フォロワー大収穫! 絶対にフォローしたい農業女子4人。
Society & Business 2022.07.11
YouTubeにTikTok、そしてInstagramで。農業を営むかたらわ、社会通念を掘り崩し、女性らしさを培い、情熱の種をまき、SNSでフォロワーを大収穫している女性たちがいる。フランスのマダム・フィガロが、4人の農業女子と出会った。
オセアーヌ・バラン、オート=ソーヌ県の酪農家兼穀物生産者
バイクにまたがって「ハーレー・ダビッドソンに乗っているときは誰もいらない」と歌ったのはブリジット・バルドー。彼女たちにとってのハーレーは……ジョン・ディアのトラクター! 赤いマニキュアを塗り、トラクターのハンドルを握るのは、@Sophiie_farmerlife、@Océaneagricultriceofficiel、@Ophelietamerenature、@Claire_maman_agricultrice。
InstagramにTikTok、YouTubeでも、新世代の女性農業者たちが活躍中だ。酪農家、穀物生産者、農場経営主の彼女たちが、農園にグラムールを広めている。フェミニンかつフェミニストを標榜する農業女子インフルエンサーは、農業への情熱を共有するためSNSをフル活用! 農業はもはや男性だけの仕事ではなくなりつつある。フルタイムの農業従事者のうち、女性が占める割合は1970年代初頭ではわずか8%だったが、いまや30%に上昇した。
#farmgirl #tractorgirl #agricultriceコミュニティのミューズたちは、スマホを作業着に突っ込んで、搾乳室や種まき前の土壌の準備風景といった、自分たちの日常を公開し、シャロレー牛と一緒のセルフィを投稿し、トウモロコシ畑の前でピンヒールを履いてポーズを取る。彼女たちの狙いは、ステレオタイプを掘り崩すこと。
かつて畑で働く夫たちを補佐する主婦と見なされていた母親や祖母の世代のように、陰に隠れているなんてもはや論外。フランスでは、2010年にようやく配偶者同士のGAEC(農業共同経営集団)設立が認可されるようになったが、ステレオタイプはいまだに残っている。スタイリッシュな彼女たちが、おしゃれをして出かけたパーティで、「ええ、農業やってるの?」という反応を、これまで何度聞かされたことか。
農業者は世界に開かれていると同時に、互いに助け合うべき、という信念を持つ彼女たちは、6月にフランス全土で開催された#JNAgri(全国農業デー)を待つまでもなく、自分たちの職業をたたえ、農業は環境破壊や土壌汚染の原因だとか、動物虐待の当事者だと非難する「アグリバッシング」と闘っている。
ミス・フランス農業の成功をきっかけに波に乗る地方在住の農業女子インフルエンサーたちは、ブランドとのコラボを手がけ、製品テスト(搾乳用グリースとか!)のプロモーションコードを提供し、多くのフォロワーを引きつけている。喜びに満ちた日々のニュースを報告するこうした「ハッピー農業女子」たちの投稿は、地方在住者だけでなく都市生活者をも魅了する。苦労の多い職業ではあるが、畑にはユーモアがいっぱいだ。フランスの魅力あふれる4人の農業女子のインスタグラムを一挙紹介!
