や利益を定量的に示すと、より多くの人に共感を得られるのではないかと思います。

ふたつ目は、アクションプランの明確化。5年後に支援生徒を3300人に伸ばす、というターゲットが明確なのは素晴らしいこと。その上で、それをどういった手順を踏んで達成するのか、そして3300人がキベラの生徒数の何割なのかを明確にすると、5年以降のもっと長期的なプランも描きやすくなる。そうすると、さらに支援の輪が広がるのではないかと思います。

最後に、アパレル事業でありながら、キベラのストーリーを発信する事業でもあるように感じました。今後、ホームページなどでも現地のストーリーを発信していくと、購入者もより「貢献度」の実感が得られるのではないかと思います。

 

text : Noriyuki Enami (Yajirobe.Co.Ltd)

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