子宮内膜症が診断できる唾液テストがフランスで発表。
Society & Business 2022.07.05
非常にシンプルで無痛のテストで、あらゆる種類の子宮内膜症を診断でき、臨床的にも有効であることがフランスで認められた。2月11日に発表されたこの新技術のおかげで、いままで平均して8年もかかっていた診断が数日にまで短縮される。フランスのマダム・フィガロの記事を紹介する。
フランスで発表されたこの新技術は、平均的に8年もかかる診断をなんと数日に縮めた。photo : Getty Images
2022年2月、リヨン市にあるAI企業Ziwig社が記者会見を開き、子宮内膜症を診断する革新的な技術を発表した。唾液テストを用いて「ほんの数日で」「複雑な形のものですら」ほぼ100%の確率で子宮内膜症を検出できるそうだ。これによってフランスに暮らす10人に1人の女性に希望の光が差すことになる。
「これは革命です」とフランス国立産婦人科医会(CNGOF)の子宮内膜症委員会会長フランソワ・ゴルフィエは言う。患者は平均8年から12年間、さまざまな診察や診断をさまよった結果ようやく診断が下されるのが現状だった。子宮内膜症は生理、食事、性行為、排尿に痛みが伴い、健やかな日常生活を送る障害となる疾患だからだ。
検査方法
いままでこの病を検出するにはMRIあるいは全身麻酔で腹腔(ふくこう)鏡検査(おへその近くに穴を開け、カメラを挿入すること)が必要だった。しかしEndotest®と名付けられたこの唾液テストの場合、侵襲性(器具を体内に挿入する必要)はなく、とても簡単に検査を行うことができる。
患者は自宅でキットを使って自分の唾液を採取し、それを試験所に郵送するだけ。すると子宮内膜症の診断が「数日で」下されると国際産婦人科連合(FIGO)の副会長フィリップ・デカンは説明する。
実際、このテストは特定のマイクロRNA(miRNA)を検出する役目を果たす。miRNAはほとんどの体液(血、尿、母乳、涙、唾液…)の中に循環している分子だ。「数年前から、これらが子宮内膜症の病態生理学的なメカニズムに関与しているという証拠が蓄積され、特定のmiRNAの異常と子宮内膜症の病巣の発展が直接的に関係していることが判明されたのです」とZiwig社はプレスリリースで報告する。
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決定的な臨床試験
この唾液テストの有効性を測るため、子宮内膜症の専門医やスタートアップ企業であるZiwig社のAIのエンジニアから構成されたリサーチチームがEndo-miRNAという臨床テストを2021年1月に実行した。テストは子宮内膜症が疑われ、痛みを訴える200人の女性を対象に行われた。血液検査と別途で唾液テストを行い、さまざまな重度の153人の患者を発見することができた。「唾液テストは、現在利用できる診断方法(MRIや骨盤のエコーを含む)よりも性能が高かった」とZiwig社はプレスリリースに記している。
フランスでは近々市販で入手可能?
この好成績を受け、フランス内にある5つの施設で1,000人の女性を対象に新たな試験が始まった。Ziwig社のヤーヤ・エルミール社長によると、テストキットを「大量生産する準備はできている。あとはフランスの保健局次第」とのこと。保険局は治療法の確立、保険の適用などを検討しなければならない。
販売には処方箋が“一応”必要とされるとのことだ。しかし、スタートアップ企業のZiwig社としてはフランスの薬局で広く販売できることを願っている。「薬剤師はテストキットを販売するのに適した専門家です。予防措置を説明し、陽性の結果が出た場合にはアドバイスを与えることもできます」とプレスリリースで説明している。
公式な発売日の発表を待つばかりだ。「それも近い将来に」と国立産婦人科医会(CNGOF)の子宮内膜症委員会会長フランソワ・ゴルフィエは前向きだ。1月上旬、マクロン大統領は国を上げて子宮内膜症の対策に挑むと発表した。「この疾患をはっきり理解し、原因や治療法を確立しなければならない。これは女性の問題ではなく、社会の問題だからだ」と締めくくった。
text : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)