#1. ソフィ・ルノー(29歳)
シャラント=マリティム県の穀物農家
Instagramアカウント:Sophiie_farmerlife(フォロワー数:2万400人)
ソフィ・ルノー、シャラント=マリティム県の穀物生産者
Instagramスクリーンショット/@sophiie_farmerlife
■経歴
ルノー家は5代続く農家。ソフィーが自分は農業に向いていると気付いたのは、経営学のBTS(上級技術者免状)を取得した後。BPREA(農業経営責任者職業免状)を取得し、2016年に家業に就いた。小麦、トウモロコシ、大麦、菜種……。種まきから収穫まで、植物の成長を追うことに熱中する彼女は、人々を養う仕事に従事することを「有意義」と感じている。2019年に膝の手術を受け、一時休業を余儀なくされた。一年の仕事の集大成である刈り取りに参加することもできない。落ち込んではいられないと、ソフィーはSNSを通して#farmgirl生活の配信を始めることに。
■スタイル
2021年ミス・フランス農業に選ばれた、眼鏡がトレードマークのおしゃれなブルネットガールは、グラムールな写真にプロの農業者目線のコメントを添えて投稿する。どこへ行くにも三脚は必携。ショートパンツとキャップという出で立ちで畑でポーズを取り、「トウモロコシはあっという間に大きくなる!どうか雨が降りますように」。はたまた、セクシーなブラックドレス姿で「種蒔きはもう済みましたか?」と自分にツッコミを入れたり、ピンヒールを履いて「霜害は大丈夫?」と畑の様子を見に行ったり。インタラクティビティを活性化させることで、孤立しがちな農業という職業にオープンマインドを取りいれる。
■最も話題になった投稿
「いい週末を」というメッセージを添えた、ソフィがトラクターの巨大なタイヤの前で微笑んでいる写真。セクシーなコンビネゾンと、ごついジョン・ディア(農業従事者が憧れるアメリカの農機具メーカー)の組み合わせが新鮮なこの投稿はアクセス数が10万を超えた。「みんながいいねを押してくれたのは、これまで農業をやっている女性にこういうイメージがなかったから」と分析する。
■モットー
「爪にマニキュアを塗っていても、トラクターの運転もできるし、ものを考えることもできる」。シャラント=マリティム県の起業家労働組合副代表でもあるソフィは、農地の会計管理も、自分らしらを持って肉体労働に従事することも、女性はどちらもできると証明したいという。彼女は「どいて、持ってあげる!」と言われるのが好きではない。「私たちを見て、女の子たちが“私にもできる”と思ってくれるといい」
■コミュニティ
アカウント開設当初は192人だったフォロワーも、いまは2万人に手が届くまでに。彼女にとってコミュニティは「家族」のようなものだ。フランス全国だけでなく、カナダ、メキシコ、オーストラリアの農業家たちも、技術や生産方法を教えてくれる。公共建築工事のプロや園芸用品店、彼女が着ているザラのブラウスに注目するファッショニスタもネットワークの一員だ。
■プロジェクト
味気ない農作業着に不満だったソフィは、ポケットつきのレギンス(なんて実用的!)のように、自分が愛用するブランドのアイテムの宣伝もする。 独自のラインFrenchfarmershopを立ち上げたところで、自身のサイトでの展開を考案中だ。Tシャツやポロシャツ、帽子を扱って、畑でもおしゃれでいられることを証明したい。「農業者であることを誇りに思う。だからそのことを堂々と見せる」と言える服の提案だ。
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#2. オセアーヌ・バラン(20歳)
オート=ソーヌ県の酪農家、穀物生産者
Instagramアカウント:Oceaneagricultriceofficiel(フォロワー数:2万4300人)
YouTubeアカウント:Océane Agricultrice(フォロワー数:4万2700人)
オセアーヌ・バラン、オート=ソーヌ県の畜産業、兼穀物生産者
Instagramスクリーンショット/@oceaneagricultriceofficiel
■経歴
2歳のときすでに、オセアーヌは父親や祖父の膝に抱っこされて、トラクターの運転席に座っていた。CGEA(農業事業体経営管理)職業バカロレアを取得した後、2020年7月に就農。父親が経営する40ヘクタールの有機農地で、労働契約を結んだパートタイム従業員として勤務する。シャロレー種の乳牛100頭の飼育が彼女の仕事だ。YouTubeを始めたのは、負けず嫌いな性格だから。中学の頃、将来は農業者になると言うと、からかわれ、いじめにあった。自分が何もしなかったら「世界は絶対に女性にとっていいようには変わらない」とオセアーヌは一念発起する。
