カンヌ映画祭最初の女性プレジデントになったイリス・ノブロック。
Society & Business 2022.06.06
2014年からカンヌ映画祭においてティエリー・フレモーの右腕を務めたピエール・レスキュールのあとを、ワーナーメディアの元代表取締役イリス・ノブロックが継ぐことになった。7月1日に就任する。
シャトレ座で行われたセザール賞のセレモニーに登場したイリス・ノブロック。(2013年2月22日、パリ)photography: Rindoff Petroff / Durand / Getty Images
イリス・ノブロックはドイツ出身だが、25年以上フランスの映画界で活躍している。ワーナー・ブラザース フランスについでワーナーメディアフランスの代表取締役を勤め、2008年にはフランスで最高位勲章とされるレジオンドヌール勲章を授与された。フランスで話題作が封切られる際には名俳優に同伴したり、カンヌのレッドカーペットを共に歩いたりしたこともある。クリント・イーストウッド、クリストファー・ノーラン、映画『アーティスト』等だ。
しかし、来年からはカンヌ映画祭の新プレジデントとしてレッドカーペットの階段の上に立ち、ティエリー・フレモーと共に彼らを迎える立場になる。このポストに就く「初めての」女性としてだ。「私はヨーロッパ人としてのアイデンティティを強く持っています。これまでのキャリアの中で、フランス国内だけでなく国際的にも、映画のために働き続けてきました。これから自分の全てのエネルギーをこの世界的なイベントのために捧げることができるようになり、そのことに大きな喜びを感じています。かつてないほど文化的活動が保護を必要とされている中で、カンヌ映画祭は重大な役割を担うイベントだからです」。2023年、2024年、2025年にまたがる任命式の際、彼女はこのように語った。
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映画界の新たな争点
しかし課題はいくつもある。まずコロナ以降、映画館で映画を見る観客が極端に減り、収益は動画配信サービスに流れていることだ。更に、動画配信会社は製作した作品の映画館上映を拒否しているため、これらはコンペティションの枠から外されてしまっている。これらの新たな文化の担い手との交渉は今後も続くだろう。同時に、多様性を受けいれる“インクルージョン”、男女平等、環境問題などの対応を迫られるなど問題は山積みだ。プレジデントの役目は、総代表と共に編集方針の責任者であること(セレクション自体は総代表が行う)、官民のパートナーとの関係をマネージし、そして契約を結ぶことだ。法律を学び、キャリアを通してフランスの文化の特徴を把握し、映画界を知り尽くし、能力に優れたこの女性にピッタリの任務だ。
text: Marilyne Letertre (madame.lefigaro.fr)