BWAピッチコンテスト ファイナリスト発表会 すべての人がファッションを楽しみ、ベターライフを実現するために。
Society & Business 2022.05.27
Professional Award ファイナリスト #1
For Better Life for ALL (フォー・ベター・ライフ・フォー・オール)
発表者:ワイス三枝さん
ワイス三枝 / Mie Weiss
現役インポートブランドバイヤー
障がいを抱える子どもの子育て、自身の大病の治療の過程でも、やりたい事をやりたい時にやるをモットーに活動。障がいや困難により夢を諦めることのないようサポートをする「For Better Life for ALL」設立を目指す。
ファッションバイヤーのワイス三枝さん。過去、自身にガンが見つかり治療に専念していたこと、子どもに障がいがあったことなどから、たくさんの「やりたいこと」を諦めてきた。しかしその一方で、周囲のサポートによってかなえられた家族の夢も多いという。その恩返しをするために、For Better Life for ALLの立ち上げを目指す。
For Better Life for ALLは「ファッション」「グッズ」「サポート」という3つのビジネスから成り立つプロジェクト。なかでも、ワイスさんが「最重要項目」と位置付けるのがファッションだ。
「For Better Life for ALLの事業プランは、『ファッションを全ての人のベターライフに』という願いからスタートしました。ファッションは人生を豊かにします。経済状況に関係なく、すべての人にファッションを楽しんでほしい。そして、すべての人が人生を諦めることなく、Better Lifeを実現してほしい。そのためのサポートをすることが私のミッションです」(ワイス三枝さん、以下同)
具体的なサービス内容は、障がいを持つ人、病気やさまざまな疾患で不自由を余儀なくされている人へのファッション提案。「日常」「晴れの日」「お直し」という3つの軸で、利用者のBetter Lifeを演出する。
「まずは、『日常を彩る、エブリデイファッション』の提案。ご依頼いただいた方に似合い、継続していけるファッションアイテムを、ご予算に合わせて提案します。次に、『晴れの日ファッション』。特別な日の思い出に残る、心が躍るようなファッションを提案します。そして、最後に『アルタレーションサービス(お直し)』です。既存のファッションアイテムや、ご自身の思い出の一着を、現在の状況に合わせてアルタレーションし、ファッションの幅を広げます」
また、もう一つのビジネスである「サポート」では、障がいや困難を抱える本人や家族が心地よく暮らすためのサポートを提案する。
「例えば、『人材サポート』。障がい、疾患を持つ本人やその家族がやりたいこと、行きたいところ、やりたい仕事、これらを実現するためのサポートができる人材を確保します。また、『コミュニティイベント』も運営していきます。一般の方を気にしてなかなか行けない遊園地や映画館などのイベントを開催し、家族全員で心置きなく楽しめる場所を提供します。そして、将来的には障がいを持つ人が気兼ねなく集まれるカフェスペースや、働ける場所を提供していきたいと思っています。さらに、障がいを持つ人だけでなく、日本で困難を抱えている外国人の方にも、この国で暮らしていく上で必要な人と出会える機会を提供していくことを考えています」
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少しずつの共感が世界を変える
そして、これらのサポートを行うための原資となるのが、「グッズ」の販売だ。車椅子に取り付けられるモビリティポーチや、心を癒すぬいぐるみなど、障がいや疾患を抱える人が快適に、おしゃれに暮らせるようなアイテムを世界中から集め、販売する。
「アイテムは障がいがない人でも手に取りたくなるようなものや、日本ではまだ広く流通していないようなグッズを集め、幅広い層へ訴求します。そして、必要なものを必要な人へ届けることができるショッピングモールを目指します。その売上によって、サポート事業を円滑に続けていきます」
このグッズ販売から出た売上の経費を除いたすべての利益をサポート事業に還元するという。これにより、最低限の価格でサービスを提供できる。
「障がいや疾患、困難を抱える方々の多くは、毎日の生活を営むことで精一杯。収入も平均に比べて低くなりがちです。そんななかでも充実した人生を送れるよう、他社では事業として成立しないほどの最低限の価格でサービスを提供し、どなたにでもアクセシブルであることを目標としています」
また、今後の目標として、同じ目的を持つ企業が参加する“ワンストップモール”を形成していく。
「障がいや疾患を持っている人に向けた商品は利益が上がりにくく、小規模での販路になりがちです。そのため、現状は個人がネットでサーチしていくしかありません。そうではなく、1つのサイトでさまざまな商品を閲覧でき、豊富な選択肢の中から必要なものを安心して購入できる場を目指します。加えて、大企業で行なっている障がい者に対する取り組みなどの紹介、仲介をするサイトとしての役割も担い、社会への理解、認知を広げたいと思います」。自身も困難を抱えた当事者だからこその、熱の込もったピッチ。ワイスさんは最後に、こんな言葉で締めくくった。
「障がい者自身や支える家族、さまざまな困難を抱える人々、そんな人たちを自分とは別世界と思わず、想像、共感ができる優しい社会となることで、みんなが安心して暮らせる世界になると思います。一人ひとりの少しずつの共感が世界を変える。そのプラットフォームを目指します」
<審査員のコメント>
株式会社野村総合研究所 コンサルタント 若林城将さん
まさに、日々の笑顔に直結するアイデアだと感じました。
障がいがある方を対象にしたビジネスというと、規模が小さいのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、日本の人口の7.5%は障がいがある人たちですし、疾患に関しても日本人の4分の1はガンで亡くなっています。また、4分の1は認知症になります。ほとんどの方が遅かれ早かれ、どこか不自由になっていく。つまり多くの方が対象になると考えています。
ワイス様のアイデアを実現、推進していくことは、誰しもが生きやすい世の中、社会をつくることにつながると思います。
Glin Impact Capital 代表パートナー 中村将人さん
今回のピッチコンテストのテーマが「日々の暮らしをより良くするアイデア」。障がいを持つ方の毎日を少しでも良くしていきたいというワイスさんの思いは、まさにそのテーマに沿っていると感じました。
昨今、障がいがある方々に対する、社会のインクルーシビティが増大していることを鑑みても、非常に大きな可能性を持ったアイデアだと思います。
今後は、このビジネスプランが障がい者の方のどんなペインを解決できるのか、より細かく具体的に考えていくことが重要なポイント。その先に、マネタイズの方法や自分のプロジェクトの強みが見えてくると思います。