■スタイル
アカウント開設当初は、彼女自身は動画に登場せず、動物たちだけを撮影していた。いまはもう隠れてはいない。首にタトゥーを入れた彼女は、輝くばかりの笑顔で、農園での日々の生活を投稿する。動画のサウンドトラックに使われているRidsaの楽曲に、こんな歌詞がある。「俺は前に進む。それが気にくわないなら、お生憎様。あんたが何を言っても無駄だ。もう俺は気にしない」。ショートパンツに長靴、タンクトップで動画に登場し、菜種の収穫にはキャタピラ車 CLAAS Lexion 670、小麦の種蒔き前の準備にはトラクター T560 のハンドルを握る。堆肥処理ってどうするの? ビブロカルチベーターって何? 自分の仕事を説明し、シャロレー牛から搾乳したミルク缶といっしょにセルフィー。生まれたばかりの子牛が歩き始める動画は感動的だ。
■最も話題になった投稿
YouTubeに投稿した麦わら収集作業の動画。視聴回数は200万回以上に上った。「子どもたちにとても受けたみたい」と彼女は言う。「たくさんの子どもたちが私の動画を見てくれている」
■モットー
「望めばできる!」やっぱりオセアーヌは気骨のある女性だ。ガーリーとメカ操作は両立可能だと女の子たちに実証したい。私たちが取材のために電話をかけた時も、彼女は刈払機の刃の油交換の真っ最中! 仕事は「何でも」好きだという。知らない人が農場にやってきて、「経営者はどこに?」と尋ねられる瞬間以外は。
■コミュニティ
多くの親切なフォロワーたちが励ましの言葉を送ってくる。「いい動画だね。いつも美しくて情熱に溢れるきみの姿をまた見られて嬉しい」と挨拶するタルヌ県の酪農家のマニュや、「Really nice video with great work」と称賛するAgriculturespotterといった同業者だけでなく、彼女の農場生活に興味を持つ「オフィスワーカーたち」もアカウントを訪れる。
■プロジェクト
2023年に「パパ」の共同経営者となって、農場を継ぐ予定だ。ロゴ入りの服やアクセサリー販売など、ネット活動にもさらに力を入れたい。
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#3. オフェリー・ダンブレ(33歳)
シテフェルティル・ドゥ・パンタンの都市農業者
Instagramアカウント:Ophelietamerenature(フォロワー数:2万1100人)
YouTubeアカウント:Ophelie - Ta Mère Nature(フォロワー数:2万6300人)
オフェリー・ダンブレ、シテ・フェルティル・ドゥ・パンタンの都市農業者
Instagramスクリーンショット/@ophelietamerenature
■経歴
演劇学校を卒業し、大学で映画を学んだオフェリーは、フリージャーナリスト、ナレーター、広告代理店のコミュニティ・マネージャーとして働いた。2017年にすべてを放り投げ、有機農業に転向したとき、彼女は自分にひとつのルールを課した。新生活や野菜栽培研修をテーマにした「vlog」すなわち動画日誌を撮影すること。女友達に初めて自分で編集した動画を見せたところ、「YouTubeにチャンネルを作るべき!」と背中を押してくれた。
■スタイル
ルームメイトとのブレインストーミングの末、チャンネルのタイトルは「Ta Mère Nature(あなたの母なる自然)」に決めた。「パンチがあって都会的なネーミング」と自負する。自虐ネタや、遊び心のある有益なアドバイスを盛り込んだクールな菜園ガイドという独自のミックス感覚で、彼女は都市農業にパンクな息吹をもたらす。「尿が土壌を救う(うそじゃないわ、本当よ)」。「戸棚でチコリを栽培する」。「ミミズコンポストって何?」などなど。地に足のついたこの夢想家はまた、都市生活者たちに向けて小さな空間で食用植物やハーブ、野菜を育てる方法もアドバイスする。
■モットー
「失敗を恐れるな!」オフェリーは劣等生たち、すなわち「自分が緑の手を持っているなんて考えもしない人」にそう呼びかける。前進するにはまず失敗しなければならない、それが彼女のマントラだ。動画では、まるで持ちネタのように、多くの失敗談が語られる。数々のトラブルから自分の未熟さ、根が出ない挿木まで、彼女はそのすべてを動画で見せる。不完全なものが彼女の心を動かす。壁の亀裂から生える雑草、あらゆるオーバーフローに彼女は関心を寄せる。
■最も話題になった投稿
バカンス中の植物の水やり方法を指南する動画。視聴回数は6万4000回。ヘアブラシを片手に、デザイヤレスの「Voyage, voyage(旅、旅)」を声を張り上げて歌った後、「怠け者園芸女子たちのため」に、蒸発散法や、紐を使った水やり、粘土製の鉢を利用したコツを披露している。
■コミュニティ
「こんにちは、お間抜けちゃんたち!」動画の常連視聴者たちに、彼女は愛情を込めてそう挨拶する。フォロワーは25~35歳の都市在住の女性が多い。2、3日に1度は農業に転職したいという人からメールが届く。ミミズコンポストを作ってみたという人たちも画像を送ってくれる。「私にとって重要なのは、いいねの数より、現実に影響を及ぼす行動です」
■プロジェクト
子ども向けの書籍『Opération Bye Bye Béton(バイバイ、コンクリート作戦)』(La ville brûle出版刊)を上梓したばかりの彼女は、これからも自分の畑に小・中学生、地元の若者、デファンス地区の管理職まで、様々な人たちを迎えたいという。刑務所の教育活動担当者と話し合いを進めており、ゆくゆくは刑務所の緑化計画や、園芸教室を提案したい。「自然は私たちに、食べ物や、子どもの頃の思い出、様々な感覚について話すきっかけを与えてくれる。普遍的な言語です」
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#4. クレール・ジェルヴェ(27歳)
コタンタン半島の酪農家
アカウント:Claire_maman_agricultrice(TikTokフォロワー数:33万5600人、Instagramフォロワー数:1万3900人)
クレール・ジェルヴェ、コタンタン半島の酪農家
Instagramスクリーンショット/@claire_maman_agricultrice
■経歴
子どもの頃は舞台に立つのが夢だった。漫才コンビ「レ・ヴァンプ」の真似をして家族を笑わせたり、ダンスの振り付けをしたり。そんなクレールだが、高校を卒業すると、両親と同じ農業家になるという、もうひとつの夢を選択した。2014年にクータンス農業高校でBTSを取得した後、共同経営者として家族のGAECの一員となり、プリム・ホルスタイン種、ノルマン種、ジャージー種の200頭の乳牛の飼育を担当することに。2019年ミス・フランス農業で第2位に選ばれたブロンドガールにとっては、毎日の生活も「ファーム・パーティ」。SNSで元気を振りまいている。
■スタイル
マイクの代わりに散水ホースを持って、搾乳室でセリーヌ・ディオンを歌い、ジョー・コッカーの「You Can Leave Your Hat On」のホットなメロディーにのって作業着で踊り回り、トラクターのボタンで即興DJを披露…。ファッションウィークには、ブリトニー・スピアーズのチューブをバックに、ケルヒャーを手に雨具姿で牛舎を練り歩く。カメラを担当するのは妹や義理の姉妹たち。
■最も話題になった投稿
「Oh Na Na」をカバーした動画がTikTokで大きな話題を呼んだ。愛牛であるジャージー種のジョングルーズと一緒にステップを踏む。ノリのいい映像で大ヒットし、視聴数160万回を記録した。
■モットー
「踏み出せない女性たち、自分を過小評価する女性たちの背中を押す」。搾乳室と、若いママとしての生活(5歳の女の子と1歳の男の子の母親だ)を行き来するクレール。「おチビちゃん」と一緒にトラクターの運転席に座り、牧場で授乳する。農業界での女性の地位向上を目的とするページをFacebookに共同開設した彼女は、#fièresdel’être(女性であることを誇りに思う)の旗印を掲げ、女性農業家の権利のために闘う若い世代のアンバサダーだ。
■コミュニティ
彼女のフォロワーには、ダイナミック輪牧や、牛専用通路、ファッション(「どこのブランドの搾乳エプロンを使ってるの?」と同業者の女性から質問されることも)について意見を交わす「同僚」たちもいれば、牧場と縁遠い都市在住者たちもいる。クレールは消費者と直接コミュニケーションを取ることが好きだ。「かつては、消費者には必ず知り合いの農家がいました」と彼女は言う。「私たちの仕事を知ってもらうために、都会に住む人たちとつながりを作ることは重要です」
■プロジェクト
私生活では7月に子どもたちの父親との結婚を控えている。彼も農業を営んでいる(いまのところ、事業は別々)。仕事では、農場見学ツアーを提供したいと思っている。「ヴァーチャルだけではなく、実生活でも」情熱を共有するために。
Text : Marie Huret (madame.lefigaro.fr)